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お姫様の恋 ~ハーボルト王国 王室に嫁いだ姫君たち~  作者: 松本せりか
見た目は17歳、中身は12歳の悪役令嬢
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第10話 由有紀の想いとクラレンスの訪問

 結局、この世界で暮らすしか無いんだよね。

 手術中に死んじゃったんじゃ。死ぬ直前に戻してもらっても誰にも会えないし。

 考えれば考えるほど、理不尽なんだけど。


 でもこの体、本当に健康なんだね。心臓も痛くならないし。

 少し前までは、病院の中で点滴や機械に繋がれてたんだよね。

 少し動くと心臓が痛くなるから、本を読んだりゲームしたり……。


 お母さんたちどうしてるかな。もう、私の葬式も済んでしまってるのかな。

 …………会いたいなぁ。もう一度、抱きしめて頭撫でて欲しかった。

 泣いても仕方ないのにね。


 こっちの世界でもお父さんは優しい。お母さんは、部屋にこもりがちの様だけど。

 向こうではいなかった、お兄さんは……キャロルがクラレンスの婚約者に決まってすぐに宰相候補になったらしい。多分、四歳から五歳くらいだから、お勉強とか大変だったんだろうな。

 今回の騒動も、他人事のように振舞っているけど、本音はどうなのかな?




 ボーっと椅子に座って考えていたら。

 扉がノックされた。

「どうぞ」

 私は涙を拭いて、居住まいをただす。

「失礼します。お嬢様。王太子殿下がおいでになっております」

 侍女が、クラレンスの来訪を告げる。

 そして、数人の侍女が私に着替えをさせるために入ってきた。

 この世界は、何かするたびに着替えさせられる。面倒くさいけど、これが貴族ってものらしいので、仕方がない……のかなぁ。


 王太子……クラレンスって、あの怖い人だよね。何しに来たんだろう。

 会わないって選択肢は無い……よね、やっぱり。イヤだなぁ。


 来客に会うためのドレスを着せられて、私はクラレンスが待つサロンに向かわされた。

 キャロルの体に身についている作法通り、サロンの入り口で礼を執り挨拶をする。

「お待たせいたしました。王太子殿下」

「いや。突然の訪問だ。致し方ないだろう」

 クラレンスはソファーに座って、お茶を飲んでいた。

 笑顔は無いけど、不機嫌な感じもしない。


「すまないな。くつろいでいたところ。どうしても出ないといけない夜会があって。アシュフィールドには、許可を貰ったのだけど、一緒に行ってもらえないだろうか?」

 え? うそ。穏やかだ。

「……キャロル?」

 クラレンスが、怪訝そうな顔をしている。

「あ……はい。夜会ですね。ですが、最近はリリー様と行かれてたのでは?」

 しまった。地雷、踏み抜いた?

 クラレンス、睨んでるよ。

「行けるわけないのを分かっていて、そういうのか」

 ああ。これは、私が悪い……のかな?

「ごめんなさい。考えなしでした」

 しまった。キャロルのマナースキルが……。

「いや。こちらこそ急ですまない。それで、今夜なのだけど」

「分かりました。準備します」

 そう言って私は、そそくさとサロンを出た。



 廊下を歩きながら思う。

 今夜の夜会という事は、キャロルとの婚約破棄を認められたらリリー様と行くはずだったんだわ。欠席できない夜会だから、仕方なく私を誘ったのね。

 まぁ、良いんだけどね、別に。

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