表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァーヴ・ヴィリエの魔飾師さん  作者: 霧聖羅
三話 オタク魔道士セージ
40/82

その1

ブックマーク&評価ありがとうございます^^

「きてる、きてる、きてるわ……!!!」


 ミールは、ハンターギルド支店の雑務を片づけながらブツブツと独り言を呟く。

その言葉に苦笑するのは、宿の掃除を始めた女将だ。


「まぁ、お客さんは来たねぇ。」

「そう! ハンターが珍しく、ヴァーヴ・ヴィリエにやってきてるの!!!!!」

「偶にはそう言う事もあるさね。」

「し・か・も! 若人達!!!」


 ドーン!!!!!

と、効果音が鳴りそうなほどのドヤ顔で胸を張るミールに、女将は苦笑を深める。

どうでもいいが、鼻から息をふきだすのは年頃の女性としてちょっとナンでアレだろうと思う。

そうはいってもミールが興奮する気持ちも、女将としては分からないでもない。

なにせどういう巡り合わせか、二組のハンターパーティが昨日の晩からこの村に滞在を始めたのだ。

実際には、それなりの部屋数を揃えた宿を維持管理できる程度には来訪者はあるのだが、そこはそれ。

一度に二パーティが滞在すると言うのが珍しいのは、女将も同意するところである。

チコリはぼっちだが、一応ソロで活動しているハンターなので、三パーティが滞在していると言えない事もないかもしれない。


「あんたが喜んでるのは、男だけのパーティじゃなかったからだろう?」


 女将の言葉通り、昨晩から滞在しているパーティはそれぞれ女性交じりなのである。

ミールは昨晩から興奮しっぱなしで、女将としてはもう笑うしかない。

ちなみに、滞在し始めたパーティの内訳は二人組と四人組。




 二人組の方は、双子の兄妹らしく雰囲気の良く似た猫人達で、年は十二歳前後。

ヴァーヴ・ヴィリエの北東に陸人の足で二日、森に慣れた森人達の足で一日の距離にあるルッセルの里出身で、先程、ミールの手でハンターギルドに登録したばかりの駆け出しハンターだ。

ミールがギルドの受付を初めて、初の新規登録者であり、彼等の初々しさにすでに彼女はメロメロだ。


 大人しそうな少年はの名はクレソン。

魔力が少ない者の多い獣人族にしては珍しく魔法士であるらしい。

髪色が水色である事から、『水』系統の魔法が得意らしいと言う事が窺われる。


 活発そうな少女の方はルッコラ。

見た目を裏切ることなく、ショートソードを腰に佩き動きやすそうな皮鎧を身につけているところから見る限り、軽戦士と言ったところだろう。

オレンジの髪がまた、気の強そうな表情を引き立たせている様に見える。




 もう一方の四人組は、剣士二人に斥候職と魔道士が一人づつの、割と経験を積んでいるらしい二十代前半位の陸人のみの男女混成パーティだ。


 剣士の女性はステビア。

明るい紫色の髪に良く日に焼けて小麦色の肌、黄色っぽい瞳の穏やかそうな人で『お姉さま』と呼びたくなるような雰囲気である。

背がスラッと高くて、なんだかカッコイイ。


 もう一人の剣士はディオンス。

淡い緑の髪に褐色の肌、青い瞳のこのパーティの中では少し厳つく見える男性だ。

男なので、ミールとしては興味が無い(どうでもいい)

彼の様なタイプは、村にもそこそこいるから供給過多気味だ。


 斥候職兼軽戦士風の女性はジャニーヌ。

仲間たちからジャニーと呼ばれているらしい。

黄色い髪に大きな青い瞳の小柄な彼女は、年齢の割に幼い雰囲気がある。

なんというか、いわゆる可愛い系と言うヤツだ。

顔立ちよりも仕草の一つ一つが、なんだが小動物じみていて見ていて飽きない。

昨夜から食堂で剣士の男性にチョコチョコからかわれては、彼をポカポカと叩いている。

ミールがちょっとだけ、彼女になら叩かれても良いかもと内心悶えていたのは誰にも内緒だ。

なにも、ミールが変態さんな訳じゃない。

ちびっこい女性におふざけで叩かれるのは、少し刺激的なご褒美の様に思えるだけだ。

きっと、同意する人も割と居るに違いない。

マチガイナイ。

そんな彼女が周囲に向ける視線から、割と優秀な斥候である様にミールは感じている。

可愛くて優秀とか、一家に一人置いときたいところだ。


 最後は彼等のリーダー役を務めているらしい魔道士のセージ。

赤い髪に赤い瞳と言う情熱的な色合いなのに、陸人の魔導士にありがちなひょろりとして神経質そうな印象を与える男性だ。

魔道士らしくジャラジャラと沢山の魔飾を身につけていて、なんだか重そうに見える。

ざっと見ただけでも、20個ほどはぶら下がっているだろうか。

どれにどのような効果があるのか、ソレを覚えておくだけでも面倒だろうし、アレ一つで一体どれほどの値段がするのかは想像もつかない。

きっとチコリ辺りがその内の一つの値段を聞いただけでも卒倒するほど効果であるのは間違いない。

ミールが見た限りでは、随分と大きな輝石がそれらの魔飾には用いられているようだ。

とはいえ、ミール的には随分とお金持ちなんだなと思った程度で、その事はすぐに頭の中から消え去ったのだが。

なぜかって?

ソレの持ち主が男性だから興味が無い。

そう言う方向で、ミールは色々徹底している。


 先の新人二人のパーティは、暫くこの村の周辺でハンターとしての仕事に慣れる為、簡単な採集依頼をこなしつつ、狩りの仕事をする予定らしい。

登録をした昨日から、せっせといくつかの採集依頼を請け負って出掛けて行く。


 もう片方の四人組はメンバー内の二人が結婚して引退する事にした為、もうすぐ解散するらしい。

このパーティでの最後の獲物として、デュパール山脈の入り口付近に現れる少し手ごわい魔獣を相手にする予定だと、神経質そうな赤毛の魔道士はミールに語った。

二~三日の間、この村で骨を休めてから出立する予定だそうで、その為に必要になる大容量の転送倉庫とそれを使用する為の取り決めを、明日の昼間に行う予定だ。

ミールは今、明日必要になるセルブールの町に提出する書類の用意を行っている。



――こんな書類仕事でも、変わり映えのしない日々の雑務と比べるとなんと輝いて見えるものなのかしら?



 大都市にある多忙なハンターギルドで業務を担っている者が聞いたら、ちょっぴり角が立ちそうな事を考えながら書類を作成するミールの視界から少しだけ外れた位置で、四人組のハンター達は丁度、少し遅めの朝食を食べ始めた。

魔法士=山人・森人・獣人のみ。

     自らの魔力の身を用いて魔法を扱う。

     ある程度、自らのイメージに沿った効果をもたらす事が出来る。

魔道士=陸人のみ。

     自らの魔力で魔法道具を用いて、魔法を扱う。

     魔法道具士が省略されて、今の呼称に落ち着いた。

     魔法道具《現在の呼称は魔飾》に刻まれた効果しかもたらす事が出来ない。


名称は似てるけど違うモノです。

陸人は、道具を介してしか魔法を扱う事は出来ません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ