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1. ぼっち

異世界テンプレを書いてみたかったのでチャレンジ。

色々とおふざけしたいにゃあ


「キングベヒモスだ!」


 ドラゴンに匹敵する最凶クラスの強敵。

 全長五メートルに及ぶ巨体にも拘わらず、鍛え抜かれた四つ足で縦横無尽に駆け回り、自慢の鋭い爪で獲物を一撃で葬り去る。

 激しい攻撃を辛うじて躱し、胴体に一撃を斬り入れたとしても強固な皮膚が弾き返す。

 遠距離から魔法で攻めたとしても、魔力を帯びた体毛がバリアの役割を果たし軽減する。

 世界トップレベルの実力者が徒党を組んで対策にあたってなお、倒すには多大なる犠牲が必要となる難敵。


 個人での出会いはすなわち死を意味する。


 グオオオオオオ!


 獰猛な叫びを伴い、キングベヒモスは対峙した人間『カール』の元へと飛び掛か……ろうとはせず、一目散に逃げだした。

 恐怖におびえ、その場を離れようとする情けない姿は、ソレが強者であるとは到底思えないほど無様であった。


 というか、大きな犬のようでちょっと可愛かった。


「逃がさないよっと」


 深い深い森の中、うっそうとする木々をへし折りなぎ倒しながら逃げ出したキングベヒモスの元へカールは一瞬で詰め寄ると、腰に差した短剣を一閃。


 ゴトリ、とキングベヒモスの首が地に落ちた。


 萌えキャラになんてことしやがる。


 いや、勘違いしてはならない。

 カール以外が相手であれば、獰猛な獣なのだ。

 きっと。


「やったぜ。キングベヒモスの肉旨いんだよなぁ。久しぶりの御馳走だ」


 カールは倒れたキングベヒモスの腹部に近づき、先ほど首を切り落とした短剣を軽く振るった。

 すると、胴体から血が噴き出す。

 固い皮膚とは何だったのか。


「あっぶねぐわっ!」


 ぷしゃあと飛び出す血で濡れるのを避けるために大きく後方へジャンプしたカールだったが、慌てて勢いよく飛びのいたためか、後方に生えていた木に思いっきり体をぶつけてしまった。


 天然キャラアピールしても似合わないぞ。


「寄りかかるのに丁度良い大きさの木じゃないか。一休みして血が抜けるのを待ってようかな」


 誰もいない周囲に向かって弁解の独り言。

 うざい、ではなく、カールは長期間この森に一人で住んでいたため、独り言をつぶやく癖がついてしまっただけなのだ。


「そろそろ記念日が近いし、こいつの肉で祝杯あげようかな」


 やっぱりうざい。


 血抜きをした後は軽く解体して、一番脂がノっていて美味しい腹部の肉と、逆に脂が少ないものの濃厚な肉の味を堪能できる赤身の部分を一ブロック切り出し、アイテムボックスへと格納する。

 食べられる場所は沢山あるけれど、他の部位はこの森に住む様々な動物たちへのお裾分けだ。

 キングベヒモスは肉の味が絶品なだけではなく、強力な武器防具に加工できる爪や皮やなど、全身のほぼすべてが高価な素材である。

 素材を街に持ち込めば、一生遊んで暮らせるほどの大金を手に入れることができるが、カールは惜しげもなくキングベヒモスの死体を放置し、住処へと足を向けた。


 ああ、かわいそうなキングベヒモスよ。

 カールに出会ったのが運の尽きだったのだ。

 生まれ変わったら優しい飼い主に出会えることを願ってるぞ。

 くそっ、カールめ。




 終焉の森。

 アスルクローレ大陸の最北端から海を渡った先にある島。

 名もなきその島は全体が森に覆われていて、キングベヒモスをはじめとした最凶クラスの敵がひしめき合っている。

 森の中に特別な資源があるわけでもなく、レアモンスターが住んでいるわけでもない。

 一歩足を踏み入れればあらゆる生物が十分持たずに死に絶えると言われている絶海の孤島。

 もちろん凶悪モンスターを倒せば貴重な素材が手に入るが、ここ以外の狩りやすい場所にも住んでいるため、敢えてこの森に挑む理由もなく、力試しをするには難易度が高すぎる。


 この森のモンスターが世に放たれれば、世界は間違いなく終焉を迎えるであろう。


 カールがこの森に足を踏み入れたのは、丁度二年前のことだった。




―――――――――




 ―――ユニーク職『ぼっち』になりました。


「は?」


 辺境の村に住むカールは15歳で成人したものの、家にひきこもり親のすねをかじって生活する日々を送っていた。


 親のすねが丈夫であることを良いことに全力でかじっていた。ガジガジ。


 そんなある日、近隣の漁村でクラーケンが出現し、領主の命令で付近に住む冒険者が集められた。

 丁度そのころ周辺の街の冒険者の大半が遠征していたこともあり、半ば冒険者引退気味で細々と依頼を受けて活動していたカールの両親も召集されることとなった。

 実力が乏しい冒険者たちの力でクラーケンを退治するのは非常に厳しく、多くの犠牲の上に辛うじて海へ追い返すことが出来た。

 そしてカールの両親もその犠牲に含まれていた。


「マジこれからどうしよ。外に出たくないでござる」


 一人になったカールの元に、領主からなけなしの慰霊金が届いたものの、両親が残したお金を含めても三か月も生活すれば底をつくような状態だった。

 そもそもお金を使って食料を買うにも家の外に出なければならない。


 さっさと外に出ろ、このニート野郎。


「あいつらと話をするくらいならいっそのこと街に出て冒険者になろうかな」


 この世界では10歳になると神様から『職業』を与えられ、その『職業』での自立を目指して子供たちは努力するのだが、カールは何故かどれだけ経っても『職業』を与えられることは無く、村人たちから後ろ指をさされるようになった。

 その侮蔑の視線に耐えられずひきこもりになったカールとしては、いくら生活に困っているとはいえ、自分を嘲笑っている村人たちとコミュニケーションを取るなど考えられなかった。


 こんな村滅びれば良いのに。


 ただ、街に出て冒険者として生計を立てる実力がカールに無いことを教えてくれるはずだった両親は、残念ながらもうこの世に居なかった。


「でも冒険者って何やるんだろ。親父もお袋も村の雑用ばかりしてたし、そのくらいなら俺にも出来るかな。あ、でも人と話をしない仕事が良いなぁ」


 なめ腐り過ぎである。


 カールの両親は人が良いから村人の手伝いをしていただけであって、本業の冒険者の仕事として合間に森に出て狩りをしていたのだが、職業が決まってない息子が危険な冒険者になるはずがないと思い込み、自分たちの仕事の内容を全く伝えていなかったのだ。


「よし、行こう。……やっぱり明日にしよう」


 ヘタレである。

 いや、引きこもりが外の世界に出るのだ。

 勇気がいるのは間違いない。

 頑張れ、カール。

 頑張れ、カール。

 頑張れ頑張れ、やれば出来る、外に出ないと話が進まないんだよ。


 そんな逡巡を一週間も繰り返し、保存食をすべて食べ終え、本気で外に出なければ飢え死ぬ状況に追い込まれ、今度こそ外に出ようと決心したその時、天の声が脳裏に響いてきた。


「俺の職業?いまさら?つーか『ぼっち』ってなんだよ」


 職業の説明を知りたい、そう念じると職業の説明が頭の中に思い浮かぶことは10歳の時に教えられていて知っていた。

 天の声を聞き逃しただけで自分には既に職業が授けられているはずだと淡い期待を抱き、職業の説明が思い浮かばないか何度も試してみたけれど何も起こらなかった経験がある。


 切ない。


 職業:ぼっち

 概要:一人用のスキルを使いこなすことができる。一人の時に基礎能力が大幅に上昇する。

 レベル:0

 スキル:一人遊び

 特性:一人が似合う

 次のレベルまで:一週間誰とも一緒に行動しない


「いや、意味わかんねーよ。スキルの一人遊びってなんだよ。特性も意味わかんねーし。あ、でも次のレベルには簡単に上がりそうだ」


 そんなこんなで謎のぼっちスキルを手に入れたカールは街に出て冒険者になり、ソロプレイで着実に強くなっていった。

 ぼっちスキルはレベルが上がるたびに強力な攻撃/防御用のスキルを習得でき、レベル9になったころにはドラゴン相手でもソロで撃破できる実力者となっていた。

 しかし、他人とコミュニケーションを取れないカールにとって、それがどれだけとてつもないことなのか知る由もなく、大分強くなったな、程度の認識でしかなかった。


 倒したドラゴンの素材を持ちかえれば街の人の反応で凄さが分かるのではないかって?

 カールがそんな目立つことをするわけがないだろう。

 コミュ障ぼっちはひっそりと目立たない依頼しか受けないのである。


 ちなみに、カールにとって冒険者という職業は非常に合っていた。


「素材の買取か?」

「(コクコク)」


「クエストの完了報告だな」

「(コクコク)」


 冒険者協会の窓口では最低限の会話だけで済み、レアなクエストを受けなければ目立つことも無い。

 宿も一括で長期間分支払ってあるし、食事も『いつもの』の一言で済む。

 後は毎日コツコツと日銭を稼ぎながら、時々スキルの確認のために強敵に挑むだけ。

 他人から注目されにくくなるスキルも習得し、悠々自適なぼっち冒険者生活を続けていた。


「そろそろ最高レベル目指してみようかな」


 ぼっちを拗らせ、宿で寂しく独り言をつぶやく毎日を続けていたカールは、職業レベル最大の10を目指すことにした。


 次のレベルまで:一年間誰とも会わない


 街で冒険者を続けている以上は絶対に達成できない目標のため、カールは街を出る決意をした。

 しかし、街を出て僻地に移動したとしてもいつどこで見知らぬ冒険者と出会ってしまうか分からない。

 職業ぼっちのおかげで自活スキルを大量に取得しているのだが、肝心の『誰とも会わない』という条件を満たせる場所に心当たりが無かった。

 そんなある日、冒険者が終焉の森について話をしているのを偶然立ち聞きし、そこで一年間過ごすことを決めたのだった。


 世捨てぼっちがここに誕生した。




―――――――――




「今日で丁度一年間だよな。レベル10楽しみだわ。どんなスキルが手に入るのかね」


 森の中に立てた豪華な木製のログハウスの中で、キングベヒモスのステーキを堪能したカールは、職業ぼっちがレベル10になる時間をワクワクしながら待っていた。


「まさかぼっちがこんなに役に立つとは思わなかったよ。モンスターに負ける気しないし、一人で生活できるし、こんなにも俺向きなスキルを授けてくれるなんて、神様サイコー」


 職業を授けてくれなかった頃は全力で恨んでいたくせに、現金なものだ。


 暖炉の前のロッキングチェアに座り揺さぶられていると、だんだんと眠くなってくる。


「あぶねぇ、このままだと肝心なレベルアップの瞬間逃ししまうぜ。まだ時間ありそうだし、風呂にでも入ってさっぱりしてくるかな」


 もちろん建物も風呂もすべてカールの自作である。一人で出来ることならなんでも簡単にできる。チートスキルだ。


「その前に…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふぅ」


 風呂に入る前にアレをするのがカールの日課だった。

 ってこれ書く必要ある?男のナニのシーンなんてきもいだけなんだが。


「何気に最初に習得した『一人遊び』を一番活用してるかもしれんな」


 スキル『一人遊び』は、その名の通り一人遊びが上手になるだけのスキルであり、一人用の新しい遊びを思いついたり、一人用のカードゲームを全力で楽しめるなど、日常生活ではほとんど役に立たないスキルのはずだった。

 しかし、ある日ふと、『アレにも使えるんじゃないのか?』と思ったカールの手により、スキル『一人遊び』は満足の行くアレをするためのスキルに変わってしまったのである。


「いやぁ、このまま残りの人生を一人で楽しく過ごせれば最高だわ。一人サイコー」


 死ぬまで一人で楽しく過ごす。


 風呂から出た後、そんな世捨て人の生活を確信していたカールの頭に、声が響いてきた。




 職業『ぼっち』がレベル10になりました。

 限界突破後の基礎能力が最大値になりました

 すべての一人用スキルのレベルが10になりました。

 スキル『奇跡:ぼっちタイム』を習得しました。

 特性『ぼっちを極めしもの』が付与されました。 


 職業『ぼっち』はレベルが最大になりました。

 職業『ぼっち』は『ハーレム』に進化しました。




「……は?」


ざまぁは考えてないです。

入れるとしても相当先になるでしょう。

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