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178 王女と王女

 公聖教会の総本山へ、魔導王国の王女を探しに潜入したルリは、無事に、王女を探し出し、教会からの脱出を試みていた。


 ルミナス王女の天候を操る魔法により、大雨の災害に見舞われた教会。

 大規模な土砂崩れにより、内部は混乱を極める。


「ほら。城壁がなくなりましたわ。道が出来たでしょ!」

「そ、そうですね……」


 明らかに過剰な魔法により、東側が大きく破壊され、城壁も土砂に埋まっている。

 再びの土砂崩れを気にしなければ、そのまま歩いて外に出る事も可能だ。

 ルミナスに導かれるままに、ルリは歩いて教会から出た。




『ルリ、そのまま東に進んでくれる? 10分位で合流できるわ』


 教会の敷地……だったと思われる場所から出ると、セイラからの通信が届く。

 ルミナスに伝え、合流を目指すことにした。


 雨はだいぶ小雨になっている。脱出できたので魔法を弱めたのだろう。

 しかし、激しい雷光だけが、今もなお空を照らしている。


(ミリア、遊んでるのね……)


 犯人は、言うまでもない。

 激しい雨に便乗して、空に魔法を放って遊んでいるのであった。

 何日も森に潜んだ、憂さ晴らし……らしい。



「面白いお友達のようですね。気が合いそうですわ」

「そうですね。たぶん、似た者同士だと思います……」


 空の雷が、誰かの魔法である事にルミナスも気付いたようだ。

 ミリア達の事はまだ紹介していないにも関わらず、似た雰囲気を感じ取ったのかも知れない。

 実際、似た者同士に思える……。


「ルミナス様、もうすぐ合流です。紹介しますわね」

「楽しみにしてますわ」




 すぐにミリア達の姿を確認すると、久しぶりの再会を果たす。


「お互い、大変だったわね。ルリは洗脳されかけてたんだって?」

「そうなの。魔法封じられた時はヤバかったわ。そう言えば、戦闘は大丈夫だったの?」

「うん、逃げるついでに、魔物を兵隊に押し付けちゃった。その後あの雨でしょ。どうなった事やら」


 離れていた間にいろいろあったので、話題には事欠かない。


「あの、ご紹介、いただけるかしら?」

「あ、ごめんなさい」


「魔導王国イルームの王女、ルミナス様です。教会でシスターをなさってたのですが、一緒に来てくださいました」


「ルミナス・フォン・イルームですわ。ごきげんよう」

「ミリアーヌ・フォン・クロームです。よろしくお願いします」


 それぞれ自己紹介を行う。

 小雨降る森の中、ずぶ濡れになって話すようなメンバーではない。

 ここだけ、違う空間のような雰囲気を醸し出していた。


「クローム王国の王女様ですのね。お目にかかれて光栄ですわ」

「わたくしもですわ」


 長い金髪にすらっとしたモデル体型のルミナスと、まだ成長途中で小柄ながらも、愛くるしいロリ巨乳のミリア。

 二人の王女の出会いが、この先の世界に影響を及ぼしていくとは、今はまだ誰も知らない。



「立ち話も何ですし、少し離れたら休みませんか」

「そうですね。追っては来ないと思いますが、教会の近くにいるのも危険ですしね」


 ルミナスの言う通り、追っては来ないであろう。

 教会では多数のシスターが逃げ出しているし、警備兵もそれどころではない。


「では、山沿いを進んで、ユニコーンの里を目指しましょう。教会の勢力圏を出れば、町に立ち寄る事も出来るでしょうし」


 脱出のどさくさで多少の私物は持ってきたが、緊急で必要なのはルミナスの私服だ。

 長く教会で過ごしていたため、服が修道服しかない。


 ルリの服装はどうにでもなるものの、シスター2人と魔術師2人、それにメイドが1人という女性だけのパーティは、街中を歩くには、正直おかしい。


 野営中心にしながらも、街で買い物をする事を決めると、ルリ達は歩き出した。





「今日はこの辺で休もう。ルリ、お風呂出してよ、もうずっと入ってないの……」

「分かった~」


 どぉぉぉぉん


 アイテムボックスから次々と野営道具を取り出すルリ。

 テントに炊事台、そして、リクエストのお風呂。

 収納使いとは知っていたものの、まさかこの大容量とは思わなかったらしく、ルミナスも驚いていた。


(久しぶりにいっぱい食べられるわ!)


 教会では野菜スープ、しかも薬入り中心の質素な食事だったので、食事に飢えていたルリ。

 やっと心置きなく食べられると、喜びを露にする。


「お肉、焼きますわよ。ルミナス様はお肉、大丈夫ですか?」

「教会ではあまり食べませんでしたが、もちろんいただきますわ」


 さっそく焼肉を始めるルリ。

 一方、大容量に加え、新鮮な食材が次々と出てくるルリの収納に、目を奪われているルミナスであった。





「本当に、ユニコーンの里に行くのですよね……」


 夕食後、心配そうにつぶやいたのは、ルミナスだ。

 ユニコーンに会いに行く事に、ためらいがあるらしい。


(そうか、ルミナスの中では、ユニコーンに嫌われた王族の末裔の印象が強いのだろうな……)


 魔導王国に伝わる伝説、そして真実。どちらをとっても、ユニコーンは魔導王国に三下り半を突きつけた事になっている。

 いくら愛し子としてユニコーンが会いたがっていると伝えた所で、信じられない部分もあるのであろう。


「少なくとも私たちの印象では、ユニコーンはルミナス様を好意的に思ってらっしゃいました。心配いらないと思いますわ」


「そうかしらね。でもわたくしは、謝罪をせねばならない気がしております。歴史の真実がどうあれ、今現在、魔導王国が、ユニコーンを蔑ろにしているのは間違いない事実です」


 ミリアがフォローするが、ルミナスにとっては、かなり重い決断のようだ。

 ユニコーンの庇護下にあると言われる魔導王国の王族としては、思う所があるのであろう。


「会ってみないと分かりませんわね。さぁ、お食事いただきましょう!」

「「「「はい!」」」」


 ルミナスが明るく笑うと、全員で焼肉を楽しんだ。

 暗い雰囲気を払拭するかのように、全員、笑顔で。


 ユニコーンの真意など、ここで話し込んでもわからない。

 ならば、会ってみるしかないだろう。ミリアと同じような発想のルミナス。

 姉妹の様な二人の様子に、どこか期待してしまうルリであった。





 途中、小さな街で目的であったルミナスの服を買い、ついでに食料の調達も行う。

 長居はせず、そのまま急いでユニコーンの里に向かった。


「しかし、あなた便利ねぇ。大容量の収納に、絶対防御(バリア)の魔法? どこでも快適、安全に野営できるなんて、世界中探してもルリしかいないわよ」


「それだけが取り柄ですので!」


「しかも、あなた達の魔法……。無詠唱でポンポンと。今度、コツとか教えてもらえないかしら? 無理にとは言わないけど……」


「いいですよ」


「いいの?」


「なんか、ルミナス様って、ミリアのお姉さんみたいで。それに、信頼できますから」


 魔法はイメージなどと伝えつつ、道中で魔物を狩りながら無詠唱の練習を行う。

 さすが、呑み込みの早いルミナスは、里につくまでの数日で、しっかりと無詠唱を習得していた。



「ルミナス様も、一緒に冒険者やりませんか?」

「それも面白そうね。ユニコーンの話次第ですが、旅に出る時はご一緒しようかしら」


 すっかり打ち解けた、似た者同士の姉妹のようなミリアとルミナス。

 お互い王女という事もあり、そうそう気軽に旅に出る事などできないと分かっている。


 ユニコーンに会えば、今後の方針も決まるだろう。

 見慣れた山の麓まで到着したルリ達は、ついに、里へ向けて山を登り始めるのであった。


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