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2章5

 数分前、同ショッピングモールの上層階にて。

『ジジジ……準備はできたかメアリー?』

「OK、ジョン。標準は合わせてある、いつでもいけるわ」

 爆弾騒ぎですっかりもぬけの殻となったショッピングモールの最上階に、黒スーツにタイトスカートの女性がスコープ付のライフルを構えていた。彼女のすぐ側には黒いバックが置いてあり、その中には組み立て式の銃器に弾が詰め込まれたマガジンの数々、スペアとしてのライフルスコープなどが詰め込まれていた。

 このショッピングモールは最上階までを見渡せる吹き抜けとなった造りをしている。そのおかげでこの階より下層の階にいるかえでやオコルゾウ達の様子が手に取るように分かる。

「ねえ、ジョン? いっそのこと、今ここで標的の坊やを麻酔弾で眠らせてボスの所に持って行かない?」

『ジジ……我らの今のミッションはあの老婆のバックアップだ。余計な気を起こしてヘマをすればボスの怒りを買うだけでなく、目標の少年が変に警戒して本来の目的に支障を来す』

 はいはい分かりましたよ、とメアリーは聞こえないように軽く舌打ちをした。

 相変わらず相棒のジョンはいつでもミッションが優先という頭の硬い奴だ。そんなことは長年彼とパートナーを組んできたメアリーなら百も承知。だから今まで彼女は四の五の言わず彼の言うとおりミッションを最優先にしてきた。

 しかし今だけは老婆のバックアップというミッションを無視したい。

「あの……何だっけか? 美少女戦士……?」

『ジジジ……美少女戦士プリティーフォーチュンだ』

「そう、それだ!!」

 全身が震え上がりブツブツとイボのような鳥肌が立つ。『美少女戦士』というワードを聞いたことにより生じたメアリーのアレルギー反応だ。

「なぁーにが美少女戦士プリティーフォーチュンだ、ふざけやがって!! こっちはわざわざ爆弾のデコイを仕掛けた上に、あのババアのバックアップも受け持ってるつーのに。あんなママゴト、日曜の朝にでもやってろってんだ!!」

 オタク、レイヤー、ネトゲ廃人、その他色々のカテゴリーに属する人間を目にしただけでイボのような鳥肌が全身に立つという拒絶反応を起こしてしまう。そんなメアリーの性格上、楓がやっていることが死んでも許せない。

『ジジジジ……そう怒るな。ガガ……あの少女もザザ……貴重なサンプルの一つ(``````````)。彼女のジ……戦闘データガガガ……が得られただけでも、ザザザ……今回のミッションを受けジジジジ……たガ……甲斐があザザ……る。そのデガ……ータを元に、ボジジ……スが今後のジジジジジジジジジ……を決める』

「あん? さっきからノイズが酷くて聞こえねーよ、何つった?」

 インカムから聞き取れるジョンの声がノイズによって遮られ、次第にノイズしか聞き取れなくなる。チッ、と舌打ちしインカムでの会話は諦める。代わりに携帯端末でのオンラインチャットで会話を行うようにジョンにメールを送る。その数秒後『了解した』とだけ書かれたメールの返信があった。

『ノイズが酷いんだけど、何かあったの?』

 すぐさま返信が来る。

『恐らくだが、何者かがこの通信に割り込んで我々の会話を盗聴しているのかもしれない』

「私らの通信に割り込むとかふざけろよ!」

 美少女戦士が変身アプリを起動する際、周囲の端末全てがハッキングを受けて通信手段が制限されることは話で聞いていた。その対策として独自の通信基地と通信回線を用意した。そんな通信回線に割り込む奴などどっかの変態かクソ野郎がやることだ。

「何処にいやがる、そんなふざけた野郎は!?」

 ライフルのスコープを赤外線モードにして覗き込み、周囲を見渡す。

 だが熱感知センサーによって白く映り込む人影は下層階にいる楓達のものだけ。それ以外は発見できなかった。

 メアリーが更なる苛立ちを覚えているところでジョンからのチャットが来る。

『犯人捜しは後回しだ。ミッション優先、それが我々の今やるべきことだ』

 相変わらずの相棒の態度にメアリーは大きくため息を吐いた。

『了解。ちゃっちゃと済ませるわ』

 ゴソゴソとバックを漁り、メタルケースを取り出す。ケースを開けると中には太い弾丸が入っていた。すると、メアリーがケースを開けるタイミングを見計らったようにジョンからチャットが来た。長々とした長文だ。

『ケースに入っている弾丸はボス特性の細胞強化剤針だ。発射と同時に弾頭に仕込んである針が飛び出す。細胞が鉄のような強度に上がるらしいが、代償に脳の機能が低下し理性を失う毒薬だ。あのゾウの体内には原子炉臓器が埋め込まれている。普段は潜在的な脳の判断でロックされているが、判断力低下により原子炉が解禁される。放射能は出ないが熱線は吐くだろうな。弾丸の数はその一発だけだ、必ず命中させろよ』

「……さらっとチャットでとんでもないことを書くな、こいつ」

 そっと丁寧にたった一発の弾丸をライフルへと装填する。

 ライフルを構え、人差し指をトリガーに置く。自動照準システムにより楓に投げ飛ばされ倒れ込んだオコルゾウへと照準が合わさる。

 トリガーが引かれパンッ!! と銃声が響く。

 放たれてコンマ数秒、弾頭から毒薬入りの針が飛び出す。障害となる物は何も無く、針はそのまま真っ直ぐにオコルゾウへ。

 プスッ、と毒薬入りの針がオコルゾウの皮膚へと刺さった。

 そして、

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