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根原


 はっ、いかんいかん!

 花の女子高生に(うつつ)を抜かしてる場合じゃない。目的は生理用品と服だ。

 改めて中を見渡す。

 奥さんがゾンビになっていたのに物は散乱もしておらず、ほとんどの商品が綺麗に整頓されたままだ。


「おじさんは居ないみたいですね……」

「そういえばそうだな。奥さんはここで待ち続けて居たんだろう」

「生理用品ありましたよー!」

「じゃあ必要な物をしっかり詰め込んできていいよ。外は俺が見張るから」


 用品やら下着やらデリケートな物だろうし、回収は女子高生の二人に任せよう。

 見張るといっても侵入はされないだろうし、肝心の鍵を探さなきゃいけない。

 今のうちに奥さんの死体を調べるか。


「鍵は……やっぱ持ってたな多分これだ。それにしても、この人も目立った傷がない……?」


 いつぞやの小綺麗ゾンビが脳内で再生される。

 あの時は初日だったからあまり気にしてなかったが、一週間経った今も見つけてしまった。

 ゾンビって最初は人為的なことで誕生し、そこから広まっていくのが普通だが、ただの一般人が噛まれず自発的にゾンビになるってどういうことだ?


「勇真さん、勇真さーん!」

「あ、あぁ」

「詰め込み終わりましたよ」

「ごめんごめん、考え事してたわ」


 この人を調べても、血がどうなってるだとか専門的なことは何も分からない。

 俺は医者でも研究者でもないから、真実なんて永遠に不明かもな。


「よし、ならここを出よう。健もコンビニかマンションに戻っているかもしれない」

「戻ってるといいですね!」

「おばさん、商品を持っていきますね。……今までありがとうございました!」


 葵ちゃんの律儀な挨拶を聞いてくれてはないだろうが、俺も心の中ですみませんとありがとうを浮かべ、店を後にした。



――――――――

――――――

――――



「ここは……?」


 俺は確かゾンビに追われていたはずだが、いつからここに居るんだろう?

 起き上がると辺り一面真っ白な部屋で、テニスコートぐらいの広さはある。

 入り口はカードキーと暗証番号でしか開かないようだ。


「実験開始、プリデイションタイプ投下」


 どこからか無機質な音声が響く。実験……?

 考える間もなく、エレベーターくらいのサイズで反対側の壁が静かにり上がる。


「オアアァァァ!!」

「こいつはあの時の!」


 俺をさっきまで追っていた奴が雄叫びを上げながら突っ込んでくる。

 普通のゾンビより――いや、先程より動きが更に速い!


「くそッ! 逃げ場も武器もねぇ!」


 広さはあっても戦闘を強いられているとしか思えない構造。

 なるほど、これが実験か……!


「グゥアアアァァ!!」

「離しやがれ! なんだこいつ力もつえぇ……!」


 ガチガチと歯音を立てながら口が徐々に近付いてきやがる。


「俺なんか食ったら腹壊すぞ! 不味いぞ!」


 既に全部壊れてる相手に言っても無駄で、相変わらず力も緩まない。


「このままやられてたまるか!」


 相手の突進を利用し、肩に手をかけたまま地面を蹴る。

 うまくいけば相手の肩で倒立をする状態になり、飛び越えた後に奴は壁に激突するはずだ。


「ぬおぉ!?」


 しかし、予想に反してジャンプした高さが六メートルぐらいの天井まで届き、奴の肩からも手が外れる。

 しかも、奴目掛けて真っ逆さまに落下。


「ちょ、避けれん――」

「アアァ!!」


 もう駄目だ。終わった俺の人生。

 走馬灯のように奴に向かっていく。

 あぁ死ぬってこんな感じなんだな。

 せめて……せめてこの場にラバーカップが欲しかった!


「ヴォアアアァ!」

「うわああぁぁぁ――はぁ! はぁ! はぁ……」


 気付いたらさっきとは違う景色が見える。


「随分なお目覚めだね」


 そこには椅子に座る銀髪で長髪の男が居た。

 髪は後ろで束ねており、眼鏡をかけ白衣を着用している。


「え……夢?」

うなされていたからね、悪夢でも見ていたんだろう」


 それにしてはやけにリアルだった。


「あ、すみません。ここはどこであなたは……?」

「私は根原ねはらといって、ドクターをしている者だ。ここは私の別荘で、君が倒れている場面に偶然遭遇してね。外は危ないから勝手に運ばせてもらったよ」

「命の恩人じゃないですか! あ、俺は黒川健といいます。ゾンビに追われてて本当に助かりました! でも、よく担いで逃げ切れましたね」


 あのゾンビは夢の時程じゃないにしろ、素早くしつこく追跡してきていた。

 この人が助けてくれている間にも迫って来ていたはず。


「ゾンビ? いや、君だけしか見てないが」

「え? 声とかしてませんでした?」

「私には聞こえていないな」


 いつの間にか引き離してどこかへ行ってくれたんだろうか。


「そうでしたか……あのもう一つすみません」

「なんだい?」

「どうして俺が人間だとすぐ分かったんですか?」

「ハハ鋭いね。誇れる趣味じゃないがこんな世の中でも外のことは気になっていてね。監視カメラをハッキングさせてもらって外の様子を常々視ていたんだよ」


 ハッキング……医者でありながらなんつー特技をもってんだこの人。

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