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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第12話 キャロルのダンスとクラレンスの愚行

「クリス様」

「クリス殿下だよ。キャロル。あの時途中までしゃべっていた賢者の石の方」

 えっと、賢者の代理をしてた方……かな?

「ダンスを踊っていただけですが」

 クリスはそう? って、感じの顔をしているけど。

「王太子としての自覚が出来たと思ったんだけど……。ダメかな? あれは」

 え? ダメって?


「ではキャロル嬢。私と踊って頂けますか?」

 クリスが優雅に礼を執っている。

「喜んで」

 そうして踊り始めた。クリスのリードは軽くて踊りやすい。クラレンスもかなり上手だけど。

「さすがに上手だね。キャロル」

「私の努力じゃないですけど」

「それは、仕方が無い。今までの事をゼロにするわけにはいかないからね。ところで、君の婚約者は大丈夫? 例の伯爵令嬢の所にいるけど」

「良いんじゃないですか?」

 何か問題でもあるの?


「あの時僕が言った言葉の意味、分かって無いでしょう。王妃の代わりはいないって。君が王妃確定なんだ」

「そんな事言われても、意味が分かりません」

 空っぽの器じゃなくなったんだから、私じゃ無くても良いよね。あの時、賢者が入れる器って言ってたもん。

 そんな事考えてたら、クリスが溜息を吐いた。

 また、考えてること読まれた?


「まぁね。キャロルがあいつに言ってもまた同じ事になるだけか。曲が終わったら、行くしかないかな」

「はぁ」

 独り言のように言っているなぁ。

「ついでに君の悪い噂も消してあげるよ。泣かなかったご褒美に」



 曲が終わり私たちは礼を執る。

 すると、ダグラスが声を掛けてきた。

「次は私とよろしいでしょうか」

「え……っと」

 受けて良いのか分からなくて、ついクリスを見てしまった。

「キャロル嬢。令嬢の返事は『喜んでお受けいたします』だよ。踊っておいで、待っているから。ダグラス。ダンスが終わったらキャロル嬢をエスコートして、僕の所に連れて来てくれるかな」

「あ? ああ」

 ダグラスはよく分からないながらもクリスに返事をしていた。


「何かあるのか?」

 踊りだしてすぐにダグラスが訊いてくる。

「クラレンス殿下がリリー様のところに行ってしまっていて」

「あのバカ。何やってるんだ、王室主催の舞踏会だぜ。ブライアント家を潰す気か?」

「え? 潰すって」

「国王命令に逆らって無事なわけないだろう。それ以前に、王妃候補は賢者様が選んでいるんだぞ」

 国王命令って、逆らえないんだっけ……。


「キャロル嬢。大丈夫か?」

 ダグラスが心配そうに訊いてくる。

 もう、これだけ悪い事が重なってたら何の心配してるんだか分からないけど……。


 でも、何だかんだ言っても三人とも噂が聞こえないように、ダンスに誘ってくれた。

 あの怖いと思ってたクラレンスでさえ、二度目のダンスを踊ってくれようとしてくれていた。

 大丈夫……だよね。多分、この三人は味方だ。

 だから私はにっこり笑って言う。

「大丈夫です」

「そう」

 ダグラスは、まだ心配そうな顔をしているけど。

 ダンスが終わって、二人でクリスの所に戻って行った。


「じゃあ、行こうか」

 クリスがそう言うと、ダグラスは少し厳しい顔になった。クラレンスの行動を戒めないといけないと思っているのだと思う。

 私も二人の後ろから付いて行った。


「クラレンス王太子殿下。こんなところで何をしているの?」

 クラレンスとリリーが談笑しているところへ行って、クリスはわざとそんな言い方をした。

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