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ヴァーヴ・ヴィリエの魔飾師さん  作者: 霧聖羅
三話 オタク魔道士セージ
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その8

 ステビアはミールの工房を出た足で、同じ目的で村に出た二人を探す。

思ったよりも大きな敷地である上に、あちこちに雑木林の様なものがあるものだから二人を見付けたのは二時間近く経った頃だった。


「おう、そっちはどうだった?」


 機嫌の良さげに手を上げるディオンスに、思わず渋面になってしまうのは仕方ないだろう。


「魔飾師は見付けたけれど、断られたわ。」

「ええ~???」

「なんでまた?」

「魔道具はサプライズプレゼントに勧められないって。」


 ディオンスもジャニーも、訳が分からないと言った顔で首を傾げる。


「え~っとぉ、それって、作る腕が無いとかそう言うんじゃ無く??」

「後は、相性がどうのとか、自分が作る魔道具はリーダーは気に食わないだろう、とかだったわね。」

「魔道具なんてどれも一緒じゃないのか?」

「私もそう思ってたんだけど……。そういえば、使える魔道具の数が既に上限いっぱいじゃないかって言うのも言ってたわね。」


 魔道具なんて扱う才もなく、正確な知識を持っていない三人はその場にしゃがみ込んで頭を寄せ合いながら首を捻る。


「なんで、セージがその魔飾師が作ると気に食わないだろうって?」

「魔飾とか魔道具とか、大好きだもんねぇー。気に食わない事なんてあるん?」

「分からないけれど……。宿の魔飾がどーたらって言ってたわよ。」

「……荷物に入るもんだったら、パクっちまいそうな勢いで鼻の穴広げてたぞ。」


 宿には男女別に泊まっている為、実際にその現場を見ていたディオンスのが彼だけだったのだが、その言葉にジャニーとステビアの顔に苦笑が浮かぶ。

セージのその様子が、まるで目に浮かぶようだったからだ。


「なんだか、アイツ曰く『新品なのにレトロな造り!』なんだと。」

「確かに彼って、レトロな魔飾が大好物よね。」


 うんうんと頷きあいながら、ステビアは宿に置いてあった魔飾を思い出す。

今、町で見る魔飾や魔道具は大きな輝石が一つポツンとついた、浮彫の模様が美しい代物だ。

この、輝石が一つだけ(・・)と言うのがポイントらしく、昔の物と比べてシンプルでありながら優雅でエレガントだと言われている……らしい。

ステビアとしては、値段が目が潰れそうなほど高い魔飾よりも、素朴な木製のネックレスとかの方がよっぽど実用的でかわいく見える。

魔飾にしろ魔道具にしろ、装飾品の形をしたものを10も20も身につけている時点で、その一つ一つがどんなにシンプルだったとしてもゴテゴテと下品に見えてしまう。

セージの場合は実用も求めた上で現在の状況になっているのだから、ソレを口に出すつもりはないが、オシャレという観点からするならば見た目は最悪だ。


「そう言えば……、宿にある魔飾に使われている輝石って値段がつかない様な(ゴミ扱い)サイズのばっかりだったんじゃないっけ?」

「ああ、でも小さい石が沢山ついててちょっと綺麗だったわね。」


 改めて言われてみると、宿に置かれていた魔飾は少し、普段見るものと大分違っていた様に思える。

普段町の宿で見ている魔飾は、小指の先(直径1センチ程度)の安い輝石が一つだけ使われたモノばかりである。

この村の宿にある魔飾に使われている輝石は、町で見る魔飾よりも明らかに小さい。

半分どころか、四分の一よりも小さい輝石がいくつも使われているモノばかりだ。

ついでに言うのなら、その輝石同士を繋ぎ合う様に施された浮かし彫りの様な紋様によってある種の完成された造形美を感じさせるが、町で見る魔飾にはそう言った紋様はあまり見られない。


「うーん……。なんにせよ、引き受けて貰えないかどうか俺達も行って見るか?」

「そだねぇ。」


 ステビアとしても、交渉事が得意なジャニーにからも頼んでみて貰いたいところだったから、その言葉は渡りに船だ。

再交渉は二人に任せる事にして、『カモミールの魔飾工房』への道を教えると、今度は自由時間を楽しみに村をぶらつく事にする。



――さて、適当に剣を振り回す事が出来そうな場所でもみつけて、身体でも動かす事にしよう。



 一日でもサボると、すぐに身体と言うのは鈍ってしまうものだ。

まだまだ引退するつもりのない彼女は、村をぶらつきながら適当な場所を探す事にした。

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