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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第9話 この理不尽な状況

「どうしてそんな事を……って、やっぱり私の考え読めてます?」

「それは仕方ないよ。私はずっと君の魂に寄り添っていたんだからね」

「寄り添ってた?」


「やっとこの身体の主導権が取れた。私は君に寄り添っていた方の正真正銘の賢者だよ。第二王子の方は賢者の石の方の賢者が主導権握る様に設定したから」

 さっきと少し雰囲気が変わった。気のせいかもしれないけど……。

「どちらもクリスだから、間違えないでね」

 気さく? フレンドリーって言うの? 偉い人のハズなのに、私に向かってウインクまでしてる。……って言うか。


「私、まだ返事してないんですけど」

「うん。だけどもう決めているよね。この世界で生きていくって。じゃないと、君から離れてこの身体の主導権執れないよ」

 言ってることの意味が分からない。

「分からなくて良いけどね。ただ、私がいない間、賢者の石が入っていた器が王妃と第二王子ってことだけ覚えてればいいよ。そしてこの身体は正真正銘、賢者のものだけど、まだ王宮からは離れられないんだ」


 なんだか、勝手に結論付けられている。

「いや? この世界で生きていくの」

「死にたくは無いですけど。健康な体みたいですし」

 そう言うとクリスは嬉しそうに笑った。

「そうだね。君の精神(こころ)は本当はもっと強いものね」

 私の精神(こころ)が強いってそんなこと……。

「ずっと、昔の君を知っているからね。お人好しで、自分が損をしても人を助けていた、あの頃を」


「クリス王子殿下」

 跪いたままの宰相がクリスを見てそう言った。

 ごめんなさい。そこにいたのを忘れていた。

「ほらね。宰相が間違うくらい第二王子と容姿がそっくりだから。第二王子は、今まで人前にあまり出てなかったみたいだから、丁度良いんじゃないかな」

「丁度良いって」

 一瞬、私の方を真顔で見て、ニマっという感じで笑った。

 クリス王子には、会った事無いけどスラっと背が高く、金髪で。クラレンスに少し似ていた。


「クリス王子の一人称は僕か……。じゃあ、私も僕でいいかな。その方が入れ替わった時に違和感ないし」

 何だか、独り言のようにブツブツ言ったと思ったら、今度は私に向かって

「ああ。クリス王子にも僕にも必要以上に頼ったらダメだよ。君には成長してもらわないといけないし、何かあっても庇わないからね」


 クリスの所為で、私がこんな目に合ってるって言ったのに理不尽だわ。

 少しは面倒見るとか……言ってくれても良いのに。



 私は賢者の間からの帰り、廊下を歩きながら最初は憤りを感じていたのだけど、だんだん気力が無くなっていった。

 後ろから付いて来ていた宰相が、話しかけてくる。

「少しお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「はい。なんでしょう」

 なんだか、言いにくそうにしている。


「その……キャロル様は、本当はサイトウユウキ様というお名前で、12歳で他界してそのままこちらに来られたという事でしょうか」

「そう……なりますよね。よくわかんないけど」

 本当によくわかんない。

「そうですか」

 宰相はそう言ったきり、黙り込んで私の後ろから付いて来ていた。

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