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第十九話「守護者」



 幼女さんが現れたかと思ったら幼女呼ばわりで泣き出してしまったので、仕方なく私たちは幼女さんが持っていた扉の鍵(どうしてこの人が持っているのか疑問)を使って地下のお部屋へと入った。

 こんなところにあるんだからもう普通の家じゃないよね、絶対ここ秘密の基地とかそんな感じの場所だよねって思っていた私は、扉をくぐるなりファンシーな装飾が施された部屋を見てもうなにがなんだか分からなくなってきていた。私何を信じたらいいのでしょう。

「……私の部屋、こっち」

 ユスリカに促され私はファンシー部屋の左側にある板チョコみたいな扉に入る。

 どうせこの部屋もファンシーなんだろって思ってたら全面コンクリートむき出しの冷たいお部屋が私を歓迎してくれました。もうなんなのここ。

「……まぁ、ゆっくりしてくれたまえ」

「ゆっくりしてくれたまえって、ゆっくりできる椅子とかソファとか何もないんですが」

 全面コンクリートの名は伊達ではないのか、家具家電見当たらないんですよね。私の見間違いかな?

「……これを、こうして」

 するとユスリカはなにやら地面をペタペタと触り、何かボタンのようなものを押した。次の瞬間何もなかった地面から柔らかそうなソファと小さな丸テーブルが出現する。

「……普段は邪魔だからこうして収納しているのよ」

 さいですか。

「……ささ、座りなさい」

「はい、ありがとうございます」

 私は床から出てきたソファに座ると、一気に疲れが襲ってきたかのように身体が重くなるのを感じた。いやはや、まだお昼だっていうのにいろんなことがありすぎて疲れましたわ。

 私がくつろいでいると、ユスリカは買ってきたものをいったん床やテーブルに置いて私が座るソファとは反対にあるソファに腰かけ、一息ついた。

「あれ? ユーリアは?」

「……自分の部屋でしょ」

 そうですか。まぁ言われてみれば扉っぽいものが三つか四つあったし、それぞれ部屋があるのだろう。

「あ、あとあの幼女は」

「……幼女と言ってやるな。また泣くぞ」

「えー、でも絶対幼女だって。だってぺったんこだったよ? ちっちゃかったよ? 可愛かったよ?」

「……最後のはいるのか?」

 いるでしょ。幼女は可愛いものって決まりがあるんだから。

「……あれでも二十歳過ぎているんだけれどね」

「うっそでしょ!? 嘘だと言ってよ! 嘘って言わないと殴るよ!?」

「……本当だからそれは無理だな。あと殴らないでお願い」

 今にも掴みかかっていきそうだった私をユスリカはなだめる。

 そうだな落ち着こう。そうだよそうだよ、本物の幼女にはタッチした瞬間法の裁きが下されるが、合法ロリはその限りではない! つまり触り放題ってことだ!

 それよりもまずは、目の前のロリだな。

「私が可愛いロリッ娘を殴るわけないじゃない。それよりも、今二人きりだね」

「……その気持ち悪い笑顔やめろ。なんだか嫌な気分になる」

「いやだなぁ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけもふもふするだけだよぉ。大丈夫、優しくするから」

「……やめろ気持ち悪い。こっちへ来るな、寄るなって!」

 嫌がられるのもちょっといいかもしれない。あーだめだ。私ちょっと妹に似てきたかもしれない。変な方向に進化してしまっている。血は争えないね!

「まぁそんなことはいいとしても。私、なんでここに来たんだっけ?」

「…………人のしっぽを触りながら質問しないでいただきたい」

 いやぁ、このもっふもふ実に気持ちがよいですなぁ。ユスリカもこの前はやたら嫌がっていたのに、今となってはもう抵抗するのも無駄とばかりにおとなしい。そうそう、最初からそうしていれば良かったんだよユスリカちゃん。

「……というか、本当に何しに来たの?」

「いやぁ、本当に何しに来たんでしょうか」

 まじで分からない。ユニルに付いていくこともできたけれど、それはそれでまた歩くし見世物になるしで疲れるから、ちょっと休めそうでかつユスリカたその住んでいる場所に興味があり、またユスリカのしっぽをもふもふできるという可能性も考慮してこっちに来ただけで、特に来たかったわけではない。

「……じゃあ、ちょっと面白いものをみせてあげよう」

 しっぽをもふもふする私を振り払い、ユスリカは立ち上がる。

「……付いてきな変態」

 変態ではあるけれど、本業は魔法少女だし、ぜひとも魔法少女アリスたんって呼んでほしいです。

 って言っても、ここに来てから一度も魔法使ってないけれどね。



 ユスリカの部屋から出て、ファンシーな部屋を素通りし、今度は一番奥の最中みたいな丸っこい扉の先へと進む。

 今度は誰の部屋だろうかと想像を膨らませていた私は、ほんのちょっとだけ別の可能性も考えていた。

 そう、こここそがこの正体不明、目的不明の人たちの秘密基地なのではないかと。

 そして私の予想は半分が的中し、今度こそは驚くことなくその光景を見ることができた。

「……ここが私たちの中央作戦司令室だよ。その向こうにあるのが参謀本部だね」

「いったい何と戦っているんですかね……」

 いきなり連れてこられて作戦指令室とか言われても、私なんて言ったらいいんですかって感じなのですが。

「……なにって、そりゃ”守護者”とよ」

「守護者?」

 しゅごキャラじゃなくて?

「……そう”守護者”。鳥籠を守り、選択者候補を守る者たちの総称」

「え、えーっと、もう何が何だか。わからない単語が多すぎてちょっとついていけないです」

 とりあえず落ち着くためにユスリカたそのしっぽもふもふしていいですか? だめですかそうですか。

「……今頃”守護者”は躍起になってあなたを捜しているわよ」

「どうして私?」

 まぁ家族は捜すかもしれないけれど、それは家族だからであって、その”守護者”とか呼ばれる人たちに捜される理由が皆無。

「……それは、まぁいいです。言うと面倒なことになるのは目に見えているので」

「えー、秘密にされると知りたくなっちゃいますよぉ」

 教えてくれないともふもふしちゃうぞ! だめですかそうですか。

「……まぁすぐわかるよ。あなたが”何者”なのかなんて」

「はぁ、そうですか」

 なんか昨日も言われた気がするな、その言葉。

 ま、気にするだけ無駄かな。ということでやることのなくなった私は、ユスリカのしっぽをひたすらもふもふするだけの機械になったのだった。



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