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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第53話 キャロルとウィンゲート公爵

「クリス殿下。あの……」

 意地悪とかそういう問題ではない。クリスは、このままの私ではクラレンスの身が危ないと言ってるんだ。

「うん。返事はいいや。君の答えを訊きたいわけじゃないからね。ああ曲が終わる、戻ろうか」

 そうクリスが言って、私達は曲の終わりと同時に礼を執り、クラレンスたちの方に戻って行った。


「ただいま。さぁ、あっちの立食コーナーに行こうか」

 クリスは、令嬢たちを引き連れて行ってしまった。

 その後ろ姿を見送ってから、クラレンスは疲れたように言った。

「クリスも、よくあんなの引き連れているよな」

「そうね」

 私も同意した。だけど、これ以上の事は、夜会の場では言えない。

 クリスが、自分の派閥の令嬢(こども)たちを、よからぬ連中から保護しているなんて……。


 そんな会話をしていると、スッと誰かが近づいてきた。

「これはこれは、王太子殿下とキャロル様ではないですか」

 私のすぐ前にローレンス・ウィンゲート公爵が来ていた。

 現国王の寵愛厚い側室の子ダグラスの伯父だけあって、少しダグラスに似ている。

 茶色の髪に、少しだけ白髪が混じっているロマンスグレーのおじ様という感じかな。


「王太子殿下には、ご機嫌うるわしゅ存じ上げます」

「うるわしいように見えるか?」

 クラレンスは不機嫌を隠していない。

「まぁ、そうでしょうな。だが、私などは羨ましくてなりませんぞ。若い女性に囲まれるなど、この歳になれば中々無いですからな」

 そう笑いながら言っている。

 

「ウィンゲート。よく証拠を集め、犯人を捕まえてくれたな。感謝する」

 クラレンスは、改まって礼を言っている。

「もったいないお言葉。痛み入ります。臣下として当然の務めでございます」

 ウィンゲート公爵の方も、表情を改め、礼を執っていた。

「わたくしからも、お礼申し上げますわ」

 当事者だもんね、私。

「キャロル様には、お元気になられたようで何よりです。本当に犯人には腹が立ちますなぁ、女性のお腹を殴るなど」

 本当に憤慨しているように見える。こうしてみたら、気の良いおじさんの様な感じがするのに、クリスの警戒ぶりが無かったら、疑いもしなかった。

「もう犯人も捕まった事ですし、いつまでも引きずっていても仕方のない事ですわ」

 私は、力なく笑って見せた。


「それで? 何か用なのか?」

「いやですなぁ。挨拶に伺っただけです。噂の真相も知りたい事ですし」

「噂? どれだろう」

 今、王太子関連の噂ってすごく多くて、もうカオス状態なんだよね。

 クラレンスが、う~んって悩むのも分かる。

 この前の、腹パンされた事件で、私の懐妊説が消えたくらいだもの。


「王太子殿下の私室で、クリス殿下がキャロル様と逢引きをしているという噂ですよ。実際に足蹴く通われていたそうですな」

「単なる噂だな。確かにクリスには薬を調達してもらっていたから、頻繁に来ていたが。キャロルと二人であったという事実は無い。人払いもしていないからな」

 まぁね。聞かれて悪い会話をするときはクリスが結界張るから、必要ないもんね。


「そうでしょうな。それともう一つ。あの事件の黒幕は、両殿下のどちらかの指示では無いかと。無論、側室の子のダグラス殿下も疑われているのですがな」

 そうなんだよね。今の噂のメインはさっきのクリスとの逢引きと事件の黒幕。

 他はねぇ。無責任に言っている分には面白い噂ばかり。

 クラレンスとクリスのBL疑惑に至っては、つい妄想してしまってクリスから白い目で見られたもの。


「クラレンス殿下」

 私は少し甘えるように、クラレンスを見上げた。

「わたくしに、赤ちゃんが出来たら困りますか?」

「いや。むしろ喜ばしい事だよ。婚礼前だけど、前例が無いわけではないからね」

 クラレンスは、優しい顔で私を見て言ってくれる。


「ウィンゲート公爵様。クラレンス殿下にわたくしを襲う理由などございませんわ。そもそも、自分の子どもでしょう? 欲しく無ければ、わたくしとそういう事をしなければ良い話ですもの」

 私は、ウィンゲート公爵を見据えて笑顔でハッキリ言ったのだけど。

 なぜだか、クラレンスまで焦っていた。少し、顔が赤い。

「まぁ。それは、そうでしょうな。その通りですな」

 ウィンゲート公爵も、咳ばらいをしながら、そう言った。

 何だっていうのよ。二人して……。


「クリス殿下とダグラス殿下のお考えは、分かりませんわ。でも、ウィンゲート公爵もでしょう? 疑わしいのは。だって、あれだけ捜査したのに何も見付からなかったものを、あっさり見つけてしまうのですもの」

 そう言ったところで、クラレンスから不意に肩を抱かれる。

 顔を見上げたら、『それ以上はやめなさい』と 無言で言っていた。

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