↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
PR
62/106

第62話 謁見の間の賢者様

 謁見の間。今回の騒動の関係者たちが集められていた。

 

 前方の一段高いところに、国王陛下が玉座に座っている。

 その横にクラレンス王太子殿下。反対側の横にクリス王子殿下とダグラス王子殿下が立っている。

 段を降りたところの、賢者の間の廊下に近いところに宰相閣下が立っていた。


 謁見の間の中央よりかなり前方にキャロル・アシュフィールドとローレンス・ウィンゲート公爵が並んで跪いている。その後ろにマドリーン・ウィンゲートがやはり同じように跪いていた。


(おもて)を上げよ」

 国王の言葉で、私達は顔を上げる。

「さて、そろそろこの騒動を終わらせたいと思っておるのだが。騒動の責任者は、ローレンス・ウィンゲートとキャロル・アシュフィールドという事で、間違いは無いか?」

 国王のその言葉に、宰相が反応する。


「恐れながら申し上げます。賢者様へのキャロル様拝謁の噂は、私が流したものでございます。キャロル様は、まだ成人もされていないお歳。責任は私が」

「良いのです、宰相様。陛下の仰せの通り、その噂はわたくしの責任で流れております」

 私は、宰相の言葉をさえぎり、真っすぐ国王を見て言う。

 そして、私に続きウィンゲート公爵も賢者死亡の噂は自分の責任で流れていると伝える。


「そうか。それで、噂の真偽はどう証明いたす?」

「私の噂は簡単でございます。賢者の間さえ開けて頂ければ……。ああ、キャロル様も同じでございましょうな」

 ウィンゲート公爵が、私の方をチラッと見て言う。

 私は……ここに来る前に、私の中にいる賢者のクリスと打ち合わせをしていた。

 ここから先は、私ではなく。賢者が私の体を少しの間だけ支配すると。

 この世界に来たばかりの時の様に、上から見るのでは無く。奥に引っ込んだ感じで自分の言動を見てる。


「その前に、わたくしたちに何度も毒を盛った者たちを召喚したいですわ」

 ()はおもむろに立ち上がった。

 その様子に、ウィンゲート公爵は思わず非難の声を上げた。

「不敬ですぞ。許可も無く立ち上がるなど」

 ウィンゲート公爵を一瞥して、()は右手をあげる。


 何もない空間から、トルネード伯爵とその子飼いの者たち数名が落ちてきた。

 自分たちがいるところを、確認すると、みんなひれ伏してしまっている。

 そして、()の手に資料が出現していた。


「こちらが取調官たちが、取りまとめた資料でございます。ご確認くださいませ」

 ()は、国王に向かいそう言った。

 宰相が、近くまで資料を取りに来る。そして、()の前で跪く。

「有難く使わせて頂きます。初代英雄王。賢者様」

 宰相がそう言った途端、私の体がふわっと光に包まれ斜めになり倒れていく。

 それを、光の中で賢者のクリスが抱き留めてくれた。


 長身でスラッと背が高く、幾重にも布が重なったような長くて白い服を着ていた。金色の長い髪をしているその先が、質素で色あせたリボンで結ばれているが。


 以前、宰相が一目で賢者様と言った通り、肖像画の初代王にそっくりだった。

「英雄王……か。大量殺戮(たいりょうさつりく)をして国を創りし者の代名詞だな」

 賢者のクリスがぽつんと言う。

 

 突然の賢者の出現に、国王は玉座を降り、王子たちも近くまで来て跪いた。

 私は、自分の意識が浮上するのを感じながら、賢者のクリスの腕の中で、目を開ける。

「大丈夫だったかい? キャロル」

「賢者様」

 私は、目の前にクリスがいる事に随分とホッとしていた。

 賢者のクリスは、私を抱き寄せたままウィンゲート公爵の方を見た。

「まさか、君が私の死亡説を唱えて逆らってくるとはね。ウィンゲートとは、良い関係を築いていたと思っていたけど、私の勘違いだったようだ」

 賢者のクリス……いいえ、賢者の横顔が少し寂しそうに見える。

「良い関係……ですか」

 ウィンゲート公爵は、そう言いながらどこか呆然としているようだった。


「もともと何もない時は、賢者の間は開かない。扉が開くのは、国王就任の時と、数か月おきの定期報告。後は戦争が起こるような時のみだ。本来、私があの扉の外に出る時は、この国が戦時中。戦いを指揮する時のみだからね」

 そう言って、賢者は目を細めた。何だか怖い感じがする。

 私の方には、なるべく暖かい気を送ってくれているのが分かるのに、それでも少し怖い。


「ウィンゲート公爵家の事を、人は色々言っていたようだが、私は嫌いではなかったよ。いつだって、退屈な日々に終止符を打ってくれたからね」

 そう言いながら、賢者は私の体制を立て直してくれていた。

「だから、チャンスを上げるよ。王妃はね。今、キャロルがしていたみたいに、私と一体化出来ないとなれない。君の娘にそれが出来たら、君の罪も不問にするし、娘も王妃候補にしてあげるよ」

「わたくしを、王妃候補にしてくださるのですね」

 父親が何か言う前に、マドリーンが賢者を見据えて言った。

「そうだよ。覚悟があるならおいで」

 賢者は、穏やかな顔でマドリーンを(いざな)う。

 その顔は、まるで悪魔のようで……。


「ダメ。マドリーン様、来ちゃダメです」

 思わず叫ぶ。

 だって、分かってしまった。

 賢者は、マドリーンを現場処刑する気だ。

「賢者様。お願いです。やめてください」

 私は、必死に賢者に縋って頼んだ。

 そんな私に、賢者は穏やかに笑ってくれる。


「クラレンス。こちらへ来てキャロルを引き取ってくれるかな」

「かしこまりました」

 クラレンスは、賢者から私を引き取り、抱きかかえるようにして元の位置に戻った。


「見ていたくなかったら、私の方を向いて目を閉じていたら良い」

 賢者と引き離されて呆然としている私に、クラレンスは優しく言ってくれる。


 みんな、これから何が起こるか分かっているんだ。

 なのに、誰も目をそらさない。


 私だけが、何もわかっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。