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光太郎編終話:気付いた過ち

僕は一人で自分の道を見つけ、過去と決別するために歩みだした。しかしそこから僕の棘の道は始まっていたのかもしれない。


仕事でのミスが続き上司からの信頼低下や部下からのプレッシャーがどんどん強くなる。


「光太郎!おまえ…こんな事も出来ないようじゃいよいよ左遷も視野に入ってくるぞ」


「…すみません。気をつけます」


こんな会話が繰り返される毎日になっていた。玲子がいなくなって精神的な拠り所をなくしたせいだったのだろうか…その玲子が今は他の男と幸せな毎日を送っているという事実もまたいたたまれなかったに違いない。


「僕は…どうしたらいいんだ…。玲子…やはり君と別れた事は…」


そんな時に携帯が鳴った。ディスプレイを見てみるとなんと勇気とバンドをやっていた時のギタリスト・浩一こういちだった。


「よう、光太郎か?!オレだよ、浩一だよ!久し振り!」


「ああ…本当に久しぶり。いったいどうしたんだ?」


「実はあれからバンドが解散しちゃってさ、ドラムの圭二けいじって覚えてる?あいつと今たまにスタジオ入って遊んでるんだけどさ。もしよかったら今日スタジオいかね??」


「驚いたな…解散したのか…。そうだな、ぜひ行かせてもらうよ」


気分転換にちょうどいいだろうと考えていた時だった。案の定、そのスタジオは楽しく過ごせたし何より僕のベースの上達に二人が驚いていたのもやはり気分がよかった。そしてファミレスで三人で夕飯を食べたのだがその場でいろいろな話をした。玲子との事、仕事の事などだ。そしてその話題の最中に浩一から一番耳の痛い話を切り出されたのだ。


「なあ…オレたち実はあれからずっとまだ勇気と会ったりしてんだけどさ、おまえらそろそろ仲直りとかするつもりはないのか?」


「愚問だ。あんな単純なバカを相手に僕がなぜ和解をしなければならないんだい?」


そこで圭二が鋭く一言突っ込みを入れたのだ。


「オレや浩一は元よりずっとおまえと一緒にいた勇気を裏切って玲子と逢引して…今、玲子がその時と同じように他の男の元にいる…それを考えておまえは何も思わなかったのか?」


「…それは…」


圭二は尚も続けた。


「今回の玲子の新しい男はおまえの知らない相手だったからよかっただろう、でも勇気の時はその相手がおまえだった…おまえならそのショックに耐えられるのか?今でさえスランプに陥っているってのに…親友が消えた…それも結婚前提の恋人とだ。あいつの未練は玲子じゃなくおまえにあるんじゃないのか?親友であったはずのおまえに…」


「…」


僕はそれに対して何も返す言葉がなかった。玲子でさえもあいつにしたら今まであいつの遊んできた女と変わらない、フラれてもすぐ立ち直るだろうと思っていた。あいつが短い時間、ショックを受けるのは当然と思っていた。じゃあ僕は一体どれほどのショックを勇気に与えたのだろう。そしてそれでもあの時僕に言ったあのセリフ…


「俺たちは…ダチじゃなかったのかよ…」


憎いはずの僕を殴りつけて…それでもその言葉を発した勇気は…。


そう考えてようやく僕は気付く事が出来たのだ。悪いのは僕だったんだ…。

勇気に大きすぎるショックを与えてしまった事、そしてあいつの言葉に嘘はなかった事。人を信じないなどと高飛車な理由をつけて信じる事から逃げていた自分自身に気がついたのだ。


その時僕は浩一にひとつの頼みごとをした。

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