プロローグ
紙飛行機を折るのが、小さい頃から好きだった。
僕が幼い頃、祖父が紙飛行機をよく折っているのを間近で見ていた記憶がある。
祖父は、様々な形をした紙飛行機を折っていた。
ある日、祖父は僕に聞いた。
「おじいちゃんの作った紙飛行機の中で、どれが一番好きなんだい?」
幼い頃の僕には1つだけ、祖父が折った紙飛行機の中で本当に気に入っていたものがあった。
僕はすぐに「それ」を指差した。「それ」の名前を、僕はまだ知らなかった。
「これはなんていうひこうきなの?」
「これかい? これは――『はばたきカモメ』って言うんだよ」
「かも……め?」
「そう、カモメ。おじいちゃんの大好きな鳥さ」
祖父はカモメが好きだったらしい。
「いいかい? この飛行機はね――人の思いを大切な人に届けさせてくれる素敵な紙飛行機なんだ」
「おいおい父さん、そいつはまだ小さいんだ。そんな話をしても分からないだろ」
後ろから聞こえてきたのは、僕の父の声だ。
「分からなくてもいい。ワシが自己満足で話したいだけなんだ。
この『はばたきカモメ』は思い出の飛行機だから」
「おもいで……」
「何か思いを伝えたい時――この紙飛行機を飛ばすんだ。……きっと、その思いは届くはずだ」
祖父はそう言って、笑った。
僕は余計にその『はばたきカモメ』が好きになって――すぐ、祖父にこう言った。
「作り方、教えてっ!」
◆
カモメは、人の思いを大切な人に届けるらしい。
だからあの日、高校二年生の冬、季節外れのカモメが翔んだ。
――僕の甘酸っぱい青春と、募った思いを風に乗せながら。
僕の初恋の話をしよう。
遡る記憶。確かあれは、高校二年生の秋――。
これは、たった数ヶ月の、カモメが羽ばたくまでのお話。
更新が不定期になったしまうとは思いますが、こんなお話を書いていきたいと思います。よろしくお願いします。