終章3
西暦二〇五五年、四月上旬。
つい最近満開になったばかりの桜がもう散り始め、薄桃色の花びらが道路を埋め尽くす。その光景がまるで雪原のように見え、儚くも美しい。そんな風情を楽しみながら、英士、眞、愛衣、龍平の四人は学校の門を通り抜けた。
校舎内に入るとまずでっかく表示されたクラス替えの掲示板を確認し、今年は何組なのか宝くじの当選結果を見るように確かめる。幸いと言って良いのか、四人ともまた同じクラスだった。
「おっ! ここにいる四人全員また同じクラスじゃん、ラッキー♪」
「また眞と英士と私の三人で学園ラブコメができるわね❤」
「ああ、俺達の手でこの一年間をラブコメ一色に染めてやろうぜ」
とりあえず二人にゲンコツを喰らわせるが、本当は英士もまた四人一緒のクラスだったことが嬉しくてたまらかった。
クラスも確認したので玄関の所で長居は無用なので、とりあえず一同は教室に向かうことにした。だが、このパーティーで教室に向かうまでの間が非モテ男子の龍平にはたまらなく地獄だった。
行く先々で眞は女子生徒から「きゃあー、眞様❤」と黄色い声援を送られ、同様に愛衣も「愛衣さーん❤」とピンク色の法被を着たファンクラブ連中から声を掛けられていた。この二人の側を歩いていると、毎回決まって「邪魔だ、どけ!!」と二人のファンの何人かに踏まれる始末。
一方、英士も二人ほどではないが可愛い女子から度々声を掛けられてはいるが、愛衣が毎回無言による笑顔でプレッシャーを与えて相手を遠ざけてしまう。その時の独特な空気感が未だに慣れず、龍平の中である種の恐怖となっている。
「リア充なんて、死んじまえー!!」
大勢の人間がいる廊下の真ん中で、馬鹿が非モテ男子を代表して大きく叫んだ。
「はいはーい、そう叫んでも何のフラグも立ちませんよー」
「冴えないのにある日突然モテ始めるギャルゲー主人公になれる訳ないじゃん」
「そもそもお前にフラグが立つヒロインなんて現れない」
ギャラリーから発せられる言霊が心にグサグサと刺さり、新年度早々龍平は心を挫かれ廊下に倒れ込んだ。しかしそこは脳細胞がピンク色な思春期真っ盛りの男子、ただでは転ばない。女子生徒達のスカートの中の色彩豊かな花園を拝んでいた。が、その代償に幾多もの足による裁きが下った。




