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第一話「魔法少女認定試験・前編」


 いつもと変わらない時間に起きた私は、いつもと同じように体に引っ付いたそれを叩き起こす。

「おーい。朝だよー。起きてー」

 遠慮気味に叩いて起こすが、中々起きないので、今度は遠慮なく叩く。

「おーい。早く起きてー。今日私遅刻できないんだから」

 それでも起きない妹に、私はぼそりと呟く。

「早く起きないとその胸揉んじゃうぞー」

「是非とも揉んでくださいまし!」

 妹は目を輝かせて起き上がる。

 ……あんたずっと起きてただろ。

「さぁさぁさぁ、早く揉んで下さいお姉様! 自慢ではないですけれど、私のおっぱいは柔らかくて揉み応え抜群ですよ!」

 そう言って上半身裸になる妹。

「うわー! 何してるのよ! さっさと服着なさいよ!」

 私は両手を顔の前で交差させ、見ないようにする。

 今日は大事な日だから、こんなところで精神攻撃受けてる場合じゃないのに。

「私達姉妹じゃないですか。何を恥ずかしがってるのですかお姉様」

「そりゃ恥ずかしいでしょ! 他人のものなんか普通は見ないし!」

「他人なんて言わないでくださいよお姉様」

 甘えたような声で擦り寄ってくる妹。

「誰か助けてー!」

 私はご近所迷惑なのは百も承知で叫ぶ。じゃないと何か大切なものを失いそう。

「あんたら朝から何やってるのよ」

 そこで救いの手が伸びる。

 部屋の扉が開かれていて、廊下にはお姉ちゃんが立っていた。相変わらず寝癖酷い。

「お姉ちゃん! 助けて襲われる!」

「襲っていません。同意の上です」

 妹の目が怖い。そんな目をした奴誰が信じるか馬鹿!

「そう、ならいいんだけど」

「納得しないでよ! 明らかに襲われてるでしょ! 私の貞操危機一髪だよ!?」

「朝ごはんが出来るまでには終わらせないさいよ」

 お姉ちゃんは寝癖が酷い頭をかきながら行ってしまう。

「さて、燐姉のお許しも出たことですし、二人でたっぷり楽しみましょうね。お・ね・え・さ・ま」

「いーやーだー!」

 朝から戦闘不能に陥りつつある私。

 ああ、今日は大事な試験の日なのに。








 私はぐったりとしながら食卓の席について、朝食を食べている。

 隣には上機嫌な妹。その向かいにはお姉ちゃんが座っていた。まだ寝癖酷い。

「それで、メンテナンスは無事終わったのかい?」

 目玉焼きを口に放りながらお姉ちゃんは妹に喋りかける。目玉焼き何個作ったのよお姉ちゃん。

「うんもうばっちりです! やっぱりお姉さまには最新の第四世代魔法ではなくて、少し古い第二世代魔法が合ってるようですね」

「でも、第四世代のほうが扱いやすいんじゃないの?」

 私は問いかける。

 するとお姉ちゃんがスクランブルエッグをもそもそと食べながら答えてくれる。さっきからお姉ちゃん卵しか食べてない気がする。

「いや、そうとも限らない。そもそも世代ごとに扱いやすくなっているというのは誤りだ。属性が分かれていて個々人得手不得手があるように、世代にも個々人で得意不得意がある。第三世代と第四世代の魔法は、簡単に魔法公式が導き出せるようにいくつかの段階を簡略化した魔法なんだ。一方、第一世代や第二世代の魔法は、全ての段階を自らの認識で行い、発動させるものだ。一々細かく考えるあんたには、第二世代の魔法が一番合うんだよ」

「だったら第一世代魔法でも良かったんじゃないの?」

「古すぎて逆に扱いづらいのですよお姉様」

「で、第三世代だと簡略化しすぎてあんたに合わないから、間をとって第二世代魔法ってことさ」

「へぇ。お姉ちゃんも真紀も、色々考えてくれてたのね」

「そうですよお姉様。私をただの変態だと思ってたら大間違いですよ」

 あんたはただの変態だ。

「ところで、もうすぐ八時だが、急がなくて大丈夫かい?」

 卵焼きを頬張りながら訊いてくるお姉ちゃん。今日の朝食、卵料理多すぎない?

「えっと、試験開始が九時で、八時から八時五十分まで試験者受付時間だから、八時三十分には会場に着いてたい。で、会場までは……あれ?」

 私はそこで気付く。

 家から会場までどんなに急いでも三十分はかかる。今から衣装なんかの諸々の準備をしていたら完全に遅刻で、試験が受けられない。

「あーーー! まずいまずい遅刻する! もー、なんで早く言ってくれなかったのお姉ちゃん!」

「いやー私も今気付いた。ごめんごめん」

 卵焼きをひたすら頬張りながら言うお姉ちゃん。

「どうしよう衣装とか今から着替えたらもう間に合わないよ!」

「それでは、今日は私が会場まで送って差し上げますよお姉様」

「え?」

「転移魔法……は目立つので、今回は上位移動魔法にしましょう」

 さらりと上位魔法を使うと言った妹。あんた、そんな魔法で会場行って目立たないと思ってるの?

「じゃあ、衣装はこれを使うといい」

 お姉ちゃんは隣の椅子に置いてある箱を叩く。

「それは?」

「私が試験で使った衣装で、我が家に代々伝わる魔法正装だよ」

「そんなもの、私が着ていいの?」

「いづれはあんたにあげようとしてたものさ。タイミングとしては今が丁度いいと思ってね」

 そう言ってお姉ちゃんは箱を私に差し出す。

「早く着替えてきなさい。十分後に家を出るよ」

 私は力強くうなずくと、駆け足で自室へ向かう。

「私も着替え手伝いましょうかお姉様ー」

「部屋覗いたらぶん殴るからね!!」

「お姉さまに殴られるなら、むしろご褒美です!」

 ああもう、さっさと着替えよう。








 会場に着くなり、私達は注目を集める。

 それもそうか。

 最強の魔法少女と天才魔法少女の間に挟まれて注目を集めないほうが難しい。

「ねぇ、いい加減離れてくれないと、私受付に行けない」

 私は吐きそうになりながら言う。

 急いでいたとはいえ、上位一級魔法である高速飛翔魔法を使わなくてもよかったと思う。未だ視界が若干回ってる。

「そうは言っても、一人で歩けないでしょお姉様」

 それはそうだけれど。

「それに私、今日の試験で審査員補佐を請け負っているので、受付は多少遅れても大丈夫ですよ」

 それは不正だ。

「早く受付済ませて、あんたも控え室で最終調整しときなさい。朝メンテナンスしたとはいえ、自分一人で使えるかどうか、最後に確認しておいたほうがいいぞ」

「分かってるよ」

 私は膨れっ面で答える。

 こういうときだけお姉ちゃんぶるんだから……まぁ、実際お姉ちゃんなんだけれど。

「じゃあ、頑張るんだよ」

 お姉ちゃんは先に会場へ向かう。応援席で私の出番を待つのだろう。

「それじゃ、私もそろそろ委員のほうに合流しないといけないので、これで失礼しますね」

 妹は私から離れ、会場脇にある別棟へと向かう。あの棟が認定試験実行委員会本部らしい。

 一人取り残された私は、一度深呼吸をしてから会場の受付へと向かう。

『魔法少女認定試験受験者の皆様。試験受付残り三分となりました。まだ受付を済ませていない方は、お急ぎ受付を済ませてください。繰り返します――』

「優雅に歩いてる場合じゃなかったー! 急がなきゃ!」

 私は受付がある会場入り口へ走り出す。


 魔法少女への一歩を踏み出すために。




前後編分けるつもりではなかったのですが、それだと少し長くなってしまうので、分けさせてもらいました。

もしかしたら次回も後編ではなく中編になってしまうかも知れません。

その時は申し訳ございません。


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