第七話 引き笑い
手を組まないかと提案してきたのは、ソルトライク商工総会の事務員であるノックス・ラモックスという男である。
他の4名も同様に商工総会の事務員であり、ダヴィラスの用な人間が来るのを待っていたとのこと。
(で………俺みたいな人間って…いうのは、どういう……人間のことを……指すんだ?)
事務所の周りをうろつく不審者ということか。だとしたら、彼らは非常に奇特な趣味を持った一団だという認識を持たざるを得ない。
「あなたはソルトライク商工総会の弱みを握りに来た………そういうことなのでしょう?」
「ん?」
相手の発言の意図が掴めないダヴィラス。ソルトライク商工総会の弱みというのはいったいどういうことなのか。
「あれ? 違ったのですか?」
きょとんとした顔をするノックス。アテが大きく外れたと言った様子だ。勘違いを正してやろうかとダヴィラスは思ったのであるが、何故かその言葉が口から出ない。
「………いや、そんなところだ」
代わりに出たのは、相手の話をさらに聞き出すための出任せだった。自分はそれほど嘘が上手く無く、この様な事は極力しない主義なのだが、今回はどうしてだか話を続けたくなった。
ソルトライク商工総会の弱みとやらは、確か雇用主が欲しがってそうな情報だったか。
「ああ、それを聞いて安心しました……いや、安心と表現するのはおかしいですか?」
何故かいやらしく笑うノックス。俺達は悪だぜという自己主張をしているらしい。
「………恐らくあなたは、不安定な組織だが図体ばかりが重いこの商工総会に、何か得るものがあるかもと、どこかの組織から派遣されたのでしょう?」
「まあな…………」
その筋の者だと思われているらしい。どこかの組織から派遣されたというのは事実であるため、別に嘘も吐かずに返答できる。
「我々もね、似た様な思いなのです」
「あんた達は………この商工総会の事務員だろう。俺とは大分………立場が違う」
まあ、自分のミース物流取扱社の事務員に近い仕事を最近はしていたため、この立場が違うという言葉の方が嘘だ。
「我々はね、見切りを付けているのですよ。ソルトライク商工会が潰れた後に残っているこの状況にね。できれば、商工総会の事務員という立場も返上したくある」
「潰れそうな組織から…………末端が逃げ出すというのは………良く聞く話だ。いちいち俺に話す必要が………ない」
仕事を辞めたければ辞めれば良いのだ。しがらみやらなんやらがあるのはわかるが、辞表を出せば一発で辞められる。裏稼業などならもっとややこしくなるものの。
「冬の前には鳥が南へ。ということわざがありましたっけ? 酷い状況になると予想できる者は、さっさとその状況から逃げ出す。ソルトライク商工総会と我々の関係はまさにそうです」
「だから………そうしたいなら……すれば良いだろ………」
何を回りくどいことを言っているのだこいつらは。自分達は不誠実であると喧伝している様な物だ。いい加減、ダヴィラスも不快になってきたため、顔をしかめる。
「おや、気が付いてくれた様ですね、我々の目論見に」
いや、ぜんぜん気が付いていないのだが、どうにも思わせぶりな表情をしてしまったらしい。
「南へと逃げ出す鳥の中には、今まで居た場所の餌をまず食い散らかしてから逃げる鳥もいます。次の温かい場所へ向かうにしても、十分な栄養が必要ですからね?」
「ああ………そうか………要は自分が組織から抜ける前に、まとまった金を………不正に得る……つもりなんだな?」
だからこその弱みというわけか。さて、この状況を客観視するのであれば、目の前の男達はソルトライク商工総会の、何らかの内部情報を手にしており、それを誰かに売り渡したがっている。
そうしてまとまった金銭を得てから、意気揚々と組織を出るつもりなのだろう。
(で………多分、俺が………そういうのに金を出す組織の一員だと思われている………わけか)
事務所の周囲を徘徊する怪しげな男に近づく理由など、そんなものかもしれない。怪しい人物に近づくのは、怪しい目論見を持った相手だけだ。
「まるで今気が付いたみたいな事をおっしゃいますが、あなただって、我々の様な存在を待ち望んでいたのでしょう?」
「さあ………どうだろうな………」
自分でも良く分からない。雇用主であるならば、その通りだと頷いたかもしれないが、自分にはそこまでする気概が無いのだ。
「ひ、ひい! もしかして俺達を殺す気かよ!」
横で話を聞いていた別の男が叫ぶ。ノックスとやらは、その男を庇う様に間へ入るものの、勢いというものが無く、若干腰が引けている。
「お、脅しは無しにしていただきたい! まだ我々が情報を口にしていない以上、命を奪えばそれが消えてしまいますよ!」
何故だか、相手に威圧感を与えてしまっていたらしい。少し雇用主、というか、さきほどのルッドのことを思い出してしまい、溜め息を我慢していただけなのだが。
「で………どうすればその情報を……渡してくれるんだ?」
「あなたの様な方にも、上の立場の人間がいるのでしょう? そういう人物と交渉する権利を我々にくれませんか? 我々は価値のある情報を握っている。それだけならば保障しますので」
残念ながら、ダヴィラスには相手の発言の真贋を判断できる力は無い。だから保障しますなどと言われても、自分で判断の仕様が無かった。
(上の立場というと………ルッドかミース社長か。ルッドなら………こいつらから……上手いこと情報を……引き出せるか?)
手土産には丁度良いのではと思えた。ただ、これからすぐに連れて行くという気分では無い。
(もう少し………あいつがどういう選択をするのか………見てみたい気がする)
情報を持ったこの男達を連れて行くのではなく、こういう男達が会いたがっているぞと尋ね、ルッドがどう返してくるか。それを見てみたい気分になったダヴィラス。
「わかった………とりあえず、上司にお前らの事は………伝えておく」
「ほ、本当ですか!」
何故か命が助かったと言わんばかりの表情をするノックス。目の端に涙があるのはどういうことだ。
「ああ………ただし………」
「た、ただし?」
「俺の上司は………何をするか分からない人間だ………どうなっても、覚悟はしておけ………よ」
まるっきりの本音で話したつもりなのであるが、ノックスは今にも泣きそうな顔をダヴィラスに向けてくるのだった。
得た情報をミース物流取扱社へと持ち帰るダヴィラス。丁度、ルッドも帰って来ていた頃合いであったため、さっそく報告することにした。
どうにも惚けた様子のルッドを見て、少し不安に思ったダヴィラスだったが、とりあえず、ソルトライク商工総会の周囲を徘徊する内に起こった出来事について、判断を求めてみた。
「へえ。そっちも面白くなってますね?」
椅子に座り、事務机に頬杖を突くルッドから、そんな言葉が返ってきた。返答はそれだけで終わり、その後、反応が続くことはない。
「それだけ………か?」
もっとこう、激しい反応があるか、黙ってしまうかのどちらかだと思っていた。なんというか世間話でもしたかの様な反応であり、再び中空を見て惚けはじめるルッド。
「それだけって………だから、面白い情報だなあと。あれ、間違ってます?」
どうやら戸惑うダヴィラスの様子を察したらしく、ルッドが自分の返答について説明しているものの、やはり疑問符が浮かぶばかりだ。
「こう………ソルトライク商工総会の弱みを………探していたんじゃあ無かったのか?」
「ええ。あれば助かります。ただ………ちょっと事情が変わって来たというか、いえ、ダヴィラスさんの情報は、新しい状況を作りだすための良い材料にですね………あー、どうしようかな」
どうやらルッドが惚けている様に見えたのは、頭の中を働かせていたかららしい。反応が鈍いのもそのせいか。
「………なあ、いったい………何を考えている? 正直………今のあんたの考え方を知りたくて、こういう情報を持って来たんだ………」
でなければ、あの様な集団相手と話す前に逃げ出している。向こうもこちらに怯えていたおかげで、逃げようと思えば何時でも逃げられる状況だった。
それをしなかったのは、ダヴィラスがルッドのやり方とやらを、より知りたかったからである。曖昧な答えでは満足できないのだ。
「僕の考え方ですか? 人間、そんなに考え方なんて変わりませんから、ダヴィラスさんが思っている通りの考え方だと思いますよ、僕のは」
「じゃあ………やはり、利益のためには、障害を………躊躇なく潰すタイプということか?」
そうであって欲しく無いと言った手前、その答えには失望に似た感情が生まれてしまう。勿論、だからと言って雇用主を変えたいなどと思ってはいないものの。
「いやだな。そんな風に思われてたんですか? 良く考えてくださいよ。僕がダヴィラスさんを初めて雇った時、僕はどんな考えの元で動きました?」
言われて思い出す。今のミース物流取扱社が、チンピラ集団に占拠されていた頃。ルッドはこちらの容貌を利用する形で、争わずにその集団をこの家から追い出すことに成功していた。
そのやり口から思い浮かぶ、彼の考え方とは………。
「………ハッタリだけで現状を変えるということか?」
「ちょっと違います。ねじくれた状況をハッタリだけで正す。僕ができるのはそれくらいってことですかね」
ねじくれた状況とは、国が大きな組織を潰し、結果、組織が二つに分かれた状態でのことであるらしい。
すっきりした状況というのを考えると、元通りのままになるか、綺麗さっぱり組織が無くなるかの二つであるとのこと。
「ねじれた現状と言うのは、そのままに放置すれば、すっきりした状態に自然となっていきます。放って置いても、二つの組織が一つになるか、それとも二つとも無くなるかのどちらかになるでしょう。その流れを変えることは僕にはできない。けれど、そのタイミングや結果について、ある程度の介入をすることはできる」
少し社会の動きに手を加えるのだという。川の流れを変える能力は無いが、川が最終的にどこに辿り着くかは、幾つもの支流を持つこの国の流れの中において、ある程度の決定権を掴むことができるとルッドは言う。
「できれば、双方にダメージ無く終わらせたい。そうしてできるなら僕らにも利益がある形で………。考えてる事と言えば、それをどうすれば良いかですね」
「…………まあ、確かにらしいか」
ただ相手を混乱させて、利益を無理矢理奪う奴より、よっぽど目の前のルッドらしいとダヴィラスは思う。そんな彼だからこそ、ダヴィラスという人間を有効活用できるのだ。
「らしいけどな、また無茶をやらかすつもり満々じゃあないのか!」
隣で話を聞いていた社長のキャル・ミースが、ついに口を開いた。さっきまでダヴィラス達の話を黙って聞いていたのは、彼女なりに空気を呼んだのだろうか。相も変わらず、可笑しなことをしようとするルッドが心配になったらしい。
「どうだろう………どいつもこいつも罠に嵌める形になるから、下手を打てば恨みは買うかも………」
そのどいつもこいつもの内訳が、国やミース物流取扱社より大きな組織だったりするのだから、相当に上手くやらないと危機的状況にはなるだろう。
「………多分、危険が発生した場合、あんただけじゃあ……終わらないんだろうな」
「そうですねえ………一蓮托生ってわけでも無いですから、着いて来るかどうかはダヴィラスさんが決めてくださいよ。これでも、勝手にいろいろと巻き込んで反省はしてるんです」
キャル・ミースに同じことを尋ねぬのは、彼女がどう返してくるかを既に理解しているからだろう。彼女は、ルッドの方針に文句を言うことがあっても、真っ向から反対することは無いのである。
ならば、ダヴィラスはどうか。
「できれば………ここで事務員の仕事を……ずっとしていたくは……ある。正式に雇って貰うには……もう少し、この会社に余裕ができてから……だったな?」
「期間雇いでなく、正式な社員をさらに増やすのは、まだまだ負担が大きい。だよね、社長」
「ふん! だからもう少し組織を大きくするために努力をしようとかなんとか言うんだろ?」
この二人は、なんというか反発している様で互いに仲が良く見える。出会ってまだ一年も経っていないらしいと言う話を聞いて意外に思ってしまう。
「俺は………この会社が大きくなって欲しいとは思う……な。その方が、将来的に安泰だ………」
「その答え、結構気に入りました! 自分の生活のために、なんだってしてやるって言うのは、何か行動するときに、途轍もないエネルギーを生むもんですから!」
手を組んでもらえるのなら、やって欲しいことがあるとルッドは続ける。
「やる事が大きい以上、僕だけの行動じゃあ上手くやれません。人手がいります。実はレイナラさんにも、既に工作に動いて貰ってるんですよね。ダヴィラスさんは、僕の提案、乗ってくれますか?」
尋ねて来るルッドであるが、こちらの答えなど、既に予測済みと言ったところなのだろう。その事が少々癪に障るものの、ダヴィラスの答えは決まっている。
「そんなに難しいことは………できないぞ?」
だから自分をどう動かすかは、お前が決めてくれ。ダヴィラスにとってルッドへの信頼とは、そういうものであった。
かくしてダヴィラスは再びソルトライク商工総会の周辺までやってくることになる。前回と違うのは、日を改めている点と、場所が道のど真ん中で無く、商工総会事務所近くにある食堂であるという点だ。
食堂はそれなりの大きさで、一つ一つの客席がしっかりと区切られているのが特徴だった。つまり、人が内緒話をするのに最適な場所だと言える。
「ま、まさか、こんなにも早く返答をいただけるなどと、思ってもみませんでしたよ」
対面の席にはノックス・ラモックス一人が座っていた。他の仲間は、今回はいないらしい。ダヴィラスの相手をするという役目を押し付けられてしまったのだろうか。そうであれば中々に可哀そうな立場であろう。まあ、所詮は自分の組織を裏切ろうとしている相手なのだから、同情するほどではないか。
「話し合いは………さっさと決着をつけろ……というのが、俺の上司の……意向でな。会うかどうかの話だから、結論は………すぐにでも出るわけだ」
「な、なるほど。決定は素早く行った方が利益は大きいというのは確かな話です。あなたの様な方を雇っている人間は、そりゃあさぞかし意思決定が早いのでしょう!」
なにやらダヴィラスとその上司に向けて世辞を口にするノックス。必死になって媚びでも売ろうとしているのか。ならば、この後の展開は彼にとって酷だろう。
「ああ………早く結論を口にしていたよ………。自分達の餌場を荒らす人間は………さっさと排除しろ………だとさ」
「………え?」
ノックスの愛想笑いが、単なる引き攣りに変わるのをダヴィラスは見た。その口角が徐々に下がり、酷く怯えた表情を浮かべる間も、じっとダヴィラスはノックスを見ている。
「理解して………いなかったんだろうな。組織から情報を引き出して………それを誰かに売ろうとする。それは、俺達の様な人間の仕事だ………。お前達素人の猟場じゃあ………ない。持っている情報がなんであるかなんて知ったことか…………。素人に余計な真似をされる方が、よっぽど不利益だ………だから潰せ……だとさ」
「ひっ……ひぃっ!」
ノックスの喉の奥から漏れ出る吐息が、高音となって食堂の広範囲に響く。何故人は怯えると、この様な声を出すのだろうかと疑問に思う時があったダヴィラスだが、もしかしたら仲間に危険を知らせるための本能なのかもしれないと、ダヴィラスはこの瞬間から思う様になった。
まあ、目の前の男に、都合良く助けてくれる仲間がいるかは分からないが。
「考えて………いなかったか? 予見すらできないのなら…………やはりお前達は素人だ。迂闊に……自分達にとって慣れぬ仕事を………するべきじゃあなかった」
できるだけドスを効かせて話す。そう言えば、こういう演技をしたのは初めての経験かもしれない。上手くできているだろうか。
「は、はは。まさか……まさかですよ。こ、この様な場所で?」
周囲にキョロキョロと目線を向けるノックスであるが、それでもこちらから目を離せないのか、すぐにダヴィラスと目線を合わせ直すという行動を繰り返していた。
まさか大衆食堂のど真ん中で自分は襲われないだろう。いや、しかし万が一にでも。そんな感情が渦巻いているに違いない。
勿論、ダヴィラスにそんなことを行う度胸も技量もない。ただし、ここで脅せという命令が出ているため、ただ何もせず黙っているわけにはいかなかった。
行動できなければ口を出すのが商売人というやつらしいので、ダヴィラスもそれを見習う。
「こんな俺にもな………慈悲の心という奴が……一応…ある」
「見逃して……くれると?」
泣きそうなノックスを見て、どうにも居心地の悪さをダヴィラスは感じる。これでも人は良い方であるのだ。さらにここから脅すというのは、中々に酷なことだろう。仕事だから止めないが。
「今………この瞬間だけな? 今、目の前に運ばれてきている………このぬるい酒を飲み終わる……頃には、仕事再開だ」
そう言って、薄い土色をしたカップに注がれた、白色の酒に口を付ける。苦い。
「…………」
無言でその場を立ち上がったノックスは、早歩きで食堂の店員へ近づき、会計を済ませると、そのまま店を去った。ある程度、外聞を保とうとする冷静さはあるらしい。まあ、店を出た瞬間に、走って逃げたであろうことは見るまでも無くわかるが。
「これで………まあ、予定通りか………」
上司でもあるところのルッドの命令通り、ダヴィラスは行動した。ソルトライク商工総会の裏切り者であるノックス達との交渉で、散々に脅せと言う命令であった。きっと相手は逃げ出すからと。
「次に何をするかについても………多分、決まっているし……動いてもいるんだろうな………」
自分には到底理解できぬ行為だ。彼はいったい、その頭を動かして何をするつもりなのか。
「全部終わってから………確かめてみるさ………」
呟いてから、ダヴィラスも席を立った。
準備は出来上がって来ていると言って良い。ミース物流取扱社内の事務机にて、ルッドはメモに書き込んだ予定表に一つ一つチェックを入れてから、一息を吐いた。
「ふう………。やるべきことなんていくらでもあるけど、出来ることが限られているっていうのは、どうにも歯痒い部分があるなあ」
予定表に書かれている多くの項目については、チェックの印がされていなかった。恐らく、事がすべて終わる段階になったとしても、そこに何も印が無い部分があるに違いない。
(なんにせよ、賭けになる部分があるってことだ。どれだけ成功の確率を上げられるかについて、追及するのは大事だけど、それには限界がある)
ただ、ダヴィラスが持って来たネタは、ある程度有効に動くと思われる。少し手間だと思っていた事柄が、ちょっとした動きだけで、実行できたからだ。
(組織を売り渡そうとしていた人間が、売り渡そうとした先に敵対されればどうでるかだ。元の組織に泣き付くことはできない。まさか裏切ろうとしたら情報を渡そうとした相手に狙われることになった。なんて言えないしね)
ならば彼らは次にどう動くだろうか。予想は簡単だ。別の関係のある組織に助けを求めるのだ。
(向かうとしたらノースシー流通管理会だろう。ソルトライク商工総会の人間が、具体的にノースシー流通管理会へ接触する瞬間を、こっちで操れるってことだから………ま、タイミングが分かるのは良いことさ)
予定表にまたチェックを入れて行く。さて今やることが終われば、次にやることを始めよう。時間はどれだけあっても足りないのである。
(すべてを丸く収めようなんて事をするのなら、物事を必死に削って磨き上げないとね)
酷く苦労を繰り返し、それでいて得る物は対価としては低いかもしれない。だが、その仕事がどうにも楽しいと思えるルッドだった。