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視聴者の“指示コメ”が全部スキル化するので、ソロでも攻略できる  作者: ゆうと


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4/21

空気が割れた。


目の前に、透明な板が生まれる。

ガラスみたいに薄いのに、なぜか“頑丈だ”と直感が言っていた。


《具現化 残り:1/3》


――【盾】で、1回消費。

上限、きつい。でも今は迷ってる暇がない。


二体目の骸骨が槍を突き出す。

さっき壁に刺さった槍より速い。狙いが正確で、殺しに来てる。


俺は反射で盾を前に出した。


――ガンッ!


金属が割れるみたいな音。

槍が盾にぶつかった瞬間、先端が跳ねて軌道が逸れ、床に刺さった。


「……防げる!」


視聴者数が「38」になっていた。

コメントが流れすぎて読めない。


【でたw】

【盾やば】

【それチート】

【いけるいける】

【次は反撃】

【押せ】

【雑魚w】

【死ねw】


また来た。アンチ。


左腕が、ピリッと痛む。

さっきよりは軽い。……でも確実に“刺して”くる。


俺は歯を食いしばって、良いコメントだけ拾う。

ここで感情に引っ張られると、負ける。


「採用する。次――」


コメント欄が、ひとつだけ“目立って”見えた。


【投げろ】


短い。具体的。危険も少ない。

俺は即決した。


「採用――【投げろ】!」


盾の端が、急に“持ちやすく”変形した。

取っ手が生えて、腕に固定される感じ。


《具現化 残り:0/3》


「……くそ、これで最後!」


骸骨が二体、同時に来る。

一体が正面から槍。もう一体が横から回り込んで、挟み撃ちにする気だ。


俺は一歩後ろへ下がった。

罠と粘液は避ける。壁沿い。狭い通路の利点は、槍が振り回しづらいこと。


正面の槍が来る。

盾で受ける。


――ガンッ。


勢いを殺さず、そのまま盾を“投げた”。


盾が回転しながら飛んでいく。

金属の縁が、骸骨の脛に当たった。


――バキッ。


骨が折れる音。

骸骨が前のめりに崩れ、槍が床に滑った。


「よし!」


でも盾は床に落ちたまま、戻ってこない。

当たり前だ。投げたんだから。


横から回り込んだ骸骨が、俺の背中へ槍を突く。


コメントが流れる。


【しゃがめ】

【転がれ】

【左】

【壁!】


俺はしゃがんで前へ転がった。

槍が空を切り、背中の服を裂く。冷たい汗が噴き出す。


転がった先、床に落ちた槍がある。

俺はそれを掴んだ。


「……借りる!」


骸骨って、倒し方は単純だ。

“動力”を止める。関節。青い火。


倒れている方の骸骨の目の奥、青い火がゆらゆら揺れる。

俺は拾った槍を、そこへ突き刺した。


――ズン。


火が跳ねて、消えた。

骨が、ただの骨になる。


視聴者数が「70」になっていた。


【うおおお】

【今の上手い】

【盾投げ天才】

【切り抜き確定】

【神回】

【初配信でこれ?】

【運営BANされるだろw】


“運営BAN”。

その文字を見た瞬間、喉がひゅっと鳴った。


……そうだ。

これはチートだ。明らかに。


でも、今は考えない。

残り一体。


槍を持った骸骨が、ゆっくり立ち上がる。

さっきより慎重だ。学習してる。


盾は床の向こうに落ちたまま。

上限はゼロ。具現化できない。


「……詰み?」


コメントが流れる。


【槍捨てろ】

【距離詰めろ】

【目】

【関節】

【塩】


塩――。

俺はポーチを探り、小袋を掴む。まだ残ってる。


骸骨が槍を振り上げる。

突くんじゃない。今度は叩き潰す気だ。


俺は一歩踏み込んで、わざと“槍の内側”に入った。

近すぎる距離。怖い。でも槍は長い。内側は弱い。


その瞬間、骸骨の腕が少し止まった。

……一瞬の迷い。人間みたいに。


俺は塩を関節へ叩きつけた。


――パチッ。


青い火が乱れる。

骸骨の動きが鈍くなる。


「今だ!」


短剣を、関節の隙間へ。

刃が骨に当たって弾かれそうになるのを、体重で押し込む。


――ズン。


入った。

骸骨の腕が落ち、槍が床に転がった。


俺は拾った槍で、最後に目の火を突いた。


――シュッ。


青い火が消える。

骸骨が崩れ落ちる音が、通路に響いた。


静寂。


俺はその場に座り込んで、やっと息を吐いた。

喉がカラカラで、笑いが漏れる。


「……初配信で、死ぬかと思った」


視聴者数が「120」。


コメントが流れる。


【生きてて草】

【ガチで神回】

【次いつ?】

【フォローした】

【切り抜き作る】

【盾投げタイトル入れろ】


そして――最後に、嫌なコメントがひとつ。


【次は死ねw】


左腕が、またピリッと痛む。


俺はスマホに向かって、静かに言った。


「……お前の言葉、俺に刺さってる。面白がるなら勝手にしろ。でも、刺すなら――」


俺は立ち上がって、暗い通路の奥を見た。

さっきの【目印】が消えた先。さらに奥へ続く道。


「――その分、俺は強くなる」


画面の隅に、新しい表示が出た。


《支持率:—% 集計中》


……支持率?


コメントが一斉に流れた。


【支持率きた】

【システム開示w】

【これ上がると強くなるやつだ】

【次回確定】


俺は笑った。


「……次、行くぞ」


暗闇の奥で、何かが鳴いた。

さっきより、ずっと大きい音が。

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