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【書籍化】令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生 ~プラスチック素材で日本を救う~【旧題:鷹は瑞穂の空を飛ぶ】  作者: 雨堤俊次/コモンレール
世界恐慌編

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予想外の評判

皆さん大体部隊側の評判が予測できてましたね。主人公だって万能ではないのです。

 正直なところ、耀子はこの装甲ジムニーの有用性に懐疑的だった。理由は2つある。

 1つは、重量がかさんだことで足回りと駆動系が専用部品になり、思ったより高価な兵器になったこと。

 もう1つは、火力に対して防御力が貧弱すぎることである。


「本当にこんなのでいいのかな……」


 陸軍へのお披露目の際にそんなことをぼやいていた耀子だったが、意外なことに現場からの評判は上々だった。




「おお、シャバで運転したジムニーと同じ感覚で運転できるぞ」

「戦闘車や突撃車の操縦はかなり複雑で習熟が必要だが、こいつなら新兵でも扱えるな」


 まず便利だったのは操作体系の面である。この世界線の日本はモータリゼーションが進んでいるため、新兵でも自動車なら運転できるものが史実より多かった。普通のジムニー自体も昔から各部隊に配備されていることから運転や整備のノウハウが蓄積されており、接地圧が増大していて走破性に劣るといっても運用面で大きく困るようなことはなかったのである。


「射角は狭いが、75mmを撃てるのもよい。突撃車までならどうにか処理できる」

「兵器はまず相手を殺せなければ話にならん」


 また、正面にしか撃てないが、75mm山砲を装備していることも好評だった。このぐらいの榴弾威力があれば、敵野戦築城や上陸用舟艇に対して有効な攻撃を加えることができるのである。

 本当は全周旋回にしたかったのだが、車体幅が狭く、砲の取り付け位置が高かったため、側面に向けて撃つと横転する危険があった。




「……以上の通り、実地試験の結果はおおむね良好でした。よって本車両を九八式装甲自動車として採用することとします。また、武装を六年式重機関銃に変更し、全周旋回可とした乙型を設定し、それの開発も要求します」


 陸軍は装甲ジムニーを正式採用することにし、菅はその旨を耀子たちに対して報告した。


「承知いたしました。まず乙型の設計と試作を進めます。また、甲型についても弊社としては改良が必要と考えているため、もう一度設計と試作をやり直させてください」

「おや、そうですか。では……この日までに甲型の改良と、乙型の試作を終わらせられますか?」

「やれ……そうですね。はい、大丈夫です」


 そのようなやり取りがあり、正式版は以下のような仕様となった。また、この際、チベットなどで現地改造で作られていた自走砲型についても制式化が行われ、改造内容の統一と、改造キットのくろがね重工業による一括生産が決定されている。


くろがね重工業 SJ32A 九八式装甲自動車「ジムニー」

(車体側仕様は試作型と同様)

主砲

 甲型:九六式十糎歩兵砲

  砲口径:105mm

  砲身長:630mm (6口径)

  砲口初速:200m/s

  作動方式:ロケット砲

 乙型:六年式重機関銃

  口径:9.3 mm

  銃身長:700 mm

  銃口初速:805 m/s

  作動方式:ガスオペレーション

  発射速度:500発/分

 丙型:各種75mm野砲もしくは山砲

  備考:射撃時は停車の上、駐鍬(アウトリガー)による車体固定が必要


「おおそうか、低反動な大威力砲としては、帝国人繊の噴進式歩兵砲があったな」


 甲型に搭載されたロケット砲を見て菅がコメントする。


「砲弾初速も精度も山砲の方が上ですから、黙って採用するわけにはいかなかったんですよね」

「ならこの歩兵砲を載せたいと提案すればよかったのではないか?」

「まずはこれが本当にお客様の欲しがっているものなのかを見定める必要があったので……」


 中央が必要だと考えているものが、現場の求めているものと違うことは古今東西よくあることであった。耀子にはこのプロジェクトが現場で必要なものに思えず、とりあえず歓迎されるのか様子を見たかったのである。要求変更の提案のような、手間のかかることは、試作した製品が好評であることを認識してからにしたかったのである。


「いやいや、これだけ安上がりで火力と機動力のある兵器は世界中探してもほとんどないと思いますよ」

「じゃあ、このジムニーは十年式軽戦闘車よりも安いってことなんですか?」


 耀子は最大の疑問点を菅に聞いた。


「ええ。減価償却と量産効果、軍民共用によってジムニー本体の価格はびっくりするぐらい安くなっています。足回りや駆動系が専用部品となったことで、確かに価格は上昇していますが、それでも履帯のような複雑な足回りと操作体系を持つ装軌車両に比べれば十分に安上がりですよ」

「そうなんですね……」


 考えてみれば、帝国人繊グループは軍用機と上陸用舟艇のシステムインテグレータになったことはあるが、装甲戦闘車両の開発を取りまとめたことはこれまでなかった。アイデアや企画を提供し、その通りの車両を作らせたことはあるが、開発を取りまとめていたのは陸軍側の信煕だったのである。

 そのため、陸軍用車両の調達価格についてはふんわりとしたことしかわかっておらず、十年式軽戦闘車のコストを過小に評価したことが、耀子がいまいち装輪装甲車の有用性に自信を持てなかった原因だったのだ。


 その後、九八式装甲自動車改造キットは日本軍だけでなく同盟国にも多数購入され、さらには中小国や国境線の広い国で装輪装甲車の開発が活発化するのであるが、それはまた別の話である。

辺境伯家の食客も更新継続中です。最新話はこちらから。

https://ncode.syosetu.com/n7555jm/36


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挿絵(By みてみん)

本作世界のチベットを題材にしたスピンオフがあります。

チベットの砂狐~日本とイギリスに超絶強化されたチベットの凄腕女戦車兵~ 

よろしければご覧ください。
― 新着の感想 ―
装甲化されてはいないですが、昔、自衛隊もジープに106mm無反動砲を積んで運用してましたよねー
「こういうのでいいんだよ。こういうので」的兵器ですねw 歩兵としてはすぐそばに手軽に使える大火力があるのは歓迎するべきことですから。 (だから今でも迫撃砲や擲弾筒が歩兵編成に入っている) ……バリエ…
とうとうジムニーベースの兵器が!操作しやすく安く修理しやすい。最高じゃないですか。
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