結束編1話:再結成
その日、一番の電話は今や遊び相手でもある浩一からだった。勇気はすぐに電話に出る。
「おう!勇気だけど!」
「あ、勇気?あのさ、おまえ今からこれねえかな?」
唐突な誘いに少し驚く勇気だったがいつもみたいにまたゲーセンがパチンコにでも出かけたいのだろう。そうに違いないと思い浩一の誘いをOKした。
電話を切った後に浩一は言った。
「これでいいんだな?おまえ…あいつを呼ぶって事はそれなりに覚悟があるって事だよな?」
「ああ…もう一度殴られる覚悟はもう出来てる」
「勇気は何て言うんだろうな、オレにはちょっとわかんねーや」
そんな会話が交わされている事はつゆ知らず、勇気は待ち合わせの新宿にあるファミレスへと向かった。
入り口を開けて中に入る勇気。そして見慣れぬ人間を見つけると表情がこわばった。
「おまえ…光太郎…」
「………勇気。」
とてつもなく張り詰める空気。それを割って入るかのように浩一が静かに話し始めた。
「Pieces Blueがなくなったのは…オレのせいだった。おまえたち二人がいなくなってからどんなメンバーが加入しても音も気持ちもまとまらなかった。オレの技量不足ってのもあるのかもしれないけど…誰でもなくおまえたちでなきゃいけないことがわかったんだ。」
圭二も続いて話し始めた。
「オレはもう玲子という一人の女のためにこんなに人間関係がこじれるのはもう嫌なんだ。そしておまえたちともう一度、音を鳴らしたい。その一心で今日この集まりを考えたんだよ。」
勇気はこの雰囲気を壊す事は出来なかった。ただ黙って光太郎を睨みつけていた。そんな重苦しい雰囲気が続く中、光太郎が口を開いた。
「僕はおまえを始め誰も信用していなかった。13年付き合いがあろうとだ。でも…勇気、浩一、圭二はそんな僕にさえ120%の信用を与えてくれた。玲子にしたって僕を信じてくれていた…そんなおまえから卑劣な手を使って玲子を奪いそして消えた。そしてそこから孤独を知った。そこから僕には後悔が生まれたんだ。」
勇気が重い口を開いた。
「全部認めるんだな?で、殴られる覚悟くらいしてるんだろうな…?」
「おまえの気持ちがそれですむのなら殺されたって構わないさ。僕のやった事は到底許される事じゃない…」
勇気は少しの間、中空を見上げそしてふうっと息を吐いた。そして口を開いた。
「…ようやく戻ってきたな、おまえ…」
その一言で勇気の心中を全員が察知したのだろう。
「不思議だな、あれほど憎んでいたおまえからこんな言葉が聞けるなんて…。まさかこんなふうにまた音を合わせる機会があるなんて…」
「じゃあ…オレたちPieces Blueは再結成だなっ!」
浩一は声高らかにそう言った。時を経てついにPieces Blueは再結成を果たしたのである。