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第七話「使用禁止」


 八つの大小の島で構成された、一般世界からは隔絶した魔法使いのための世界、それが魔法列島。

 今私たちは魔法列島で一番大きな島である『決戦島』で、新人研修を行うにあたっての諸々の用意をしている最中である。

「しかし久しぶりに来るとこう、相変わらず変わった島だよね。魔法列島って」

 私がそう言うと変態バニー痴女もといリスティルは苦笑しながら言う。

「外の世界で暮らしていれば、この島の生活は少し窮屈かも知れないですね」

 実際リスティルさんは魔法列島で普段を過ごし、仕事で私たちが暮らす外の世界にくるようで、その度にこの島の暮らしが不便に感じるようだ。まぁこの列島自体が魔法使い、特に現役の魔法少女にはとても住み辛くなっている。外との協定の結果だろうが、一魔法少女として良い気分ではない。

 暫く私たちはその奇々怪々な町並みを眺めていた。見慣れたビル群の間を縫うように箒方の飛行物体や色とりどりの光が交差する。鳥のような飛行機のようなよくわからない物体が頭の上を過ぎ、それ乗り物なの? って疑いたくなるような奇形の乗り物が目の前を横切ったり、お前二足歩行するなよ気持ち悪いって奴がわけわからない言葉で何か話してたり。いやほんとなんでもアリですねこの島は。

「それで、この島のどこで私たちは研修を行うのでしょうか?」

 せっかちで全ての事情を把握していないと気がすまないみゃーこちゃんはいらいらしたご様子でリスティルに訊く。いらいらは美容の大敵だぞ。みゃーこちゃん可愛いんだからそんな顔しちゃだめだよ。って心底どうでも良いことを考える。

「私たちが今いるこの決戦島から約四キロ離れた小島、通称『幽閉島』が今回の研修地です。ですが、『幽閉島』は魔法列島の中でもかなり特殊な造りになっているので、ひとまず準備を万端にしたいと思います。研修期間は四日間。他の新人に比べればかなり短い期間の分、それなりに危険度は上がります。ですから、生きるためではなく、死なないための装備を整える必要があります。あなたたちはもちろん、監視兼指導役の私もです。今回ばかりはふざけていたら命を落としますから、私も真面目になりますので、皆様もそのおつもりで」

 確かにこの島にきてからほとんど変態行動をしていない。もしかしたら外で見せていた変態的行動は、相手を油断させるための手段なのではないだろうか。そう思うとこの女性はかなりすごいのではないか。いやぁただの変態だと思ってた。少しは見直したわ。

「まぁ、私が真面目になったところであなたの貞操の危機は避けられないのですが」

「おいふざけんなよ。命の保障しないぞほんと」

 どうして見直した矢先に残念なこと言うかな。変態なところ直せばきっと素敵な男性も寄ってくるのに。

「しかしあーちゃんは私の奴隷なのよねぇ」

「それは初耳だな」

 すごいことを堂々と口走ったな。さっきまで寝惚けて「マミーおしっこ」なんて言ってた子と同一人物とは思えないわ。

「けれどふざけていたら痛い目にあうのは事実なので、十二分に準備をととのえてくださいね」

「とは言っても、私たちは既に結構な数の魔法を覚えているので、無人島やら猛獣が支配する島に放置されたところでそうそう困ることはないと思うのですが」

 みゃーこちゃんの発言は的確に事実をあらわしている。が、こと私に関して言えば未だ三つしか覚えていないので、サバイバルキットやら何やらを持っても不安なレベルである。

 それに、幽閉島ときた。この新人研修はもう研修ではなく、一種の任務と言い換えても問題ないだろう。今でこそ本来の幽閉という目的では使われなくなった島だが、あそこには危険な獣が生息しているといわれている。一級の魔法少女が中隊で挑んでやっと斃せるクラスの猛獣がうじゃうじゃいるのだ。そのことを恐らくみゃーこちゃんは知らない。私も少し前姉に聞かされたばかりだし。

「……まぁ魔法が使えるからと言ってサバイバルが楽になるとは、私は思わないけれどね。私から言えることは、後悔はしないでねってことだけね」

 リスティルはいつもの変態的な笑みではなく、苦笑を浮かべつつ私たちを見ていた。その笑みは私たちを気にかけているようではあったが、一体どんな意味があるのか今の私には判断ができなかった。

「そうそう。この新人研修、六人を三組に分けて最も島に適応した組に最高クラスの準三級を与えます。その一組があなたたちです。他の組は、言塚ことつか琴葉ことは友仲ともなか智菜ともなペア。一里丘ひとりおか陶器とうき銅名どうな美希みきペアですので、島で遭遇したら早期排除が好ましいと思います」

「すごい物騒なこと言わなかったですかねこの人……」

「でもライバルを蹴落とすのはきっと気持ちいいわよね」

「こっちも物騒だったわ」

 私の周りには変態と危険思想の人しかいないのか。やばいな私その気になれば多分世界征服とかできそうじゃん。いややらないしできないと思うけれど。

「私的に危険なのは一里丘と銅名のペアだな。接近戦闘では名門の一里丘家の三女と、火炎系統では他の追随を許さない銅名家の長女が連携を覚えたらと思うと、流石の私も冷や汗ものだよ」

 変態バニー痴女が危険視するそのペアは、確かに他の新人にとっては脅威だろう。しかしこちらにはあの森の読者と言われたみゃーこちゃんがいるのだ。樹木が存在するエリアでのみゃーこちゃんの勝率はなんと九割である。ちなみに十割ではないのは、昔我が妹と本気でやりあったときに惨敗してしまったからだ。ついでに言うと姉にも一敗している。やはり一級魔法少女との戦闘ではみゃーこちゃんの森林支配は効かないらしい。やはり私の姉妹なだけはある。きっと私も将来有望。主に胸部とか身長とか。

「さて、そろそろ中心街です。そこからは各自自由行動ですので、午後一時に円形広場で集合としましょう」

「はーい」

「さて奴隷、どこから行こうかしら」

「ナチュラルに奴隷言うのやめませんかね」

 なんだかこんな雰囲気で研修大丈夫だろうかなんて、考えても仕方ないことをぼんやり考えてしまう。ほんと無駄なこと考える癖直さないとなぁ。ほら私きゃぴきゃぴの天然系ぽわふる女子目指してるし、天然系ぽわふる女子はめんどうなこと考えないし、そもそも全ての事柄を他人任せが天然系ぽわふる女子の特徴だし。やっばい私すごく無駄なこと考えてなかった? まぁどうでもいいか。

「あ、あとこれは直前まで伏せておけと言われましたけれど、私が話したくなったから言っちゃいますね」

 なんだか陽気な声音とは裏腹に重大なことを言いそうな雰囲気をかもし出すリスティル。またそうやって思わせぶりなことを言っておいてどうせ「下着は全部白色純情パンツです!」とか「Tバック以外は禁止です!」とか変態的なこと言うんだろうなぁ。そんなことを思いつく私も意外と変態なのかもしれない。


「幽閉島での新人研修では、一切の魔法使用を禁止されます」


「……」

「……は?」

 あまりの驚きで一言も発せなかった私は、こんなときにでも上から目線の単語を搾り出すみゃーこちゃんが素直にすごいと思ってしまった。

 やっぱり物理が最強ってことをみんな理解したのかな? なわけないか。

 ほんとどうなるんでしょうかね。



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