表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
視聴者の“指示コメ”が全部スキル化するので、ソロでも攻略できる  作者: ゆうと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/19

アンチコメント

足音は一体じゃない。

二、三……もっと。硬いものが床を叩く音。


ナメクジが逃げた方向と逆、通路の奥から“影”が現れた。


――骸骨。

鎧をまとった骸骨が、錆びた槍を引きずりながら歩いてくる。

目の奥に青い火。ダンジョンの警備兵みたいなやつだ。


「一層にこんなの、いるのかよ……」


視聴者数が「8」。

コメントが一気に増える。


【逃げろ】

【無理】

【槍長い】

【足狙え】

【ライト消して】

【壁沿い】

【煽り】

【雑魚w】


最後の一行だけ、空気が違った。


【雑魚w】


馬鹿にしたみたいな短い文字。

俺の胃がきゅっと縮む。


「……今それ言う?」


骸骨が槍を構える。

俺は後ろに下がろうとして、粘液で滑った。


【転べw】


また来た。

胸の奥が熱くなる。ムカつく。反射で言い返したくなる。


でも――直感が警告した。

“悪意のコメント”は危ない。変な反動がある気がする。


俺は無視して、役に立つコメントだけ拾う。


【足狙え】

【壁沿い】

【ライト消して】


「ライト、消す……?」


俺の左手首の光球を、右手で掴む。

掴めた。熱くない。

握り潰すみたいに力を入れると、光が弱まった。


骸骨の青い火だけが浮かび上がる。

暗い。距離感は落ちる。でも――相手も見えづらいはず。


俺は壁沿いに移動し、床の粘液を避ける。

骸骨が一歩踏み出し、槍を突き出した。


槍先が石壁に当たり、火花が散る。

狭い通路だ。槍が“長すぎる”。


【短剣で足】

【膝】

【転ばせろ】


俺は息を止めて、槍の内側へ潜った。

怖い。距離が近い。骸骨の骨の匂いなんて、あるわけないのに臭い気がした。


短剣を、膝に叩き込む。


――ガキン。


硬い。刃が弾かれた。


「……骨、硬っ」


【塩】

【関節】

【砂】


砂? 塩はある。

俺は塩袋を開け、骸骨の関節へ叩きつけた。


骨と鎧の隙間に白い粒が入り、青い火が一瞬揺らいだ。

骸骨の動きが止まる。


「……今だ!」


俺は二度目の刺突。

関節の“止まった瞬間”を狙って刃を押し込む。


――ズン。


入った。

骸骨の膝が折れ、槍が床に落ちる。


視聴者数が「12」になった。

コメント欄が一気に加熱する。


【やった】

【いける】

【次は頭】

【止め刺し】

【転べw】

【死ねw】


最後の二つ。アンチだ。


その瞬間、胸の奥に黒いものが湧いた。

“死ね”って言葉が、目に刺さる。


――ピリッ。


左腕が痛い。

まるで針で刺されたみたいに、皮膚が熱を持つ。


「……これ、反動か?」


悪意のコメントを見た瞬間、痛みが増す。

俺は歯を食いしばった。


コメントが現実化するなら、悪意も現実になる可能性がある。

それは敵の攻撃より厄介だ。


俺はカメラに向かって言った。


「……悪いけど、煽りは要らない。今の俺は、あんたの遊びじゃない」


コメント欄が一瞬止まる。

その直後、短い文字が流れた。


【応援】


それと同時に、左腕の痛みが少し引いた。

まるで“相殺”みたいに。


「……マジかよ」


骸骨が、もう一体現れた。

通路の奥、青い火が二つ。


視聴者数が「20」になった。


コメント欄が、洪水みたいに流れ出す。


【ライト】

【壁】

【塩】

【逃げ道】

【投げろ】

【スキル上限ある?】

【次の指示は慎重に】


俺は息を吸って、塩袋を握りしめた。


「……選ぶ。次のコメント、俺が“採用”する」


その瞬間、画面の隅に見慣れない小さな表示が出た。


《具現化 残り:2/3》


――上限、ある。


俺は笑いそうになった。

怖いのに、楽しい。


「……じゃあ行く。次、必要なのは――」


骸骨が槍を投げた。

俺の頬をかすめて、壁に突き刺さる。


コメントが一行、滑り込む。


【盾】


俺の目の前で、空気が“割れた”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ