2.抜擢
追加するのは1、2年後と言いながら1週間後に投稿する私。
名前があるけどあまりスポット当たらなかった人が主人公の話です。
「一時的に編成される新たな部隊の副長の候補として君の名前が挙がっている……らしい」
「私がですか!?」
「そうだ」
「兵長は了承したのですか?」
私、アイリナーシュ・ハウエンレヒトことアイリはドートロスの野営地の部隊テントに呼び出され、カーマスア兵長からの伝達事項を聞いていた。
「お前にとっては願ってもない出世じゃないか?部下の成長は兵長としても喜ぶべきことだ」
私の上司であるカーマスア兵長は面倒見がよく、他の部隊員達にも慕われている。
「ありがとうございます」
私は喜んでくれていたカーマスア兵長に頭を下げて感謝する。
そして、頭を上げた時にどんな部隊の副長になるのか尋ねてみたが、カーマスア兵長は司令部へ行って、司令官、参謀から直接聞けと答えられた。
そのため、部隊テントを出てすぐに司令部のテントに向かうことにした。
私は軍に所属、徴兵されてからすでに7年戦場で生き延びている。
言わずもがなで、同期の皆の大半は天に召されてしまったが、生き残った者の多くは地元に帰り、家業を成し、子を設け育てているらしい。
年齢的にもいい年なので、少しは羨ましいとは思ったりもするけど、私は地元に帰ることより軍に残留することを選択した。
地元に戻っても私の居場所はないのだ。
私の地元での立場は新規開拓団に参加した一代貴族の先祖を持つ家名持ちの大家族の一員である。
兄弟が多く、女性が余りがちの私の地元の村に私が帰っても先が見えない。
かと言って村以外に生きる場所などなく、生きていく手段なんて限られてしまう。
なので、軍に残ることを選択した。
軍に残ればお給料は出るし、住む場所も食事も軍が支給してくれる。
もしかして、いい人の目に留まれば軍の中で結婚もあり得る。
未だ、私はそんな人には巡り合えていないけど……
まあ、私は皆におっとりしがちで癒されるとはよく言われるし、その分余計に心配をかける。
そんなに世間知らずなつもりはないし、時間を無駄にしているわけでもないのに雰囲気、表情と仕草の印象で悪い人たちにつかまって連れていかれそうな幼さを感じさせてしまうらしい。
そんなところが軍に残る男の人の目に留まらない理由かもしれない。
でも、今回私は副長の候補に選ばれた。
たぶん、有力候補もしくは筆頭候補かもしれない。
男性の同期の残留組で優れた人たちはやっぱり兵長や副官に結構なってる。
でも、女性の中で副官になったと耳にしたのは2人くらいしか知らない。
私は一時的とはいえ同期女性で3番目の副官になれるのだ。
たぶん顔の表情は緩んでいる。
少し浮かれているのかもしれない。
気を引き締めなおして、司令部のテント前で静止し、背筋を伸ばす。
司令部の入口に立つ衛兵に敬礼し、後に来訪の理由を伝える。
「あの、カーマスア兵長から、臨時の部隊の副長の話を受けてきたアイリナーシュ・ハウエンレヒトです。詳細を司令か参謀から聞くように指示を受けてきたのですが、お伝えいただけますでしょうか?」
「その場で少し待て、確認する」
兵の1人がテントに入っていった。
しばらくすると出てきて私に指示を伝えた。
「確認した。どうぞお入りください」
「はっ、失礼します」
私は司令部に初めて入る。
かなり緊張する。
大丈夫かな。正しく受け答えできるかな。
か、噛んだりしないよね。
私は司令部のテントに入ってすぐに姿勢を正し、敬礼と同時に挨拶する。
「参りました。カーマスア隊所属、アイリナーシュ・ハウエンレヒトでしゅ」
噛まないように心配したらすぐに噛んでしまった。
ちょっと恥ずかしい。
でも言いなおすのはもっと恥ずかしいかもしれない。
「兵長から副長についての話を聞き、詳細をお伺いに来ました」
なかったことにしようと言葉を続けて、用件を伝える。
まだ私は、背筋を伸ばして気を付けの姿勢をしたままだ。
「よく来た」
司令……だと思う人が正面に座っており、声をかけてくれた。
司令官の徽章が付いてる。
風格を感じさせてくれる人だ。
そしてその傍には賢そうな人がいる。
かなり背が高い。
多分あの人が参謀だと思う……あれは参謀の徽章だ。
間違いない。
しょ、初対面……ですよね……。
私は直接あのお二人と話したことはないです。
一兵卒の私には縁遠い経験を、たった今しています。
「もう1人、来るからそれから話をするから、そのもう少しこちらに来て楽にして立っててください」
少し優しく参謀の人が話しかけてくれた。
私は少し奥に入り、もう一人を待つ。
やってきたのは体格のいい男性。
この人も副長か。
二人のどちらかを選ぶのかもしれない。
司令が口を開いた。
「よく来た君たちにはそれぞれ臨時に編成する部隊の副長をしてもらう」
「お二人の上官の隊長は今年入ってきたザクスという名の特権兵がなることになってる。アイリナーシュ・ハウエンレヒト君は後方支援の薬剤調合部隊として彼の調合知識と技術を1日で理解し、次の作戦に必要なものの準備をしてもらう。そして、ベッケルドルフ・ビアンセン君は特務部隊として、森に入り、素材調達をし、次の作戦時にはザクス君の部下として作戦行動を行ってもらうことになる。詳細は追って書面に起こし、明日朝には君たちに届くようにする。聞きたいことがあればこの場で聞いてくれたら答える。無ければ副長の徽章を受け取って明日に備えて休むといい」
参謀が簡単な情報を伝えてくれた。
副長の徽章を受け取るとその場で私ともう一人は取り付けその後、敬礼して司令部を出た。
私の上官は特権兵かぁ。
……今年入って来たって言ってたけど、15歳?……だ、大丈夫だよね。
私、が、ガンバ……
気まぐれ更新は楽しいかもしれません。
気を使わなくて済むので。
でも次はいつになることやら。