第三話 含み笑い
ルッドはこれから話をするであろう商管室の人間を見ていた。見た目は自分より若く見える。一目見ただけならば、舐められているのか、何かの冗談かと勘繰るところであるが、ルッドはその感情を押し留める。
「はい、ミース物流取扱社より参りました、商人のルッドと申します。こちらは事務員のダヴィラス」
怒りの感情を留めることができたのは、相手の少年の所作が原因であった。まだ一見した程度であるが、どこか得体の知れない怖さを同時に感じてしまう。なんだろうか、自分は彼のどこにそんな奇妙さを感じているのだろう。
「おや、先に名を名乗られてしまったかな。では次は私が名乗ろう。私の名はレイス・ウルド・ライズ。商管室の室長をしている。よろしく頼むよ」
名乗りを上げた商管室室長のレイス。ルッドはその二つある姓が気に掛かる。確かこの国で二つ姓を持つというのは特別な意味があったはずだ。そう、領主の一族であるという証明の姓と、一族の中でどういう立ち位置にあるかの姓。それが二つの姓を持つ意味だった様な。
(ラージリヴァ国総領主の姓はライズ。ってことは、総領主一族の関係者ってことか。ウルドはなんだったかな? 確か一族の中では、比較的中心の位置だった様な………)
総領主一族と言えども、権力を持つ者と、ただ血縁関係があるだけという者もいる。単に姓を持つだけでその力が凄い者だとは思わない方が良いだろう。
まあ、公的組織の長としての地位を与えられている人間が、権力とまったく無関係のはずは無いだろうが。
「こちらこそ、今日はよろしくお願いします」
レイスの方から手を差し出されていたため、その手をルッドは握り返した。
(あれ?)
目の前の人間に対する違和感が増す。その理由がなんとなく分かり掛けてきたルッドであるが、まだ正確には分からない。
「それでは、さっそく話に移ろうか」
レイスはそういうと、ルッド達の前にあるソファーへ優雅に座る。生来のものと訓練されたものが混じった独特の動きだ。
「では、私どもの商売に関して、怪しい取り引きが行なわれているという通報があった件なんですが………」
相手を知るにはまず話をしなければならない。ルッドのやり方はずっとそういう物であり、今回だって目の前の人間がどの様な人物だろうと、話ができる自信はある。
「ああ、まず通報の件だが、あれはあまり信憑性の無いものだと、こちらも判断している。というか手紙一通だけで、その後に何がしかの文句も無い。ただ若い新人を確認のために向かわせてそれで終わり……のはずだったのだけれど………」
レイスがじっとこちらを見てくる。どうにも整った顔であるので、どきどきしてくる。
「残念ながらそうは行かなくなりましたってことですかね?」
ミース物流取扱社の仕事が急に増えている。帳簿を見れば誰だって分かる事であるし、疑問に思う人間は当然いるだろう。それを期待して、ルッドは監査に来たタックス事務兵に帳簿を見せたのである。ここでこうやって、国の関係者と会うために。
(そう……目の前の人間は、僕が望んだはずの相手なんだ。実際どうなのかを確認するのが今回の目的。きっちり値踏みさせて貰う)
そういう意味では、この怪しげな第一印象はとても良いものだと思う。これから相手をする存在が一筋縄で行かぬ相手である方が、何時かブラフガ党と戦う時になった時に、力になってくれそうだからだ。
「怪しい点を見つければ、そこを調べる必要があるのが私達だ。もしそこに罪があれば裁く権利も私達にはある………と、他の者ならそう答えるだろうさ」
笑いながら話を続けるレイス。単純に自らの仕事内容を語っているはずなのに、どこか冗談を口にしている様な印象を受ける。
「あなたは違うんですか?」
「さて、行われているのが悪逆非道ならば話は別だが、そうでもないのだろう? なら状況に応じた対応をするだけさ。他の者達には文句を言われたりするけれど」
なるほど、レイスはやはりここで働く他の人間からは嫌われているらしい。室長という地位に見合わぬ年齢からして、お飾りとしてその地位に付いていることが容易に分かるものの、恐らくは飾り以上の行動をしているのだろう。
「こっちの状況次第で、対応も変わってくると?」
「そっちだって、その方が話しやすいだろう? ルールや法があるのは素晴らしいことだが、緩くやるのがそれらを長く保つコツさ」
さて、どうしたものやら。まだレイスの性格が掴めないままだ。ここから本題に入っていく前に何かしら相手の方向性を見極めて置きたい。
「………緩くですか。つまり、その恰好もそういう考えを元にそうしていると?」
「ほう………やはり分かるかね?」
笑みを薄くするレイスを見て、やはりそうだったかとルッドは自分の決断に自信を持った。一方で、どうにも同行者のダヴィラスは気付いていない様子。というか、さっきから話しに付いて来てすらいない。
「組織の管理者として立つ上で、女性が男装するというのは良くあることですから。まあ、なんとなくでしか分かりませんでしたから、大したものだと思います」
そうだ。レイスは女性だ。所作や声質、そして握手を交わした時の感触など、そのどれもが男性より女性に近いものであった。つまりは要するにそういうことなのだ。
「………え」
ルッドの言葉に、ルッドにしか分からぬ反応を示すダヴィラス。あれは呆気に取られている顔だ。声はただ吐息を漏らした程度の物であったが。
「こういう組織の場合だと、男社会ってわけでも無いんでしょうが、それでも働く女性って少ないですもんね。大した物だと思いますよね、ダヴィラスさん」
とりあえずダヴィラスに状況を理解させるために、もう一度、レイスが女性であることを強調しておく。
ダヴィラスはちらりと横目で見るだけだったが、この反応はマジかよ。という感情が込められているはずだ。
(マジです)
ルッドはダヴィラスに頷きを返してから、レイスを再び見る。目を合わせると居心地の悪さを感じてしまう相手であるが、それでも負けて逸らせばこちらの不利となる。
「彼は……事務員で良いのかい?」
一方でレイスは一旦ルッドから目を外し、ダヴィラスを見た。やはりあの顔は有用である。すぐに人の目を惹ける。
「ええ。うちで雇っている事務員のダヴィラス・ルーンデさんです。仕事も有能に行なってくれるんですよ?」
事務仕事に関しては確かに有能なので、そう表現しておく。これだけでかなり深読みのできる言葉になるのだから、彼の顔様々だ。
「なるほど、彼の様な者は羨ましい」
「………どういう……意味……だ?」
酷く緊張いているらしいダヴィラスがレイスに尋ねる。彼女の様な人間に、顔を羨ましがられることに慣れていないのだろう。
「そのままさ。この様な恰好や似合わぬ口調で話さずとも、人を従えることができる姿をしている。それがどうにも羨ましい」
「なるほど。組織の管理者としては、多少、威厳のある姿をしていなければならないということですね。だから男装を」
レイスの姿には一応の納得をする。まだ、色々と理由がありそうな気がするものの、詳しく聞かなければ分からないものだろうし、詳しく話をし合う仲では無い。
「ま、そういうことと思ってくれたまえ。で、どうするね? 君らから話を聞くのが私の仕事だ。やっぱり止めて置きますなどとは言わんでくれよ」
ルッドはそのレイスの言葉に頷く。レイスが一応、仕事をする人間であることが分かったからだ。単なるお飾りの怠け者相手にただ話すのは嫌であるが、彼女であればまあ良いだろう。
「では、うちがどうして急な仕事が増えたかですが、その理由自体は単純です。前もって社有の馬車を手に入れていたからですね。国の事情が変わった結果、それを利用できる状態になったわけです」
「問題となるのは、何故君らが都合の良い時期に馬車を手に入れていたかだ。それに、馬車が手に入ったとしても、それを宣伝し、実際に仕事ができる状態にして置かなければならない。つまりは事前に、国の状況が変化することを知っていなければならないわけだ」
レイスの言葉にルッドは頷く。しっかりとこちらの状況を理解してくれているので、話しがとても早い。
「次はその件についてですね。現在の状況、つまり、各地方に関所が置かれている現状を、確かに僕らは予想していました。小さな社が馬車を持てば、その状況においてはかなりの仕事が請け負えるという事も含めて」
「だろうね。そうじゃなければ、君らの事務所に予言者がいることになる。それも優秀な。さて、その予言者は、どうやって今の状況を予知したんだろうねえ」
目がじっとこちらを見ている。値踏みする様な目線。恐らくはルッドも同じか似たような表情をしているはずだ。
「予知とは土台作りです。あちこちにある情報を拾い集め、それを土台に未来を覗く。足場が不安定にならぬ様に、土台が出来る限りの高さになる様に。そうすることで、初めて未来なんていうあやふやな物をうかがい知ることができる」
「土台の質も重要だと思うがね。どこで集めたものなのか……だったり?」
薄い笑みを浮かべたままのレイス。何故だろうか、彼女がこの会話を楽しんでいる様に見える。
(ああ、確かにこういうやり取りは楽しいかもしれない。お互いの距離を計りながら、少しずつ相手の懐を覗き合う。相手と剣の斬り合いする時は、何故か興奮する時があるってレイナラさんが言っていたけれど、それと似たようなことかもしれない)
つまりこの感情に酔い続けるのは危険だということ。一時の感情に惑わされる様に、ただ当初に決めた目的のためだけに動く。それこそが真の勝利への道だとも、レイナラは言っていたのだから。
「何で集めたのかと問われれば足で、どこでと問われれば一つには絞れませんが、代表的な物は勿論、ソルトライク商工会があります。ああ、今は元ソルトライク商工会でしたっけ?」
「トップが崩れると、ああいう組織は途端に脆くなるからねえ。既に幾つかの組織に分裂してるそうだけど、そのどれだけが残るのか………君らはその後釜狙いの組織かい?」
「そんな大胆なことしません。開いた隙間にちょっと腰を下ろさせて貰っているだけでして」
かつて、という程に過去でも無いが、大陸中の流通路を管理していたソルトライク商工会であるが、今は既にその姿は存在しない。
ザナード・ソルトライクという強烈な統率者が居なくなったあの組織は、後継者としてまとめあげる者が存在しなかったらしく、今では地域や集団毎に組織を分化させており、その分化は現在進行形で続いている。
確か有力なものに、ザナード・ソルトライクの息子が作ったソルトライク商工総会と、ソルトライク商工会の元副会長が作ったノースシー流通管理会の二つがあったはずだ。
この二つはソルトライク商工会の会長であったザナード・ソルトライクの意向を、彼無き今も受け継ぐかどうかで揉めているらしく、前者は親ザナード派、後者は脱ザナード派という構成員が元となっているそうだ。
(要するにどっちも、既に社会に帰ってくることはないザナード・ソルトライクという存在に縛られたままってことだよ。組織として両者共に、そう長く無い)
そうやって瓦解していく組織の中で、勢力を伸ばしていく組織という物も存在している。ミース物流取扱社も、現在ではそういう組織の一つであった。
「大きな混乱には、必ずその兆しがあるものです。私どものにとってのそれは、ソルトライク商工会に所属していた貸し馬車屋や、知り合いの商人達からの噂話ですね。国とソルトライク商工会が造船事業に同じ様な支援を行う。そんな噂話の元、現状に至る可能性があるのかどうかを考え、情報をさらに精査し、それに賭けたわけです」
「結果、君らは現在好景気にあるということか。うん、確かに下の人間には話せないねえ。なにせ、ソルトライク商工会の崩壊に、多少なりとも関わってるってことなんだからね?」
「どういう意味でしょうか?」
ルッドはレイスの言葉を訝しく思う。いったい何を狙っているのか。ルッドが今まで話した内容は、噂を聞いて、その噂を元に動いただけという物でしかない。それがどうしてソルトライク商工会の崩壊に関わるというのだろう。
「だってそうだろう? 大きな組織の崩壊というのは、個人の意思や意向に左右されたものではない。作り出された流れというものが組織を崩壊させる」
「失礼ですが、ソルトライク商工会の牙城を崩したのはあなた方ラージリヴァ国の方では?」
ソルトライク商工会の柱であるザナード・ソルトライクを逮捕し、現在も拘留を続けているのはラージリヴァ国である。
つまり直接的原因は彼らにこそあり、ルッド達の様な弱小組織はこの件に一切無関係と言って良かった。
「だから流れだ。確かに国はソルトライク商工会を潰した。酷く直接的な方法でね。だが、それに至る流れを作りだしたのは、ソルトライク商工会とその周囲の流れなのさ。誰かが商工会を疎ましく思い、誰かが商工会をダシに金儲けを企む」
金儲けのところで、レイスのこちらを見る目線が強くなった様な気がした。
「誰かがこう思ったかもしれない。ああ、国にトップが潰されれば、この商工会は簡単に崩壊するなってね」
「つまり、ラージリヴァ国の責任では無く、そういう有象無象が商工会の破滅を望んだのだと?」
それは単なる責任転嫁では無いか。ルッドはレイスの様子を探るも、何を考えているかを伺い知ることができない。相手はそれなりに交渉慣れしているらしい。
「まさかの話だ。トドメを刺したのは国に違い無い。積み木崩しで遊んだことはあるかい? どれだけアンバランスな積み木でも、きっかけが無ければ崩れない。そうしてきっかけを作った奴こそが悪者なのさ」
悪者というところで、自分の胸にレイスが手を当てた。自らは国の構成員であるという自覚が無ければ、その様な咄嗟の動作はできぬだろう。
「だから国民から反発も受けるし、他の地方には関所を置かれる。迂闊な事をしたもんだよ。まったく」
漸く笑みを消して、頭を悩ませていると言った表情を浮かべるレイス。それも単なる愛想に見えるのは、ルッドの気のせいではあるまい。
「じゃあ結局、何が言いたいんですか?」
既にこちらが話すべきこと話し終えている。もっと詳しくとなれば、そこからはまた別の交渉だろう。奥深くまで相手に知られてしまえば、ルッドにとって致命的な状態に成り得てしまう。
「ああ、少し話が逸れたな。要は君らが、ソルトライク商工会が潰れたことに関して、多少なりとも関わりを持っているということを伝えたかったのさ」
「ですからそれが何か?」
「責任は感じないのかい?」
ああなるほど。そういうことを聞きたかったのか。レイスは国が商工会を潰した事に責任があるのなら、それより前にちょこまかと動いていた者達は罪悪感を覚えないのかと問いかけているのだ。
「いいえ、まったく。これっぽっちも感じません」
「ほほう。その心は?」
「手に入れるべくして手に入れた成果ですからね。その成果を前にして、喜ぶことはあっても、悪いことをしただなんて考えるわけないじゃないですか」
ソルトライク商工会を潰したのが、ルッドの様な人間達が作った流れのせいであったとしても、ルッド達とてその流れに翻弄される側なのである。その流れの中で必死に自分の目的を果たそうとしたことに対して、あれやこれやと言われる筋合いはない。
「まったく、大した傲慢だ。だが、商人とはそういう人種だな。とても“らしい”よ。実を言えば、君らみたいな案件を既にこっちは幾つか抱えていてね。先のことを上手く予想できたからって、それを罪に問えるのかという話が出ている。もうこっちはてんてこ舞いさ」
「方法如何を問わず、金儲けをしたってだけで罪になるなら、世の中の3分の2くらいは牢屋の中に入れられますね」
自分以外にも、国の現状を予想していた人間が幾らでもいることがここで分かる。何もルッドだけが特別では無かったのだ。
(まあ、世の中そんなもんさ。自分と同じかそれ以上に冴えている人間なんていくらでもいる)
重要なのはそういう人間を如何に出し抜くかである。今、こうやってレイスを相手にしているのも、他人には無い力を手に入れるためであるし。
「そういうこと。だからまあ、君みたいな人間が直接組織の上役と話したいと言ってきたときも、動ける人間があんまりいなかったのさ。だからそこに私という存在をねじ込むことができた」
「ねじ込む? そんなことしなくても、あなたはここの室長で―――
「おいおい。今さらそういう話をしないでくれよ。総領主一族と言っても、頂点に立てなければただのお飾りだ。商管室の室長だなんだと言っても、閑職とそう変わりないのさ。実権は下の連中にある。だから煙たがられているし、日がな一日仕事机で爪を研いだりしている」
レイスがソファーから腰を浮かして、こちらへ顔を近づけてくる。右腕は間にある机の上に乗せられており、どうにも徐々に力が込められている様に見えた。
「そんな時に君らが来たんだ。どんなもんだろうと興味本位だったが、中々どうして面白そうじゃあないか。言っておくが、これでも人を見る目はあるつもりさ。何かにつけて、人が行動することへ文句を言いに来る奴等よりも、よっぽど有能そうだ。上手く出し抜けたりもするんじゃないかい?」
「随分と…………饒舌ですね」
若干腰が引けているルッドの言葉に、レイスはハッと表情を変える。さっきまでは怖いくらいに凄みのある笑みだったが、今は真顔に戻った。
「おっとすまない。これでも日頃からストレスの溜まる環境なのでね、発散できる機会が来ると、ついはしゃいでしまう」
「手っ取り早い話が好みでしたら、遠慮なく言わせてもらいますが、要は僕らと手を組みたいと?」
こちらの長所を褒めるというやり方は、以前にも体験している。その先には自分の陣営に加わらないかという勧誘が待っているはずだ。
「お互いに足りぬ部分を補い合わないかという提案だ。御用達という言葉を知っているかい? 総領主一族というのは、国がこういう混乱期でもそれなりに認められた一族だ。そういう一族の者と懇意にしているというのは、商人にとっても中々に実入りの良い話だと思うがね? 勿論、それを行うにあたって対価を支払って―――
「待ってください。もしそれがあなたと手を組む上でのこっちのメリットだというのなら、そんなのはいりません」
別の総領主一族の名声が欲しいわけでは無いのだ。むしろ今はそれが邪魔になってしまう時期である。
「今、この国状況は良く理解していますよね? 総領主が無茶をやったせいで、国家の信頼が揺らぎ始めている。そんな状況で、おいそれと総領主一族の名声を利用するのは、むしろ足枷になる」
実際、ミース物流取扱社は国との関係性が薄いからこそ現在の繁盛があるのであり、レイスの名など使えばそれが台無しになってしまう。
「…………ま、そういうと思っていたよ。まいったな。ぶっちゃけて言えば、こっちで用意できるものなんてそれくらいでね。君らが受け入れてくれないというのも想定済み」
ルッドの返答が原因となって、途端に興味とやる気を無くしたのか、レイスがソファーに深々と座った。幾ら彼女の思慮が深くとも、それを行える立場でないというのを、彼女自身が一番理解しているのだろう。
彼女の言う通り、今回の話は彼女のストレス発散を目的としたものでしかないのかもしれない。もしかしたら自分にも権力者染みた行動ができるかもしれないという報われない望み。
でなければ、いくらお飾りの地位とは言え、ルッド達の様な小さな組織とわざわざ直接会うものか。
(つまり、僕らにとっては好ましい人ってわけだ)
ミース物流取扱社の様な組織ですら力を借りたがる国の関係者。そんなのは怪しい身持ちの人間しかいないと覚悟していたが、なるほど、こういう相手もいるにはいるのか。
(さて、どういう形で彼女を引き込むか。それが重要になってくるだろうね)
準備の段階は終わった。これからがルッドの交渉の始まりである。