分析
「まぁ未だに奴等が本当にゾンビなのか、正体がはっきりと分かってないしな」
「? 勇真の言う通りになってるし、襲ってきて人間を食べるなんてゾンビじゃないのか?」
「映画通りならな。だが、奴等の行動は似ているが見た目に違いが見られた。怪我をした形跡が全く無いんだ」
「見た目? パッと見普通の人間に見える奴がいたこととか?」
「!? 健も出会ったのか? どこで?」
「美優の学校の職員室でだよ。傍らには貪っていたゾンビがいたが、それとは別に先生もどきが二体いたな」
「なるほど……つまりその小綺麗なゾンビは、争う前に既に死んでいたかゾンビ化したってことだ」
「そうか、ゾンビはゾンビを襲わないってのも定番だったっけか?」
「あぁ興味が無くなるの方が正しいか。映画によって違うが、新鮮な肉を求めるから常に生きている人間を標的にし、ゾンビは段々腐っていくから対象外のようだ」
「へぇ〜違うパターンは?」
「奴等にも餓死の概念があって、時には同じゾンビを食うだとか、そのまま何も口にせず死ぬパターンがあったな」
「餓死か、それだとまだ隠れていれば平和になりそうだ」
それでも完全に気を抜けないんだけど、健は知る由もないか。
保菌者が居て粘膜感染から再発するパターンだったからな。
「話は戻るが、小綺麗なゾンビはなんで複数発生したか不思議なんだ」
「さっき言ってた怪我をしてないからか?」
「そうだ。感染するなら感染者から襲われないと仲間入りしないからな」
「小綺麗ゾンビは怪我してないから襲われてはいない」
「あぁ、矛盾だ。血液感染にしたって空から目に血が入らない限り、無傷で服も汚れていないなんて普通じゃあり得ないな」
「ちょっと聞きそびれたんだけど、最初のゾンビってどう発生するんだ?」
「あ、あぁ言ってなかったっけ。大抵の作品は故意に漏れたり工場が爆発したりしてウイルスが散布される系だ。他はほぼ原因不明で隕石降ったらゾンビが発生しましたとか唐突系かな」
「案外ご都合主義なんだな。三日前に流れ星が大量に降ったことが関係あったりして」
「それは……これから調べないとな」
星相手に調べるもクソもないんだから、その線は外れていてほしい。
某ゾンビゲームみたいに陰謀が渦巻いていたら、一般人の俺達にはどうすることもできん。
そういった原因だの解決だのは特殊部隊に任せて一般人は生き延びるだけだ。
その特殊部隊っぽいのは病院前でやられてしまったけども。
「俺達には解決なんて無理だが、原因くらいは突き止めて損はないからな。なので、当分はここからゾンビの観察をしようと思う」
「確かに原因は知りたいな。また広がると面倒だし、奴等の違いも把握しなきゃ次はやられるかもしれない」
「違い……か。この辺りのゾンビで処理がてら試したんだが、種類があるのかと思うぐらい特徴がバラけてた」
「処理してたのか。通りでこの付近は数が少なかったわけだ」
「あぁ健の家から帰る途中に気になるゾンビがいてな。それから少し検証してみたら目がいい奴悪い奴、耳がいい奴悪い奴がいたことぐらいは分かったんだよ」
「そんなことどうやって調べたんだ?」
「目は夜になるとこっちを認識する奴としない奴がいたから推測だが、耳は石を遠くに投げてみたら反応する奴しない奴がいたな」
「個人差があるってことか?」
」
「そんなとこだろうな。後、その特徴が良かった奴は部分的にそのパーツが一回り大きかった気がするんだよな」
「あー俺も出会ったかもしれん。普段ならそこまで手こずらないんだけど、さっきはやたら力が強い奴がいて危なかったぞ。腕は元々太いのかもしれんが」
「そんな奴もいるのか、迂闊に近寄れないな」
「なんにせよまだまだ情報不足ってことだな」
俺と健が戦ってきた中だけでも特徴がおかしいゾンビだらけだ。
ここから先、何よりも大事なのは敵に見つからず敵を知ること、有効な情報だな。
「明日話す予定だったが随分話しすぎたな。明日のためにもう寝よう」
「賛成。実は昼から動きまくってもう頭が回んねぇんだ」
時計を見ると時刻は十一時。
想定できていたとはいえ、ゾンビを実物で見て命のやり取りをすれば、身体は緊張しまくっていたはずだ。
疲れているのは健だけじゃなく、俺もだった。
寝る前に確認するもニュースは依然として変わりなく、外ではどこかで救急車かパトカーのサイレンだけが虚しく響いていた。