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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第36話 クラレンス殿下の気遣いと帰りの馬車の中

 まずい。体がどんどんだるくなっていって、倒れそう。 

 王宮内(こんなところ)で倒れるわけにはいかないのに……。

 クラレンスが支えてくれなければ、わたしはもう一歩も歩けなかっただろう。

 

 前の体も、かなりきつい時があったけどお家の中か、病院のベッドの上だったものね。

 もう執務室に着いたのかしら。

 目の前で扉が開く。ここは……、クラレンスの部屋?

「クラレンス殿下? あの」

「執務室より、私の部屋の方が近い。そこのソファーに座って兄君を待つと良いよ」

 そう言って、ソファーに座らされた。どうしよう。もう立てる気がしないのだけど。

 クラレンスは、部屋付きの侍女たちに何か指示を与えているようだった。


「あの……兄は、殿下の執務室に迎えに来るって」

 そうクリスが言っていた。

「執務室に来たら、私がこちらに連れてくるから大丈夫だよ」

 そう言っている間に、テーブルに暖かいミルクが置かれた。

「これでも飲んで、ゆっくり待っていて。本当は、ベッドの方が良いのだけれど……その、色々問題があるだろう?」

 そう、かも。ベッドの上って言ったら、クリスですら怒っていたから。

 やっぱり不敬だよね。王太子のベッドを占領するなんて……。




 少し寝ていたのだと思う。

 扉が開く音とクラレンスとリオンが話す声で目が覚めた。

「キャロル。迎えが来たけど」

 ああ。起きなきゃ。

 そう思って体を起こそうとすると、クラレンスから抱きかかえられるように起こされ、座らされた。

「大丈夫か?」

 クラレンスは、私に目線を合わせるように、私の前に片膝を付いて訊いてきた。

「はい」

 リオンが迎えに来ている。

 立たなきゃ。

 私が立とうとすると、やっぱり抱きかかえるようにして支えてくれていた。


「馬車の用意は出来ているのか? リオン」

 クラレンスは私を抱き寄せて、リオンに訊いた。

「はい。すぐに屋敷に戻れるよう、用意しております」

「では、行こうかキャロル」

 返事をする前に、クラレンスは私をお姫様抱っこしてくれる。

 さすがに恥ずかしい。

「クラレンス殿下。自分で歩けます」

「わ……私が抱いていきますので」

 リオンも慌てて言ってるけど、どっちから抱っこされても恥ずかしいからね。

「私の所為だからね。私が抱いていくよ」


 結局、クラレンスは馬車に乗るところまで、私を抱っこしていた。

 王宮内、時々すれ違う騎士や侍女、仕事に来ている貴族たちとすれ違う。

 私たちをみると、さすがに何も言わないものの、ギョッとした顔をしていた。

 

 途中で私が

「恥ずかしいです。クラレンス殿下」

 と言っても、

「まぁ、今日だけだから」

 とにこやかに言われてしまい、降ろしてもらえなかった。


「ありがとうございました」

 馬車に乗る前に、私はペコンと頭を下げお礼を言う。

「いや、こちらこそありがとう。すまなかったね」

 具体的な事は言えないので、ぼかした感じで言っている。

 リリーの事なら、私にも責任があったから、お礼を言われるのも何なのだけど。


 リオンの方には

「今日明日は、ゆっくり休ませてくれ。無理をさせてしまって疲れているようだから」

 そう言っていた。なぜか、リオンはギョッとした顔をして赤くなっているけど。

「かしこまりました」

 そう言って礼を執り、私の横に乗り込んできた。

 従者が扉を閉め、馬車はゆっくりと動き出した。馬車の揺れは少ししんどいけど、もう後は自宅屋敷に帰るだけ。

 私は、リオンの横でホッとしていた。

 リリー達、幸せになれれば良いな。

 体はきついけど、達成感は半端ない。今まで何かを成し遂げた事なんて無かったもの。

 


「キャロル」

 昨日の事に思いを巡らせていたら。リオンから声を掛けられた。

「何でしょう? お兄様」

「その……、クラレンス殿下との婚約は、そのままで良いという事かな?」

 そういえば選べるなんて噂があったっけ。

「そうですね。良いと思います」

 そうよね。クラレンスは、リリーが好きなんだし、たとえ愛情が無い結婚でも仕方が無い。

 以前の様に、憎まれているなんて事はなさそうだし、婚約解消をしてクラレンスが王命違反で処刑にでもなったらイヤだ。


「そう……か」

 リオンは、浮かない顔をしていた。

「何かあるのですか?」

「いや、縁談の打診があってね。ダグラス殿下とクリス殿下の母親の実家から」

「クリス殿下とクラレンス殿下のご生母様は、どちらも王妃様ですよね」

 リオンは複雑そうな表情(かお)をしている。

「そうなのだけどね。もしかしたら、クラレンス殿下は王妃様のご実家から見限られたのかもしれない」


「そんな」

 私はしんどい体を頑張って起こしてリオンを見た。

「お兄様。わたくしは、クラレンス殿下の婚約者です」

「うん。そうだね、キャロル」

 リオンは、私を優しく抱き寄せながら言う。子どもにするように、抱き寄せた手で頭を撫でてくれた。

 気になってその表情(かお)を覗き見ると、何だか少し怖いような顔をしていた。

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