風雲ドイツ艦隊-3
主力艦隊同士の砲戦はそろそろ決着がつきそうであった。ドイツ側は先頭を走っていた旗艦ザイドリッツが大火災によって戦線離脱。日本側はその後方に居たデアフリンガーに榴弾の雨を降らせるも、そのデアフリンガーの放った1発が比叡の2番主砲塔天蓋を貫通。比叡は爆沈こそ免れたものの、弾薬庫に注水したため1番、2番砲塔を一挙に喪失し、これまで非装甲区画を打ち据えられてきた被害も甚大なため砲戦から脱落した。
「遣欧駆逐隊、敵戦艦隊へ雷撃を敢行する模様!」
「彼らが雷撃を終えるまではこちらも離脱するなよ!」
実に4隻からの砲撃に耐え忍ぶ金剛の期待を背負い、6隻の駆逐艦が突撃していく。しかし、相手はもとより近接戦を重視しているドイツ戦艦隊。強力な副砲火力によって先頭を走っていた海風とその後ろの山風が撃破されてしまった。
「海風より通信!我にかまわず本懐を遂げよ!」
「そういうことだ諸君!このまま突撃を続行する!ドイツ人どもに帝国海軍の意地を見せてやれ!」
浦風以下4隻の執念の突撃は実を結び、彼女たちは五連装魚雷発射管から5発の45cm魚雷を撃ちだす。
「面舵一杯!」
モルトケ艦長のマグヌス・フォン・レヴェツォー大佐は叫ぶが、戦艦は急には曲がれない。結局、モルトケ、フォン・デア・タン、ブリュッヒャーはそれぞれ1発ずつ被雷し、浸水により速力が20ktまで低下してしまった。そして、このどさくさに紛れてとんでもないものが彼らに忍び寄っていたことが発覚する。
「か、艦長!前方に戦艦群!艦影からしておそらく英国のライオン級です!」
「くそっ!深追いしすぎたか!」
レヴェツォー艦長はそう悔しがったが、ドイツ側の落ち度だけがこの事態を引き起こしたわけではない。日本側は日本海海戦のために練っていた戦術を応用することで、英海軍と共同して北海に出現した敵艦隊の場所を迅速に把握し、急行できる仕組みを整えていた。すなわち、北海を碁盤の目状に区切り、それぞれに符丁をつけることで、敵艦隊の位置を把握しやすくしていたのである。後は逐次自分たちの位置を連絡し続ければ、英海軍の提督たちなら最良の位置でドイツ海軍を待ち受けることぐらいたやすいことであった。
「今こそ好き放題おちょくってくれたキャベツ野郎どもに引導を渡す時だ!左砲戦用意!」
デビッド・ビーティ少将率いる第1巡洋戦艦隊は、手負いのドイツ第1偵察群を一方的に叩きのめす。こうした事態に備えて、ドイツ側も60隻以上の大艦隊を準備していたのであるが、その待機位置は不必要にドイツ本土に寄った安全すぎる場所であり、今回の海戦では事実上居ないに等しかった。
結局この「ノーフォークバンク海戦」では、ドイツ側がザイドリッツ以外のすべての参加艦艇を撃沈される一方で、日本側は駆逐艦1隻沈没1隻大破、防護巡洋艦4隻小破、巡洋戦艦2隻大破という、戦力差を考えれば上出来と言ってよい勝利を挙げることができた。これ以降、ドイツ海軍は小規模艦隊による襲撃すら皇帝に禁止されてしまい、バルト海でロシアバルチック艦隊をいじめることしかできなくなってしまった。
というわけで、日本海軍初めての大規模海戦は、おいしいところを全部持っていったイギリス海軍のおかげで勝利できました。今の自分にまったく文章を書く余力がなく、駆け足になってしまい申し訳ないです。いつか改稿したいなあ……