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ヴァーヴ・ヴィリエの魔飾師さん  作者: 霧聖羅
閑話 其の一 猫獣人クレソンとルッコラ
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その13

 ルッコラは知らなかったのだけれど、『採集士』と言うのはハンターの間では必ずいなくてはいけない職業ではない物の、パーティに一人欲しい職業なのだそうだ。


「採集なんて、誰でもできるんじゃないの??」


 と、言うのがルッコラの感覚だけれども、ハンターになるのは主に陸人だから、森で暮らす森人や獣人ほどには森の植生に詳しくないらしい。

そんなんで、一体何を食べて生きていくんだろうと思うが、陸人達は食べ物は育てるものだと教えて貰い、思わず驚きの声を上げてしまった。

森の中ではわざわざ育てたりしなくても、食べるものは沢山あるのに。


 ルッコラも森育ちの獣人だから、『採集士』のクレソンほどではない物の、ある程度は採集もこなせる。

毒の有無を見極めるのなんかは、得意中の得意だ。

ソレだけはクレソンよりも上手にできる自信がある。

匂わない奴は判別できないけど。


 採集の最中は、二人は見張りとして周囲の警戒を行う。

クレソンに植物の見分け方を教わっているメンバーにルッコラが入る必要はないから、彼女はいつも見張り番だ。


「ソレがなぁ……。陸人にもたまーに、植物オタク的なのがいるんだけど、そう言うのは大体学者になるんだってさ。」

「学者??」

「そう。それを専門に研究して、薬とかの開発したりとか色々してるのがいるってセージが言ってた。」

「うわぁ~……。物好きも居るんだねぇ。」


 森人や獣人は森の恵みをアレコレ弄る事はしないから、ディオンスのその言葉にルッコラはあきれた口調でそう返す。

薬草なんかは、塗ったり飲んだりしやすいように加工を行うし、食事の煮炊きはするけれど、基本的には森の恵みはそのままでも使えるものがほとんどなのだ。

使い方を知っていれば、という注釈はつくけれど。

そういった使い方は、里毎に様々なモノが伝わっており、そこから更に改良をしたりする事はない。

それらの改良や開発を行うのは、陸人に与えられた能力なのだと言われてる。

陸人のもつ創意工夫能力の代わりに、森人は『森を育てる』能力を、獣人は魔獣に劣らぬ運動能力を女神さまから授かったのだ、と長老からルッコラ達は教わっている。

『森を育てる』と言うのはイコール『植物を育てる』という事だから、森人の里の近くは特に森の恵みが多い。

そして森の恵みが多いという事は、その分、食料を求める魔獣が寄ってくる。

森人達は、魔獣の相手をするのには少し運動能力に難があるから、獣人族とは共存関係にあるのだそうだ。

それでも、多くの森人の運動能力は陸人よりマシだという話ではあるのだけど。


「森人や獣人でも、『採集士』を名乗るほど詳しいヤツってあんまりいないだろ?」

「……言われてみればそうかも。」



――私も多少は出来るけど、クーほど詳しくないし。



 ディオンスに同意しながら、ルッコラは心の中で呟く。

実際、『採集士』を名乗っている人達は里の中でも五人だけ。

クレソンは、その中の一人だ。

言われてみると、確かに採集士だと名乗れるほど詳しい者は多くない。


「だからさ、『採集士』がハンターに登録するとあちこちのパーティから引っ張りだこなんだ。

例え一度だけだとしても、その知識の一部でも教われれば後々違ってくるだろ?」

「それで皆あんなに熱心なの?」

「そそ。俺とジャニーは故郷に帰るから、上手くすればそっちでも役に立つかもだし。」

「ええ~? ハンター、辞めちゃうの?!」

「ジャニーはな。俺の方は、子供が出来たら多分復帰するかな。」

「子供が出来たら?」


 折角ハンターになったのに辞めるなんてもったいないと思ったルッコラは、ディオンスの『子供が出来たら』と言う言葉に首をかしげる。

子供が出来たらハンターを辞めるなら分からないでもないけど、彼は逆の事を言っているからだ。


「貧乏な村だからなぁ……。」

「ふーん……。」


 ルッコラに、その事情は良く分からなかったけれど、世の中色々あるんだな、とちょっぴり淋しそうなその表情を見ながらぼんやりと考えた。

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