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第二十一話「五人目」



「わっ、わっ、わっ!」

 突然ですが、わたくし現在進行形でユスリカちゃんに即死級の攻撃を受けております。

 さっきまでゆっくりまったりとお茶してたのに、いつの間にキルゾーンになったんだよこの部屋は。あ、私の軽率な発言のせいか。自業自得ですた。

「……動かないでくださいよ。当てにくいでしょう」

「当たると死ぬでしょその攻撃!」

 超高密度の鉄の塊が高速で自分に向かって飛んでくるんだもん、誰だって避けますわ。

「……大丈夫、痛いのは最初だけだから」

「最初で最後の痛いになっちゃうでしょうが!」

「……苦痛の中で死ぬよりかはいいでしょ?」

「いやいやいや、私が死ぬ前提で話さないでくださいね。私まだ死にたくないですし、死ぬつもりもないんで」

「……そうだね。私も本気で殺す気はないよ。ただちょっと死んでもらうだけで」

「いやちょっと死ぬって意味が私には分からないのですが、この街の地下には実は冥界があって、身体が無事で魂が地上に戻ってきさえすれば蘇ることが可能とか言うんですか。それどこの神代ですか?」

「……ははっ、そんなわけないじゃない。別にあなたの身体が粉々になっても、私たちに必要なものが無事ならそれでいいんですよ」

 まるで会話になってない気がする。殺すつもりはないけれど、死んでもらいたいって、なんか矛盾してませんこと? それとも高等で高尚なジョークだったりするのかしらん? 高貴なものの言葉遊びって時々分からんからのぉ。

「……で、死ぬ覚悟は出来た?」

「その問いにイエスって答える人はいないと思うよ」

 もう絶対絶命、これ以上あがいても無駄って状況でさえきっぱりと死ぬ覚悟は出来ないと思いますし。というかだから死にたくないんだってば。

「……不思議だと思わないの?」

「何を?」

「どうしてあーちゃんだけが攫われたのか。どうして他の誰かではなくあーちゃんなのか」

「まぁ私可愛いし、可愛くてみんな欲しいって思うのも仕方ないんじゃない?」

「…………頭が不思議の国へ行ってたか」

「いやーごめんね私が可愛すぎたせいでこんなことになっちゃって」

「……やばい、今めっちゃ殺意が溢れてきてる」

 さっきまでは本気の殺意では無かったという事か。さすが我らがアイドルユスリカちゃん。

「……さっさと殺して肉塊にしておこう」

「ユスリカちゃん、黙ってれば可愛いんだからそういう物騒なこと言わないの」

「……黙ってればは余計」

 こいつ自分のこと普段から可愛いとか思ってるのか、痛いな。

「で、この無意味な争いはいつまでやってればいいの?」

 私から喧嘩ふっかけておいてなんですが、そろそろ疲れたので再びのティータイムに突入したいです。

「……そうね。やるだけ無駄っていうか、私もなんだかんだノリで殺そうとしてたし、そろそろやめようか」

「ノリで人を殺そうとしている辺りに、非常に闇を感じますね」

「……闇がない人なんていないのよ」

 なんかかっこいい。そして可愛い。つまりはカッコ可愛いというやつですか。くそ、その役は私がいただこうと思ってたのに!

「私のど乾いた。お茶淹れて!」

「……自分のこと殺そうとしてたやつにお茶を淹れさすか。さすが頭が不思議の国状態だ」

「え、だって私紅茶とか淹れたことないし、というかどこに紅茶葉があるのか分からないし」

「……まぁいいわ。そこに座って待ってて」

「はーい」

 ユスリカちゃんのその言葉に返事をしてから、私は本当にいつの間に現れたか分からない木製のイスに腰掛け、またまたいつの間にかご登場していた木製の丸テーブルに突っ伏した。

 本当に、今の戦闘って意味があったのかな?

 多分、私の方には意味がなくても、ユスリカちゃんの方にはあったのだろう。

 例えば、外からの音をかき消すため、とか。

 まぁ、そんなわけないか。



 約十分ぶりに部屋に訪れた平穏に私は心地よさを覚えながらも、どういうわけか身体の芯の方から警報のようなものが鳴り響いているような感覚にも陥っていた。

 何かやばい。どうしてだか分からないけれど、これ以上ここにいてはいけない。そういった第六感にも似た何かが私に呼びかけてくるのだ。

 ここは危険だと。

「ねぇユスリカちゃん、私に何か隠してない?」

「……え? 今さら?」

「あ、やっぱり何か隠してるんだ。言っちゃいなさいな、ほれほれ」

「……うーん、もうなんか言っても問題ないような気がしてきた」

「そうそう、大体この状況で何を言われても何をされても逃げるなんて出来ないんだから、隠すこと自体が意味ないんだよ」

 というか、もうさっきからずっと何か変だなとは感じていたし、なんだったら昨日からずっと感じてはいた。この街の人は親切や丁寧っていうよりも、むしろ哀れんでいるような表情だった。

 まるで何も知らずに生贄にされる子を見るような、そんな表情。

「……あーちゃん、あなたはこの世の全てを選ぶ権利を持つ一人として選ばれたの」

 全てを選ぶ権利? 選ばれた? 何中二病みたいなこと言っているのこの子。怖いわ。

「……これで五人目までの”選択者”が出揃ったから、あと四人をどちら側が取るかで、世界の行く先が決定するの」

 ほうほう、私のような子があと八人もいて、その子たちをユスリカちゃんたちと他の勢力が取り合っているって言ったところか。

 しかし、私にそんな力がねぇ。ある意味では変態に選ばれてはいるけれど、自分で選択したことはあまりないような気がする。

 どうしてか何かを強く願ってはいけないような気がして、ずっと自分を抑制してきたから。たぶんそれは、こうした能力が備わっていて、無意識にそれを制御しようとした結果だと思う。

 そしてこの力があるせいで、私は満足に魔法が使えないと見た! まぁ多分私の魔法適性が低すぎるだけだと思うけれど。

 どうしてかなぁ、血筋的には結構いいところまで行けると思うんだけれどなぁ。

「それで、私の他の子達って今どこにいるの?」

 私が五人目ならば、残りの四人はまだ誰だか判別していないのかもしれない。しかし私以外の四人は既に私のようにどちらかの陣営に保護され、厚遇されているに違いない! 私も自堕落で自由自適な生活送りたい!

「……死んだよ」

「は?」

「……だから、死んだよ。みんな例外なく”選択者”としての能力を引きはがされて、そのまま絶命した」

 …………ということは、私もそうなるって事なんですかね。

「……あ、安心してね。私たちの陣営では、そんな事しないから」

「本当に?」

「……うん、ちょっと植物状態になってもらうだけだから。死にはしないよ、生きてるとも言えないかもだけれど」

 どちらにしろ、このままだと私の死亡は免れないらしいです。

 どうにかしなければ。



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