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遭遇



 ここから一話事の分量を1500〜2500字程度に減らして読みやすく投稿してみます〜




「あぁ! そんなことより葵見なかった!? 化け物見た時にはぐれちゃって」

「……え? あ、あぁ見てないよ智香ちゃんがここで初めての人間さ」


 そんなこと扱いされたラバーカップは後で慰めるとして、もう一人の待ち人と化け物の詳細を掴まないとな。


「そっか……大丈夫かな葵」

「悪いんだけど最初から話を聞いてもいいかな? 俺達にはここで何が起こってるか全く分からないんだ」

「うん……えっと、ここで葵と一緒に窓際で喋りながら美優を待っていたら近くの教室から急に悲鳴が聞こえてきたの。それで気になって見に行ったら変質者が生徒を襲ってて、恐くなって葵とは別々に逃げた後でここに隠れて通り過ぎるのを待ってたの」

「なるほど……それで化け物や襲われた子はどこに?」

「襲われたと行っても机や椅子で防いで逃げてたの。化け物は多分そこの階段から降りてったはず……」


 端にも階段があると知り確認のため教室を出てみると、確かに点々の汚れは階段へと続いていた。


「美優は外から来て平気だったの?」

「うん、外はなんともなかったよ。お兄ちゃんが変質者一歩手前だったけど」


 おい聞こえてんぞ妹よ。


「智香ちゃん、それはどのくらい前の出来事?」

「十、二十分ぐらい前かなぁ」

「ついさっきか……これだけ広い学校だと時間はかかるが、葵ちゃんを探しに行こう!」

「うん、あいつらがまだ居たらどうしよう……」

「極力避けて行動するから安心してくれ。問題はどこに行ったかだが……」

「健兄、この校舎は生徒の各教室しかないから隠れるなら別校舎だと思う」

「分かった。二人とも離れずにな」


 こうして俺達は不気味な校舎よりまだ人が居そうな図書室、体育館を重点的に見回ったが既にもぬけの殻だった。

 体育館なら普段部活動やらで人が居そうだが、教師が人手不足に陥り生徒もなるべく早期帰宅させようとのことで、ほとんどは帰った後らしい。

 部活動を禁止しただけで帰宅は強制していたわけではないため、教室で暇潰しか待ち合わせしていた智香ちゃん達のようにわずかに残っていた生徒も居た。

 その生徒達も今は見当たらない。


「おかしいな。こんだけ探していれば誰かしらに遭遇するはずだが……」

「もうみんな外へ逃げたとか?」

「正門は開いてなかったろ? スライド式の鉄製の柵だが、逃げている最中ならわざわざ閉めないさ」

「あの〜……裏口から逃げたんじゃ……」


 美優と逃げた可能性を探っていると、智香ちゃんが申し訳なさそうに割って入る。


「裏口? こんだけ塀で囲まれているのにそんな手薄な入り口が?」

「あ、えっと、はい。……正確には頑丈な裏口は普段鍵が閉められているんですけど、体育館の倉庫に梯子があるんです」

「あぁ! 三中、馬場、鹿田の三馬鹿トリオがよく使うルートのことね」

「梯子? 三馬鹿?」


 話がよくみえないが美優もよく知っていそうだ。


「体育館の裏の塀へ梯子をかけて脱出する時に梯子を持ち上げ反対側へ、また入る時に同じことをしてるのよ」

「本人達はこっそり抜け出したり不良のつもりで見つかってないと思い込んでるけど、生徒にはバレバレね」

「三馬鹿ってのはいつも三人で馬鹿なことをしてる男子、三人の名字からついたアダ名よ」

「何がしたいのか意味不明だし、他の生徒からの評判はまぁ……お察しね」


 女子高生二人から散々な言われようである。

 会ったこともないが三馬鹿をとても哀れに思うよ……。


「でも、葵ちゃんまでそんなルートをわざわざ通るかな?」

「う〜ん、葵なら正門を通ってすぐ閉めたか……飛び越えたかも」

「そうね。見かけと行動が一致しない子だしね」


 俺の中で、あの大人しくて気弱そうな葵ちゃんのイメージが音を立てて崩壊していく。


「ま、まぁみんな化け物から無事逃げられたならいいんだけどさ、肝心の化け物はどこへ行ったんだろうな」

「みんなを追っかけて……外へ?」

「化け物は探したくないよぅ〜」


「学校に誰か残ってないか分かれば……」

「あ、そうだ! 放送室を使ってみんなが居るか確かめたら? 居なかったら私達もここに居る必要ないし葵を探しに行けるわ」

「名案! それ名案!」

「試してみる価値はあるな。その放送室はどこに?」

「あっちの校舎の四階だけどいつも鍵がかかってると思うから、一階の職員室に鍵があったはずよ」


「そうと決まれば善は急げだな行こう!」


 周りに気を配りながら音をなるべく立てず足早に職員室を目指す。

 道中では相変わらず物音もしない、人の気配もせず、無事何事もなく着いた……かに思えた。


「あれが職員室か?」

「うん、なんか廊下まで散らかってるね」

「扉も半分開いてる……」

「急いで逃げ出した感じだな。鍵はどこだっけ?」

「手前の扉から入ってすぐ右手側に全部かかってるはず」

「ねぇ、何か音がしない?」


 智香ちゃんに言われて黙ってみると、かすかにゴン……ゴン……と何かがぶつかる音がしている。


「ここからじゃ見えないが向こう側の扉付近かな?」

「何か居るなら健兄気を付けて取ってきてよ」

「お兄さんガンバです!」


 言われずともこういうのは男の役目と相場は決まっている。

 誰だ勝手に決めたやつは。


「入って右の……えっと、体育館……家庭科室……放送室これか!」


 つい見つけた喜びで順番に触っていた鍵ごと床に落としてしまう。


「ばっ! 健兄静かにって言ったのに!」

「美優! ちょっとあれ!」


 鍵の音を聞き付けたのかさっきまでしなかった気配が後方からして、智香ちゃんが入り口から指差す方向を見た時、無意識に落ちた全ての鍵を急いで拾っていた。


「先生……? 生活指導の立川先生?」

「体育の大林先生も……」

「美優! 智香ちゃん! 急いで逃げるぞ!」


 混乱している二人をよそに、先生と呼ばれた者達はフラフラしながら近付いている。

 パッと見、服も汚れておらず話しかければ応じてくれそうな先生達。

 だが、二人から見えていない職員の机と机の通路で、床に這いつくばって何かを貪っている化け物と、振り向きざまに目が合ってしまった。

 口に大量の血を滴らせながら。


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