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勇気編2話:歪と疑惑

珍しく早く帰ってきたのに今日も玲子の姿は見当たらなかった。携帯に電話しても繋がらない。そんな時に母親から一言ぽつりと言われた。


「勇気…ご飯の用意もあるからちゃんと玲子ちゃんの帰ってくる時間を教えてちょうだいね」


親にまでそんな事を言われてしまう始末だった。いくら半年の期限付きとは言えこんな状態が続けば玲子に対しての俺の両親の信頼やこの先の話に大きな支障をきたしてしまう。例によってまた22時頃に帰ってくる玲子に対して俺は少しキツめに注意をした。


「何でこんな帰りがおせーんだよ!親だって最近こう言ってきてるし…終わったならまっすぐちゃんと帰ってこいって!」


そんな注意が続いたが玲子の帰りの遅さはひどくなる一方だった。俺がこうして怒ってばかりなものだから玲子も面白くなかったんだろうか、ふてくされて先に寝てしまうこともしばしばあった。


悩んだ末にこのままではお互いにとってよくないと思い、俺は光太郎に電話をした。


「やあ…勇気。どうしたんだ?」


「いや…最近実はさ…」


俺は玲子の帰りが遅い事、そしてその時は毎朝毎晩どちらも光太郎が一緒だと聞いていたので光太郎からも早く帰るように言ってほしいと頼んだんだ。これがベストだと思った。


「そういうことか、わかったよ。しかし玲子は仕事を一生懸命頑張ってくれてるぞ〜!なんだかんだで僕もお前には感謝しなければいけないかもしれないな。」


「今さら水臭い事言うなよ〜、かゆくなるっての!」


笑いながら俺は少し安心した。光太郎に任せておけばきっと大丈夫だと思えるのはやっぱりこの13年という長い付き合いの表れだろう。


しかしそれからも玲子の行動が変わる気配は一向になかった。


そして珍しく玲子が早く帰宅した時の事だった。玲子がシャワーを浴びにバスルームへ向かった瞬間に彼女の携帯電話がけたたましく鳴り出した。どうやら誰かからのメールのようだ。


玲子が最近帰りが遅い事とこのメールに何か関連性があることは直感的にわかった。この時そんな事に感づかなければ幸せだったのかもしれない。


迷いつつ恐る恐る俺は玲子の携帯に手を伸ばした。俺が後から携帯を見たことを謝れるような未来を信じながら…




しかしそこにあった真実は想像を絶するものだったのだ。携帯を開くとそこにあったメールは玲子の母親からだった。




「そうか〜。しかし今度はベース君とはねー、まあいいけど帰ってきたらちゃんと紹介しなさいよ。」



…ベースって…まさかそんな事が…。



大きすぎる黒い疑惑に押し潰されそうになる。こないだまで電話でああやって何事もなく話していた光太郎に限ってそんな…。


一刻も早く疑惑を晴らしたかった俺は自分の携帯から玲子の母親に電話をかけたんだ。


「あら、勇気君!どうしたの?」


「お母さん…今のメールは…いったいどういう意味ですか…?ベース君っていうのは…」


俺の声も自然と低くなる。


「ああ…そ、それはね…あのこ…特に仲良くしてくれる男の子の話はよく私にするもんだから…あ、あははは…」


明らかに慌てているのがわかった。しかし俺はその電話を切った後に自分の感情を押し殺そうとしたのだ。光太郎が…まさか玲子の家族まで一緒になってそんな事…あるはずがない、あってたまるか…と。


悩む俺に、ついに地獄とも言える瞬間が訪れたのはそこから数日後の事だった。

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