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北風の道  作者: きーち
第六章 造船事変
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第六話 利益は自分の物に

 ディドル・ミースがブラフガ党の間諜である。ルッドがその推測をファンダルグへぶつけた瞬間、その場でパチパチと手を叩く音がした。

 ファンダルグが拍手をしているのだ。

「そう、その通り。ディドル・ミースはホロヘイの情報収集を担当するブラフガ党員です。表の顔では我々が用意した情報を使って商売をし、裏の顔ではこの町の動きを我々に報告する。そんな人物だった」

 どこかで聞いた様な役割を担う男だったというわけだ。ルッドがその事に気が付いたのは、彼が残した資料によるところも多いが、それ以上にルッド自身の立場も似た様な物であったからというのもあるのだろう。

 表が商人。裏が間者。そういう役割で動く人間が確かにいるという事を、ルッド自らが良く知っていた。

「あなたはそこに行き着いたということは、彼が失踪直前に何をしていたかについて、既に調べはついているのでしょう?」

「やっぱり、それを聞き出すことがブラフガ党の望みですか………」

 ファンダルグが何故、ディドル・ミースについて調べてみろとルッドに提案したか。それは彼が失踪しており、何故そうなったかをルッド自身に調べさせるつもりだったからだろう。

 彼の足取りを追うことが、彼の正体を探るための唯一の方法だったから。

「正確に言えば、彼を失踪させたのは我々です。匿ったと表現すれば的確でしょうか? 彼はこの町で失態を犯し、追われる立場となった。仲間が危険に晒された時、助けるのが組織の役目でしょう?」

「ということは、彼はまだどこかで生きている?」

「命の保障はしておきますよ。現地で事故などに遭っていなければですが。とりあえず追手などは来ない場所に居るとだけ。ただ、かなり早急に事を運んだため、彼から情報を聞き逃してしまいましてね。既に私達でもおいそれと会えない場所に彼はいる。ソルトライク商工会が関わっていることだけは分かっていましたから、私が代理として探っていたのです」

 その代理の代理として、ルッドがソルトライク商工会を探る役目を頼まれたということだろうか。

 勿論、タダで情報を渡す気は無いのであるが、それでもブラフガ党の目論見道理に動いている。

「恐らくなんですが、ディドル氏が最後に何を調べ、どういう危険に遭ったかについては分かりました。それをここで明かすことは勿論できますが………」

「分かっていますよ。ここからが交渉だ。我々はあなたに何を用意できるか。それを要求するつもりですね?」

 我ながら大胆な物言いだと思う。相手は悪逆を行う非合法組織なのだ。それを相手に対価を寄越せなど、自分の命を火であぶる様な危険さを感じる。ゾクゾクする様な恐怖と快感。もしかしなくても、自分はどこかおかしい。

「これは商売なんですよ。僕は別にあなた達の仲間になった覚えはありません。だから何かを与え、得るという関係は、必ず対価をお互いに用意する必要があります」

「………なるほど。では、我々が持つソルトライク商工会の情報を明かすといのが対価で良いでしょうか? 今回の一件と繋がりが生まれるかは知りませんが、あなたにとっては有益な物かもしれない」

 情報の対価は、また別の情報というわけだ。物質的なあれこれよりは貸し借りが深くなりそうに無いので、まだ良い交換条件だと思う。

「わかりました。それで良いです。例によって、僕が先に情報を開示する形で?」

「ええ。一応、現状で有利な立場は私の方みたいですので」

 力関係が良く分かっていらっしゃる様なので嬉しい限りだ。こちらの生死を握っていると言う事実を、良く理解していて欲しい。

「ディドル氏は失踪直前に、ダーマス造船社というホロヘイ内にある組織を調べていました。知っていましたか?」

「名前だけは。私も独自で調べてみたのですが、どうも今回の支援事業についても、ソルトライク商工会からの支援対象となっている組織の様でした」

 その情報は初耳であるが、恐らくそうなっているだろうという予想はあった。というか、そうでなければならない。

「ディドル氏はその組織がどこにあるのかを掴んで、実際にそこへ足を運んでいましたよ。そして、それは罠だった」

「罠?」

「迂闊に近づく者を敵対者と判断するソルトライク商工会の罠です。僕自身もそこへ向かいましたが、無人の事務所があるだけでしたよ。そしてそこに侵入する者への監視者がいた」

 ルッドは咄嗟に覆面を作って顔を隠したが、ディドル氏は無理だったのかもしれない。だからソルトライク商工会に身元がバレてしまった。

「無人の事務所には、ソルトライク商工会にとって重要な意味があります。他者にバレぬわけには行かない大切な場所なんですよ。ディドル氏はそこへ迂闊に足を踏み入れて、ソルトライク商工会の敵対者になってしまった。この国でそんな立場になるというのは、とても危険なことですよね?」

 例えばブラフガ党を敵に回す様な物だ。大陸中を逃げまわったって逃げ切れそうに無い。自身の足取りを完全に隠さぬ限り。

「ソルトライク商工会の根は、それこそ貸し馬車屋の数だけありますからね。それに商売関係も大打撃を受けるでしょう。貸し馬車屋の大半が敵に回るということでもありますし」

 この国で貸し馬車屋制度を利用できないなど、商売ができなくなるのと同義だ。結果、危険を冒してまでホロヘイに留まるよりも、どこかへ雲隠れする選択をしたのだろう。

(娘を一人この町に残して。その選択はちょっと気に入らないな)

 せめて自身の家族を連れて行くべきだったとルッドは思う。その時、どの様な事情があったのかは知らぬが。

「とまあ、これはディドル氏とソルトライク商工会の因果関係です。さらに詳しい事情を知りたいというのなら、僕なりの推測を語ることはできますが、また別の対価を用意して貰う必要があります」

「ああ、それ以上は結構。大凡、知りたい情報は揃いましたから。というか、それ以上の情報に見合った対価を用意できる準備がこちらには無い」

 ならば後はファンダルグが、ブラフガ党が持つソルトライク商工会の情報とやらを聞くだけで交渉が終わる。

「そうして、我々が持つソルトライク商工会の情報についてですが、ザナード・ソルトライク個人の情報となります」

「ザナード・ソルトライク………有能でカリスマのある人物であろうことは聞き及んでますが」

 ただ実際に会ったことが無いため、人格がいまいち掴み難い。

「噂通りの人物ではありますね。たた、噂に納まらぬ野望を持っていらっしゃる」

「野望?」

「この国の権力機構に、自らを喰い込ませるという野望です。ラージリヴァ国は各地方を領主が統治し、それらの合議の元に国家としての指針を決める。その機構に、各地の販路を繋げる自らの権益を喰い込ませようというのですね」

 ソルトライク商工会は莫大な利益を生む力を所有しているものの、それは本当に国家基盤とはなっていない。まだあくまで商売の段階での話なのだ。

 例えばソルトライク商工会の長は貴族と呼べるか。という話であろう。

(国の統治機構に参加してこその貴族だ。ソルトライク商工会の現在は、そこに到達しているかしていないかの境と言ったところなんだろう)

 だから本格的に権力者としての道を進もうとしている。莫大な金銭を手に入れた者が目指す次の目的は、権力を得ることだろうから。

「何故、私がそれを知るかと言えば、ザナード氏自らが我々ブラフガ党に接触してきたからです」

「ブラフガ党に!?」

 驚くべき話だと思う。国内の大きな組織の長が、非合法かつ同じく強大な組織へ接触しようとするというのは、必ず国に対して大きな変化を引き起こすからだ。

「この国の権力機構を一度ご破算にしてみないか。そんな提案をしてきたらしいですねえ。まあ、私が直接相手にしたわけではありませんので詳しくは分かりかねますけれど。ただ、随分と怪しい話じゃあ無いですか。だから党員にソルトライク商工会の背後を調べさせようと思ったのですが………」

 結果はディドル・ミース失踪に関わる一件で収束してしまったのだろう。ソルトライク商工会は一筋縄では行かない相手であることだけが分かった。

「さて、まあ、わたくし共が独自で持つ情報と言えばそれくらい。それ以外の情報ならば、あなたが独自で集めてきそうですから、あまり価値は無いのでしょうねえ………」

 だから交渉は終わりのはずだが、何故か興味深そうにこちらを見ているファンダルグ。まだ何か目的があるのか。

「話すべきことは話した気がするんですが………」

「ですねえ。だから、これから後の話はソルトライク商工会とは別件です。というのも、我々、ブラフガ党の話になります」

 ああ、嫌な予感が当たってしまう。ルッドが今回の交渉で一番警戒していたのは、こういう展開だった。

 情報の遣り取りだけなら、怖い組織が相手だろうとも対等に渡り合えるが、それ以外の深みになると、非常に恐ろしい事態となるだろう。

「私はね、カラサさん。あなたを評価している。実に有能だし、その行動力は目を見張る物がある。その若さでそれだけ貪欲に情報を集めようとする意欲は、稀有な才能なのですよ」

 自身を褒めちぎる言葉が並ぶが、ルッドはちっとも嬉しく無かった。褒め言葉の後に続く言葉を想像すると、むしろ怖くて仕方ない。

「さきほど、対価の話をしましたね? これ以上にソルトライク商工会の情報が欲しければ、さらなる対価を用意しろとあなたは口にした。それに見合った情報を我々は持ちませんが、見合った立場であるならば提供できると思う」

(ほらきた)

 どうか冷や汗が流れぬ様に。ファンダルグの提案は慎重に考えねばならぬ。どの様な返答をするにせよ、迂闊な事を言えば、自分の将来が崩壊する危険性があった。

「ディドル・ミースの足取りを追ったと言うことは、彼が商人として成功者であったことを勿論ご存知ですよね? あなたも、それと同じ立場に立ちたいと思いませんか? 多くの情報を所有し、その情報を精査後、実際に行動することで、誰よりも早く商機を掴む。商人としては喜ぶべき立場だ」

 ファンダルグの提案はつまり、ディドルの後任にならないかという物だった。それが意味するのは即ち、ルッドのブラフガ党への勧誘である。

(さて、確かに多くの情報が得られる立場というのは魅力的だ。ブラフガ党ほどの大きな組織の援護が受けられるというのも心強い。一方で、断ればブラフガ党に泥を塗ることになる。それはとても危険な行為だし、もしかしたらこの場でその制裁が行なわれるかもしれない)

 誰がどう考えても、この場ではとりあえず話を飲んでおくべきだろうことはわかる。ルッドは少しのあいだ目を閉じて、心を落ち着かせる。

 酔いの興奮があらぬ言葉を口にせぬよう心を落ち着かせながら、それでも高揚する精神の力を借りて、その言葉を口にした。

「お断りします」

「ほう」

 酔い任せの発言であったが、ルッドのそれは、決して自分の判断に背く物では無かった。ブラフガ党の参加者となる? 冗談じゃあ無い。

「良い話ばかりを口にしますが、結局はあなた達の傘下に入れってことじゃあ無いですか。ブラフガ党に首根っこを掴まれたまま、商売だけは上手く行える? それは僕自身が掴んだ栄光じゃあ無く、あなた達が釣り下げた餌に誰かが食い付いただけのことだ。そんなのはまったく欲しくないんですよ」

 酔いに任せた言葉の羅列をファンダルグにぶつける。この後どうなるかと言った心配はあえて忘れる。今はただ、自身の意地を相手に伝えるだけだ。

「我々の提案を断るということの意味を、わからぬあなたでは無いと思っていましたのですがねえ………」

 再び、右腕を下げるファンダルグ。戦闘態勢を取ったつもりか。しかし、まだ戦場は話し合いの中にある。ルッドが得意とする戦場だ。

「命を賭けるという言葉があります」

「?」

 突然出たルッドの言葉が分からぬのだろう。ファンダルグはルッドの目を見続けていた。

「そういう言葉が使われる多くの場合は、既に手遅れの状況だと僕は思うんですよ。例えば敵の集団に追い詰められた戦士が特攻する時とか、食い詰めた貧乏人がなけなしの金銭を集めて賭け事をする時とか。でも、そんなのはぜんぜん命を有効活用していません」

 ただ命を無駄遣いする自分に酔っているだけだ。その結果の殆どは悲惨な物になるし、成功者になったとしても、命の対価としてはあまりにも価値が薄い結果が残る。

「命を賭けるなら、もっと早い段階で行うべきです。命さえ賭ければ、すぐにでも道を引き返せる。そんな時にこそ命を賭けるべきなんだ。もし賭けに成功すれば、その後の将来を自分が望む方向へと近づけることができるんですから」

 だから今だ。もし、ここでファンダルグの提案を受け入れれば、その後の意思がどうであれ、ブラフガ党という大きな組織の流れに放り込まれることになる。

 そこにルッドの意思が関与する余地は少なくなり、そんな状況はちっとも面白くない。

「あなたは私の提案を断るためだけに、命を賭けると?」

「ええ、だからいざ戦闘になった時のために護衛も連れてきました」

 ルッドは横目で、交渉の間、ずっと黙っていたダヴィラスを見た。表情をまったく動かさぬダヴィラスを見て、恐らくは失神寸前になるまで緊張していることが分かる。

「確かに今の僕の立場はあなた達よりも酷く弱い。けれど、それでも対等だ。あなた達の仲間になれば、立場は強くなるかもしれないが、対等な関係には絶対になれない。今、ここで行った様な交渉も不可能になる。それが僕にとってはなによりも苦痛なんだ」

 弱くても何時かは強くなれる。だが一度飼い犬になってしまえば、どれだけの力を持とうとも、飼い主と対等にはなれない。

「…………あなたの意見はわかりました」

 微笑みを消すファンダルグ。交渉は失敗ということだろうか。ルッドは自身の意地をぶつけて、ファンダルグがルッドを仲間にしようとする意思を曲げようと足掻いた。

 先日のファンダルグの様子や、ディドル氏の情報を集める内に、どうにも彼がルッドを仲間に入れようとする意図が読み取れたからだ。それをどうにかするための足掻きが今までの行動である。

 最終的にはファンダルグ側の意思に左右さられるが故の命賭けだった。結果如何によっては、ルッドの命も無いという意味で。

「…………ああ、それでもあなたは惜しい人材だ。無下にすべきじゃあない。これをほざいたのがもう少し無能であれば、ここで決着を付けていたのですがねえ」

 ファンダルグは右腕の袖に仕込んだ刃物を一旦ルッドに向けた後、すぐに仕舞った。光って尖るそれを向けられただけで、ルッドは涙が出そうになる。

「良いでしょう。あなたは我々と対等に居たいというその意思に免じて、さっきの提案は無かったことにします。ただし、対価は用意して貰う」

「た、対価!?」

 これは予想できなかった。まさかさらに別の要求をしてくるなど。

「安心してください。私の個人的な頼みで、ブラフガ党は関係ありません。もし請けてくれるのならば、あなたを勧誘するなどということは二度としない。どうです?」

「………そっちの提案を断った対価を要求されるというのは、どうにも納得し難い状況なのですが………」

「おやおや、さっき、あなた自身が言いましたよね? 自分の立場は弱いと。対等な状況にあって、尚且つ立場が弱いとなれば、いくらでも足元を見られるのは当たり前でしょう」

 まったくだ。こっちの頼みごととやらは、受け入れるしかあるまい。必死の交渉の結果、手に入れた成果と言えなくも無いし。

「依頼が成功した際は、勿論報酬も払います。ですから、単なる商人への依頼と考えてくれて構いませんよ?」

「わかりました。その依頼、受けます」

「すみませんねえ。依頼内容はまた別の機会に話します。ミース物流取扱社に、単なる一般人として立ち寄る予定ですから、心の準備はしておいてくださいよ。それでは」

 ファンダルグは一通りのことを伝えると、ルッドに背を向けて路地裏を去って行った。その背中が完全に消える頃、ルッドは大きな息を吐く。緊張が解けて脱力しそうだった。足も震えだして立つことすら困難である。

「ダヴィラスさん。そろそろ起きてください」

「はっ………」

 ダヴィラスに至っては、目を開けたまま完全に気絶していたらしい。路地裏に残る満身創痍の男が二人。

 なんとも情けない姿であるが、それでも、ブラフガ党との交渉は成功と言っても良い成果を収めた。




 情報収集を一通り終えたルッドは、ミース物流取扱社に戻った後、先輩外交官への報告書をまとめていた。

 ソルトライク商工会の動きに関する情報だ。

(ソルトライク商工会とラージリヴァ国。この二つの組織が行う造船業への支援であるが、それには勿論、それぞれの思惑がある。ラージリヴァ国側に関しては単純で、そちらも勘付いている頃だと思うが、ソルトライク商工会が造船支援に参入した事への対抗意識が強い。ソルトライク商工会の支援事業に真っ向から対抗することで、相手の組織力を削ぎ落すつもりなのだ。しかし、そこにこそソルトライク商工会の狙いが存在する………)

 ここまで報告書を書いたところで、ルッドは筆を止めた。事務机に置いたホットミルクを口に含み。暫し黙考する。ちなみにこのミルクも毛長馬のものらしい。非常に癖のある喉越しなのだが、この国では一般的な飲み物の地位にあるそうだ。

(どこまで書くべきなんだろうねえ。結構、危険な目にあって集めた情報だ。仕事だからって、すべてを向こうに渡すなんて有り得ない)

 ただし、何も用意できなかったなどと報告もできない。ソルトライク商工会に関する情報はちゃんと報告しながら、もっと重要な部分は自分だけで握る。そんな報告書を作成する必要があった。

(ふむ………ソルトライク商工会の狙い。それは、ラージリヴァ国側のミスを誘うことである。恐らく、戦いのための準備はもっと以前から行われていたのだ。ダーマス造船社という組織が存在する。ソルトライク商工会とも関係深く、商工会からの支援を受ける予定のこの組織であるが、調査の結果、実態の無い、無人事務所だけの組織であることがわかった)

 ソルトライク商工会が事前に用意していた架空の組織だったということだろう。そんな組織にソルトライク商工会は支援を行おうとしている。何故か。

(ダーマス造船社は、ラージリヴァ国側を陥れるための罠なのだ。ラージリヴァ国はソルトライク商工会が支援を行う組織に対して、同様の支援を行うことで、ソルトライク商工会と対峙しようとしているのだろうが、それは支援対象の調査をソルトライク商工会側に依存するということでもある)

 相手が支援を行う組織に対して、自分達の組織力を活かしながら、全面的に支援を行う形で対抗しようとするのなら、そういうことになる。

(既にソルトライク商工会は、ダーマス造船社の様な組織を複数用意していると予想できる。これらの組織は傘下組織などという単純なもので無く、ソルトライク商工会が作った疑似餌であろう。そこにラージリヴァ国が支援を行うというのなら、その支援金はそのままソルトライク商工会の手元に届くことになってしまう。これがソルトライク商工会の狙いであるのだ。ラージリヴァ国としては、支援対象組織の精査が必要になると思う。一方でそうでない立場としては、この様な状況をどう利用していくかが重要になってくるだろう)

 ルッドはそこまでを書いてから、報告書の作成を終えた。それなりの報告物となる様に作っており、手に入れた情報の結果、考え出せる状況の一つであるため、ある程度は評価できる物になったと思う。

「ま、こんなもんだね。この報告を元にあれこれと考えて動くのはラーサ先輩だ。僕じゃあない」

 まだルッドは、集めた情報のすべてを報告書に書き込んだわけでは無い。それでも必要最低限の物は提供できているはずなので、文句を言われる筋合いは無かった。

(そう。命を賭けて集めた情報だ。それをもっとも活かすのは僕の権利なんだよ。それは誰にも渡さない)

 さっそく行動へと移ることにしよう。陰謀が蠢くこのラージリヴァ国で、大きな利益を得られるチャンスが舞い込んできたのだから。



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