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ヴァーヴ・ヴィリエの魔飾師さん  作者: 霧聖羅
閑話 其の一 猫獣人クレソンとルッコラ
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その7

 クレソンがある程度の小石を取り除いた頃になると、付近の偵察に行っているルッコラとジャニー以外のメンバー全員が同じ作業をしていた。

四人がかりでやれば、テントを張る場所程度の小石を除けるのはそんなに時間がかかるものでもない。

あっという間にその作業を終わらせると、今度はテントの設置だ。


「五つのパーツの全てに輝石が埋め込まれているだろう?」

「はい。」

「この輝石には、『埋め込んだ対象を空気中に含まれた魔力を用いて小さくする』という魔法が封じられている。持ち運んでいる間の事故を防ぐためにキーワードが設定されているんだけど、元のサイズに戻すときは『解除』。輝石に封じられた魔法を発動させるときは『縮小』だ。どちらの場合でも、使用者はほんの少しだけ魔力が必要になる。」

「持ち運び中に元の大きさに戻ってしまう事があるんですか?」

「ごく稀に、余分な事を考えながら輝石部分に触れてしまって……と言う事があったらしいな。」


 テントの設置はセージの担当らしい。

彼は嬉々として、クレソンに説明をしている。

クレソンとしても、ディオンスと違ってセージの相手は気持ちが楽だ。

なにせ、妙な絡み方をしてこないし、陸人の生活に根付いているらしい魔飾について色々教えて貰える。

それも杓子定規に知識を押し付ける訳ではないのが有難い。


 テントの設営自体は簡単なものだ。

なにせ、最初に本体を『解除』して四隅がどこに来るのかを確定すれば、あとは棒を一本づつ『解除』して地面に打ち付ければいい。

棒を打ち付けた後は中の四隅に荷物を置いてテントの布がずれないようにすれば、三人の人間が中で眠れる程度の大きさがあるテントの設営終了だ。


「設営自体は簡単ですけど、小さくなっている意味ってあるんですか?」


 これよりも軽いものなら、多少嵩張ってもいいんじゃないだろうかと思いながら尋ねてみる。

実際には屋根がある場所で眠れるだけでも安心感は違うのかもしれない。

でも、それなら木のウロでも探せばいいだけのようにもクレソンには思えた。

人が入れるサイズの物は多くはないものの、探してみると意外と見つかる物なのだ。

尋ねるついでにその意見も告げてみると、セージは苦笑しながら答えを返す。


「地元の……よく知っている場所ならばそれも有りだな。」

「どこも似たようなものじゃないんですか?」

「そうとも言いかねるな。」


 彼の話によると、この森は樹齢の長い木が多い為、クレソンの口にした方法で夜を明かすことも出来るかもしれないが、他の森の場合はそれが適用されないこともあるらしい。

にわかには信じがたい話だ。

クレソンにとって、まだまだ細い若木だと思っている程度の木しか生えていない森など想像もできない。

それなのに、そういった森の方が多いのだと彼は言うのだ。


「……世界って広いんですね。」


 クレソンが口にできたのは、そんなどうでもいいような感想だけだった。

セージは薄く笑って同意を示すと、言葉を続ける。


「俺たちも、この国の半分も回ったことはないから大したことは言えないが、それでも少し足を延ばしただけでも新しい発見がある。更に遠くに行ったら、もっとだろうな。」

「ハンターなのに、旅はあまりしないんですか?」


 『ハンターは根無し草。』

そう、里の大人が口にしていたのを聞いて育ったクレソンは意外に思いながら問いを口にした。

根無し草と言うのは、住所不定でいつもあちらこちらと旅をして歩いているものだと思っていたのだ。


「ハンターにも、拠点を決めてそこを中心に仕事をする者もいれば、あちこちを回って歩くのもいる。俺たちは拠点を決めるタイプだからあまり大規模な移動はしないんだ。」

「……ハンターはみんな、あちこち旅して歩くものだと僕もルーも思ってました。」

「意外とそういう連中は少ないのよ。」


 火の用意を終えたらしいステビアが、会話に混ざる。

ディオンスはどうしてるのかと首を伸ばしてみると、今日は彼が食事担当らしく米を炊く用意をしながら少し寂し気にこちらをチラチラ窺っていた。

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