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ヴァーヴ・ヴィリエの魔飾師さん  作者: 霧聖羅
三話 オタク魔道士セージ
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その25

 緊張に震える手でなんとかお茶を出し終えると、アニスは暇乞いをしてそそくさとその場を後にした。

目の前の三人の客人にお茶を進めながら、ミールは心の中でアニスに謝罪する。



――まさか、三人で来るとは思わなかったの……。

  アニスさん、本当にごめん!!!



 昨日やってきたステビアだけならば、アニスも一度会っているから大丈夫だろうと思っていたのだが、流石に会った事のない二人が一緒では彼女には荷が重い。

チコリがアニスと来客があるまで一緒にいてくれると言い出した時は、少し過保護すぎるのではないかと思ったのだが、彼女が居てくれて本当に良かったと思う。

アニスの対人耐性は、まだまだ低い。

今回の事で悪化しないかと、ミールはそれが不安だ。


「さて、今回のご依頼の件ですが……。」


 内心では、そんな戦々恐々とした思いが渦巻いているのだが、それは表に出さずに商談を切り出す。


「まずは、魔飾と魔道具の設定価格の違いについてご説明させていただきます。」

「?」

「魔飾と魔道具って同じようなものなんじゃないのか?」


 黄髪のジャニーは不思議そうな顔で首を傾げ、同じような疑問を感じたらしい淡い緑髪のディオンスが声を上げる。


「同じようなもの、と言うのはあながち間違えではないのですが、一般的な魔飾はどの魔飾師が作っても一定の効果を発揮するのに対し、魔道具は魔飾師によって効果がまちまちです。」

「なんで~???」

「それは、魔飾師個人個人のイメージ力の差によるものだとされてますね。」


 魔飾の場合、チコリの耳飾りのような完全一点ものでない限り、どの魔飾師が作ってもあまり性能に変わりはない。

そういった規格があるからだ。

そして、その規格毎に技術料が決められており、魔飾師が好き勝手に値段を決めることは出来ないようになっている。

そうであるにも関わらず魔飾工房毎に価格の違いが発生するのは、材料費の差に他ならない。

価格を一番跳ね上げる要因になるのは『輝石』であり、一般的には知られていないのだが、実は腕の悪い魔飾師の作品ほど高価な輝石を必要とする為、販売価格が高くなる。

最近では価格の高いものが喜ばれるとかで、デザイン性を高めつつ本来必要とするよりもワザとやや大き目な輝石を用いて魔飾を作る物もいるらしいのだが、それはまた別の話だ。


 一方で魔道具の場合は、魔飾師の腕前がそのまま作品に現れる。

魔法士でもそうなのだが、『魔法』にはその現象に対する理解とイメージ力が必要とされるというのがその理由だ。

その為、魔道具の価格は材料費+魔法ランク+魔飾師の格に応じた金額になる。


「……と言う訳です。」

「わざわざその説明をするって事はぁ~……」


 ジャニーは、返ってくる言葉を想像して顔を顰めた。

コレはアレだ。

とんでもなくお高くなるか、その逆のどちらかになるパターン。

しかも、相手の堂々とした態度からすると前者の方だろう。


「私の場合ですと、特Aランクなので結構お高くなりますね。」


 そして、告げられた最低価格に、三人は暫く言葉を失う。

その金額は結構いいモノを買えるつもりで用意した予算ギリギリだったのだ。


「お値段なりの効果は保証できますけれど……。」


 ミールはそこで言葉を切り、問いかけるように小首をかしげた。


「この十分の一の価格で、ご満足いただける魔飾をご用意することは出来ますよ?」



――さて、この商談はここからが本番。



 心の内でポツリと呟き、三人に微笑を向ける。

今回、ステビアに魔道具を作れる状態になったと話をしたのは、彼女達が魔道具をプレゼントするのを阻止する為だ。

何せ、プレゼントされる本人がそれを望まないタイプの人間だから。

どうせパーティ解散に伴って贈り物をするのなら、全員が幸せな気持ちになれるものであるべきだ、とミールはそう思う。

だから、ここで手に入らなかった代わりに別の町で購入なんて事を彼らがする前に、別の方向性を提示するのが今回、彼女をここに呼んだ理由なのだ。

魔法士=魔道具を用いずに、魔法を行使できる。

    基本的には陸人に存在しない。

    例外として森人や山人とのハーフに魔法士が現れることがある。

魔導士=魔力が高いが、魔道具を用なくては魔法を行使出来ない人。

    基本的に陸人のみ。

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