【閑話】戦車という新兵器
一か月以上も間をあけて申し訳ありませんでした。本業が立て込んでおり、週に1作品の更新が限界でした。たぶん7月末までずっとこんな感じだと思います。申し訳ありませんが、ご理解ください。
ラ・コルーニャに上陸した日蔵義勇軍は、英独墺義勇軍と合流し、正式に反共義勇軍として国粋派側についた。各義勇軍が港に荷揚げされてくる物資を整理・集積し、前線を赴く準備をしているころ、ミカはドイツ義勇軍の駐屯地で彼らの装備する戦車を見せてもらっている。
「わぁ~!」
日本のデザインとは明らかに異なる、武骨で無機質なドイツ戦車を目の当たりにし、ミカは歓声を上げた。
PzKpfw.Ⅱ
車体長5.0m
全幅2.9m
全高2.3m
戦闘重量:15.8t
乗員数:5名(運転手、車長、無線手、砲手、装填手)
主砲:5cm KwK 35 L/60
口径:50mm
砲身長:60口径
砲口初速:835m/s
装甲貫通力:102mm/90°@100m、85mm/90°@500m
装甲
砲塔正面:50mm
砲塔側面:30mm
砲塔天蓋:10mm
砲塔背面:20mm
車体正面
上部:50mm40°
下部:50mm40°
車体側面:30mm45°
車体背面:20mm60°
車体上面:10mm
車体下面:10mm
エンジン:マイバッハ "HL120TRM" 水冷60°V型12気筒4ストロークSOHC4バルブ
最高出力:300hp
最高速度:45km/h
初めて見るはずなのに、どこかで見たような気がミカはしているが、これは前世でやりこんでいた戦車ゲームにも実装されているVK.16.02軽戦車を縮小したような見た目をしているからである。
「車体が大きいわりに主砲は細いのね」
「でも砲身長はあるから、高初速で当てやすいのかも」
ミカと、付き合わされているキャロがあれこれと感想を述べる。
見た目だけ日本戦車の影響を受け、傾斜装甲が採用されているものの、駆動系が車体前側に配置されているため、車体正面装甲の傾斜が緩かったり、車高が高かったりするのが、車体が大きくなっている原因だった。
「中乗ってみて操縦とかしてみたいけど、さすがにダメだよね」
「ここ最近は味方だけど、特に同盟を組んでる相手じゃないからね」
雑談をしながら、二人は外から見てわかるスペックをひととおりメモしていく。自分の知的好奇心を満たすためだけでなく、きちんと軍の役に立つことを示さなければならないのだ。
一方、ドイツの軍人たちはミカたちが乗ってきた戦車を見学していた。ドイツ軍最新戦車を見学する対価が、今回日本から無料でもらった戦車を見せることなのである。
陸軍技術本部 十二年式中戦闘車 2型改
全長4.9m
全幅2.5m
全高2.2m
戦闘重量:14.8t+増加装甲1.2t
乗員数:4名(運転手、車長兼無線手、砲手、装填手)
主砲:十二年式車載砲
口径:75mm
砲身長:3.4m(45口径)
砲口初速:750m/s
装甲貫通力
破甲榴弾:84mm/90°@100m、73mm/90°@500m
九一式徹甲弾:101mm/90°@100m、92mm/90°@500m
装甲
砲塔正面:75mm
砲塔側面:75mm
砲塔天蓋:40mm
砲塔背面:40mm
車体正面
上部:40mm25°
下部:40mm35°
車体側面:25mm90°+増加装甲13mm90°
車体背面:5mm90°
車体上面:10mm
車体下面:10mm
エンジン:三菱内燃機製造 "UW6V40D" 水冷120°V型6気筒OHVユニフロー式ディーゼル
最高出力:240hp/2200rpm
最大トルク:82.9kgm/1600rpm
最高速度:42km/h
「カラスの頭のような……すごく大きな砲塔だな」
兵卒や将校に紛れて見学していた、ドイツ反共義勇軍司令官ハインツ・グデーリアン少将──彼は気性難であるため、付き合ってくれる副官がいないのだ──は、この時代ではかなり特異な砲塔形状を見て舌を巻いていた。
「溶接痕を見る限り、砲塔正面を覆うくちばしのような大きな防盾は、既存の戦車砲や対戦車砲では貫通できないだろう。重砲の直射でどうにかなるか……?」
もちろん、撃破するだけなら対戦車地雷で擱座させたり、容易に側背面を攻撃できる航空攻撃といった方法が取れるだろう。だが、どの程度の火砲で仮想敵の装甲を貫けるか考えることは、戦車やその搭載火砲、対戦車砲の開発計画を練る上で極めて重要なことだ。
「砲塔を大型化したのにも関わらず、主砲も車体も変わってないな……プロトタイプなのか、主砲の開発が間に合わなかったか……なるほどな。これなら確かに見られても惜しくないのか……」
グデーリアンが読んだ通り、チベットがなぜ日本の新型戦車をドイツに公開できたのかと言えば、砲塔以外2型からスペックが変わっていないからである。形状による被弾経始は見てのとおりだし、溶接砲塔である以上、溶接痕で装甲厚も推測できるから、そのくらい味方側で戦っていればいずれバレることなのだ。
「……しかし、よく日本人やチベット人はこんな小さな戦車に乗ってられるな。体格の良しあしが、兵士の強さを決める時代は、もはや完全に過ぎ去ったということか」
歩兵の携行火器の重量や反動に影響するため、さすがにそれは言い過ぎだが、体格に恵まれない者でも、戦車や飛行機と言った兵器に乗って英雄になりえるのがこの時代の戦場である。
「……だが、よい兵器を持っていても、それに見合った軍隊でなければ、その性能を生かすことはできん。お手並み拝見と行こうじゃないか」
楽しそうに戦車を眺めてはメモを取っているチベット女性二人を一瞥すると、グデーリアンは独軍司令部へと戻っていった。
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