2グラムの福音
2/27 大幅加筆
2/28 新型突撃銃のスペックを修正(銃身長+30cmを、銃身長+30mmにしてしまっていました)
一次大戦の欧州派遣軍からは様々な戦訓が得られたが、その中の1つに「重機関銃の射程・威力不足」があった。
斜壕を掘り、敵陣に漸次接近することは、浸透戦術にとって大切な下準備の1つである。一次大戦のころになると、敵もその意図を把握しているため、塹壕掘削点に猛攻撃を加えようとすることが多くなった。また、日本側も、逆に敵の斜壕構築に対して攻撃を加える必要に迫られることが多々あった。これらの任務に対応するためには後方の重機関銃によって敵兵の頭を下げさせることが大切であったが、先述の通り日本軍の重機関銃は他国の重機関銃より射程が短く、防衛側にアウトレンジされることがあったのである。
機動力のある小銃や突撃銃であれば、射程圏内まで切り込んで撃ち返すことができたが、重機関銃では不可能であった。このため、日本軍は「敵7.7mm級重機関銃をアウトレンジでき、その上ヒトを殺すには威力過剰でない、ほんのり強力なライフル実包」を求めるようになったのである。そこで目をつけたのが、1905年にドイツで開発された9.3×62mmモーゼル弾である。このアフリカで猛獣を殺すために開発された実包は、6.5mm弾の1.5倍の弾頭重量を持ち、アメリカ軍が用いた傑作弾薬「.30-06スプリングフィールド弾」より20%程度強力であった。この絶妙な威力を持った実包と、これを使用する重機関銃を合わせて1917年に「六年式実包」「六年式重機関銃」として採用。以後、日本軍の重機関銃は、この六年式重機関銃の系譜が使われていくことになる。
六年式重機関銃
口径:9.3mm
重量:21kg
銃身長:700mm
砲口初速:805m/s
発射速度:500発/分
また、1915年1月からドイツのカール・ガストが設計を開始していたガスト式機関銃について、この六年式実包を使用するように改設計されたものが1919年に「八年式航空機関銃」として制式化されている。
八年式航空機関銃
口径:9.3mm
重量:28kg
銃身長:700mm
砲口初速:805m/s
発射速度:1600発/分
他国航空機関銃より大柄ではあるが、より優れた性能を持つ機関銃として、戦間期の様々な日本製軍用機に搭載されることとなった。本質的には反動利用方式であるため、APIブローバックと異なりプロペラ同調装置を介して単発機でも機首機銃として装備することができる。
先ほどのように、重機関銃の能力不足のため六年式重機関銃が開発されているが、これとは別に「英仏のルイス軽機関銃やショーシャ軽機関銃のように、機動力のある機関銃が欲しい」という要望も前線から多数寄せられた。二年式突撃銃のフルオート機能はあくまで屋内遭遇戦などを想定した緊急用であり、重機関銃のように多用しているとすぐに銃身が過熱して射撃不能に陥ってしまった。
ただし、英仏は英仏で二年式突撃銃に熱い視線を向けていた。彼らの持つ軽機関銃は二年式突撃銃の2~3倍重く、日本軍の突撃銃をうらやましがる者が多数出たのである。
こうして日英仏陸軍の思惑は一致し、三国合同で新型突撃銃の開発を行うこととなった。要求性能は以下のとおりである。
新型突撃銃要求性能
・弾薬に三八式実包(6.5×51mmアリサカ弾)を使用すること
・前線で迅速に銃身を交換できること
・後方での部品交換により、突撃銃仕様と軽機関銃仕様を切り替えられること
・突撃銃仕様の場合、本体重量は5kg以下とすること
・重機関銃並みの射撃精度と信頼性を持つこと
困難な基礎研究は日本がすでに終えていたため、この新型突撃銃の開発では「二年式突撃銃の強みを生かしつつ、いかに不満点を改良するか」に重点が置かれた。開発は順調に進み、1918年には以下のような銃が完成している。
1918年製新型突撃銃([]内は軽機関銃仕様)
口径:6.5 mm
銃身長:630[830] mm
使用弾薬:三八式実包
装弾数:20[30]発
作動方式:ガス圧利用
全長:900[1100] mm
重量:5.0[6.5]kg
発射速度:400[600]発/分
備考:ブルパップ式
特徴的なのは、二年式突撃銃の全長をさらに短縮しつつどうにかして銃身を伸ばし、射程を延伸するため、日本の技術陣からの提案によりブルパップ式の構造が採用されていることである。この新型突撃銃は優れた兵器であると認められ、以後、この設計を持ち帰って各国向けの改修を施し、正式化することとなった。こうしてこの世界の三八式実包は、メジャーな弾薬の1つにのし上がり、日本に小遣い程度のささやかな収入をもたらしている。
1918年製新型突撃銃のバリエーション
イギリス向け:エンフィールド突撃銃
一番原設計に近い、基本のバリエーション。
日本向け:十年式突撃銃
帝人が開発した新素材「リシニアGF30(PA11に1cmほどの硝子繊維を30重量%混合した物)」のホットプレス成形部品を多用しており、他国向けと比較して0.5kgほど軽量である。
フランス向け:MAS Mle1920
ショーシャ軽機関銃同様にプレス成型部品を多用しており、生産性は高かったが、他国向けより若干性能が低かった。
オーストリア、ギリシャ、ブルガリア向け:マンリッヒャー M1921
欧州大戦の戦訓からドイツがモンドラゴンM1908自動小銃を制式化したため、これに対抗するためにエンフィールド突撃銃を6.5×54mmマンリッヒャー=シュナウアー弾仕様に改造し、制式化した物。たまたま同じ弾薬を使用していたギリシャ陸軍にも軽機関銃仕様が採用され、これを見たブルガリア軍でも同じ軽機関銃仕様を導入している。
イタリア向け:フィアット=レベリ Mod.1923
オーストリアが上述のマンリッヒャー M1921を制式化したことに対抗するため、こちらはエンフィールド突撃銃を6.5×52マンリッヒャー=カルカノ弾仕様に改造し、制式化した物。基本的には軽機関銃仕様が使われ、突撃銃仕様は山岳猟兵によって少数が使用されるにとどまった。
そんな都合のいい弾薬あるのかよ~→ありました というオチ。開発年代も非常に都合がよくてびっくりです。
そして火葬戦記の常連、ガスト式機銃をこっそり採用させました。今は小口径ですが、そのうち……




