プロローグ
楽しんでくれたら嬉しいです。
御厨ありすは、天才である。周りには理解されないほどに。
「なんでそんな考え方ができるの?頭、可笑しいんじゃない?」
物心ついた時から、そう言われ続けた。そして、そんなありすは、周りに期待することをやめていた。
「ぼくは、ぼくの為に僕にしか成し得ないものを」
それが、ありすの口癖であった。
科学者として、多くのものを生み出し賛辞を受けても……ありすの心は暖かい何かを求めていた。それは、「自分自身を見て欲しい」という気持ちの表れでもあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「もう少しで……あと少しで完成する」
薬品のはいった試験管とにらめっこしながら、ぼくは呟く。三日続けて徹夜したことで、視界と思考回路は仕事を放棄し始めていた。
(これが終わったら、寝よう。即、寝よう)
睡魔とたたかいながらも細心の注意を払い、薬品を混ぜる。混ぜる薬品を間違えて爆発、または毒ガス発生なんてことになったら目も当てられない。まぁ、そんなことをぼくがするはずもないけど。
「お、わった…」
「はぁ」と溜息をつき、張りつめていた緊張の糸を解く。のろのろとおぼつかない足どりで、研究室に備えられた仮眠用のベッドに崩れるように倒れ込んだ。
すでに半分ほど寝かかっていたこともあって、ぼくの意識は簡単に刈りとられたのだった。
次は今日か明日に。