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特徴



「動物は危険察知に敏感だから逃げているとして、主要道路は混む前に避けないとパンデミック時には運ばれない棺桶だな」


 元々、移動の際に選択肢に入っていない車を横目に順調に進み、人が少なかったこともあり何事もなく健家へと着いた。


「健! 俺だ勇真だ! 居るか!?」


 待っても返事はなくドアに鍵がかかっている。

 中で寝ているか既に居ないか、最悪の事態は襲われた後か……。


 迷っている時間も惜しいため、少々手荒だが裏手のガラス窓に近付き、鍵の四方にガムテープを貼る。

 後はこのトンカチで叩いてやれば音を立てずに簡単に鍵周辺を割れる。


「物音は……してないな。というか人が居る気配がしない」


 侵入し二階にも気を配り確かめるがもぬけの殻だ。

 手がかりはないかと一階も探していると、リビングの机に書き置きが残してあった。


「くそっ……すれ違いか! 美優ちゃんの学校は俺のマンションとは真反対だったな」


 自転車なら近いがこのまま向かうか一旦引き返すか……と悩んでいると、唐突に入り口からノックするような音が聞こえ身構える。

 健達か? と一瞬思うが、鍵をかけた本人達が入ってこないのも変だ。

 嫌な緊張感が場を支配する。


「どなたですか?」


 試しに声を出してみるも応答なし。

 恐る恐る覗き穴へ近付き正体を確認してみると、サラリーマン風のポロシャツの男が斜め向きに突っ立っている。

 眼鏡をかけていて少しシャツがくたびれた営業マンってところだろう。

 なんだろう……顔の大きさなのかどこか違和感がある。


 もしかして健の親の知り合いだろうか?

 なら何か事情が聞けるかもしれないと気が緩み鍵を開けドアを開ける。


「あの〜何のご用で――」

「ヴアァァ……」


 迂闊だった。

 ドアを開けたら男は腕を上げながら歩み寄ってきていた。

 映画で聞き慣れた声を発しながら。


「くそっ、こいつゾンビかよ!」

「アアァァァ」


 返事をしているようにも思えるがそんなことは聞いてない。

 狭すぎる場所で戦うには不利だと即座に下がり、侵入したガラス窓まで後退する。


 奴は動きは遅いようだが着実に俺が逃げた方向へと向かってきている。

 リュックを下ろしついに初対決の時は来たと、内心ワクワクしながら武器を取り出す。


「さぁて、ちゃんと効いてくれよ!」


 室内は狭かったが今はガラス窓の外で庭と塀を背に、奴はガラス窓から出てこようとしているため絶好の的だ。


「くらえ!」


 引き金を引くと一本の釘が奴の顔へと放たれる。

 少しズレてガラス窓に当たってしまい大きな音を立て崩れ落ちた。

 お構い無しに二射、三射と撃ち込んでいく。

 すると、左目と眉間に命中しそのまま呻きながら後方へ受け身も取らず倒れていく。


「へっ、ゾンビにも急所はあるようだな!」


 自分でも分かるぐらいやや興奮気味だが、ネイルガンでの戦闘に酔いしれた結果ゾンビにも有効と判明した。

 奴が起き上がらないのを確認し、奴の状態をくまなく調べるもおかしい点に気付く。


「こいつゾンビにしては外見が綺麗すぎる……」


 目立った服装の乱れ、血を浴びたような衣服の汚れ、抉られたような傷痕等々、ゾンビの定番とも言える不恰好さが全く無いのだ。


「なんで発症した? 誰かに感染させられた訳じゃないのか?」


 考えられる原因は目に見えない空気感染だが、それなら俺も手遅れ。

 その場合は時間経過と共に観察するしかないだろう。


「大抵ゾンビってのは元となる感染源に噛みつかれるか、作為的ならウイルスガスを直に吸い込むとかするもんだが……」


 疑問は晴れないまま死体とにらめっこしていると、今度は複数の足音が家の両サイドから迫って来ていた。


「ガラス窓の音のせいか!? 自転車は……もう無理だな」


 玄関側の脇に停めているため、ここからだと向かってきているゾンビ共を相手にしないと回収できない。

 だが、戦っているうちに数が増えたり挟み撃ちにでもされたらおしまいだ。


「自転車は諦めるか……。いつの間にこんな増えたんだ?」


 疑問は尽きないが、今はここで考察している時間はないし撤退するしかない。


「健、家めちゃくちゃにしてすまねぇ……」


 本人には聞こえはしない懺悔を残し塀をよじ登り、別の家と裏道から脱出に成功。

 あまり地形に詳しくない学校へ向かうのは断念し、来た道を帰り健達を待つしかない。


 行きで見かけた主要道路へ差し掛かった時には辺りが暗くなり、異変は目に見えて形になっていた。


「車が渋滞したままドアが開いて動いていない。血痕もあちこちに……うおっ!?」


 車と車の間にうずくまっているお食事中の奴に驚く。

 だが、道路とは反対側にある壁の死角から目の前に飛び出してきた奴の方が驚いた。

 しかし、フラフラ歩く次の動作であることに気付く。


「こいつ……俺が見えてない……?」


 飛び出してきたゾンビは俺が狙いかと思ったが、そのまま時折身体をぶつけながら車の列へと消えてしまった。

 突然のことに武器を構えたまま固まって様子を見ていたが、どこかに行ったためふと我に返る。


「暗いからなのか…?」


 ここで考えても埒が明かないため、傍で食事中のゾンビにネイルガンの弾を頭に一発撃ち込み、その場を後にした。



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