その22
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セージとの契約内容を再度確認すると、関係各所に連絡して回る。
今回の契約は、大型魔獣1頭が入る大型倉庫を貸し出し、夕方に転送されてきた中身を取り出し解体後に買い取り作業だ。
まずは、大型倉庫を有した肉屋へ向かうと、使用することになる倉庫の確認をする。
確認ポイントは、設置された魔飾がきちんと機能しているかどうかがメインだ。
「転送受け入れよし。状態保存、問題なし。」
「こんなん使うのも久しぶりだなぁ。」
傍で確認作業に立ち会っている解体所の親父はガハハと、豪快な笑い声をあげる。
この道30年だと言う彼は、既に孫が二人もいるおじいちゃんだ。
毎日、肉を解体し続けてきたその腕は確かなもので、彼の手で解体された皮には余分な脂はごく少量しか残っておらず、良質なものであるらしい。
お陰で、この村で獲れた魔獣の皮は買取値も高い。
この世界では、一歩、村や町をでてしまえばいつどこで魔獣とばったり出くわすか分からない。
流石に、人の生活圏で即座に出くわすという事はほとんどないのだが、ヴァーヴ・ヴィリエのように森と隣接している場所だとそうとも限らないものだ。
だから、そういった場合にも慌てず対処できるように、子供のうちからある程度の武器の扱いを学ぶのは、どこの村でも一緒なのだが、この村の場合は大イノシシを一人で仕留めるところまで鍛えられる。
ヴァーヴ・ヴィリエのあるクレティエの森は広大であり、その分危険な魔獣も多く生息しているのがその理由であり、大イノシシはこの森においてはさほど強い魔獣ではないのがその理由だ。
ちなみにヴァーヴ・ヴィリエでは、ハンターが居ない時には村の人間が狩りを行う。
毎日2~3人が狩りに赴き、周辺の生態調査を行うとともに日々の糧とする。
いざとなれば他の町から購入することも出来るが、自分たちで調達できる物を買うのも馬鹿らしいし、月に二回ほど当番の回ってくるこの狩り番は、多少の小遣い稼ぎにもなると人気があるのだ。
ごくごく稀にだが、この辺りには居ない筈の凶暴な魔獣が流れてきた場合には、村の人間だけで討伐を行う事もある。
普通、この村程度の規模の場合は中型の魔獣一頭分が入る程度の転送倉庫があればいい方だが、そうした環境である事も手伝って、ハンターがほとんど常駐していないにも関わらず、肉屋の地下には中型だけでなく、大型の転送倉庫も設置されている。
大きな獲物を仕留めた場合に村人たちが使う為に村長が維持費を支払っている物と、たまーにお山に狩りに行こうとやってくるハンターに貸し出す用のものだ。
「去年、お山に狩りに行ったハンターが使って以来でしたっけ?」
「そうなるなぁ……。」
ミールの記憶では、まだ祖父がハンターギルドの仕事をメインでやっていたほぼ一年ほど前にやってきたハンターパーティが使って以来の事だ。
その記憶には間違いはなかったらしく、肉屋の親父もうんうんと頷いている。
秋に大きな獲物を狙ってやってくるパーティが居るのは、冬に向けて少しでも金をためておきたいからなのだろうかと、ふと、ミールは思いを巡らせ、すぐにそれを否定した。
なにせ、この辺りはお山の上の方にしか雪も降らない。
寒くはなるから、それなりの冬支度は必要ではあるものの、ハンターの仕事の障りになる事はないだろうと思ったのだ。
実際には、雪が降らないだけでそれなりに冷え込むから、冬はハンターもあまり狩りには出ないのだが。
「明日から、毎日夕方に中身を確認。その上で輝石の採れる内臓は輝石士にもっていきゃぁいいんだな?」
「はい。そのようにお願いいたします。」
互いの手元の書類を確認しあい、サインをする。
同じようなやり取りを、輝石士の工房でも行うと転送袋の貸し出しに関連した手続きは終了。
宿にある受付に戻り、書類を片付けると午前中の仕事も終了だ。
時計を見ると、お昼には少し早い程度の時間だから、タイムスケジュール的には問題ない。
午後からの、魔飾師としての仕事の前にゆったりと食事を摂る時間がある事を確認すると、そそくさと家路につく。
ミールはすっかり、アニスに餌付けされてしまっているのだ。