第百二章 潜入報告と大騒動!銀河警察またも混乱
影の艦隊の造船所への潜入任務を、ドタバタながらも成功させたアストラたち。
だが、銀河警察本部に戻り、報告会を行うや否や――またもや大騒動が巻き起こる。
報告会のはずが演劇大会? 作戦説明がなぜか討論会に? そして胃痛アストラの悲鳴は今日も響く。
銀河警察本部・大作戦会議室。
そこには、潜入任務から戻ったばかりのアストラたちがいた。
司令官が威厳たっぷりに問いかける。
「……では、報告をしてもらおう。影の艦隊の造船所で、何を見た?」
アストラは緊張でごくりと唾を飲む。
「えっと……その……とにかく、めちゃくちゃでかかったです!」
「めちゃくちゃでかかった、では報告にならん!」司令官のこめかみに青筋が浮かぶ。
「でも本当に大きすぎて! 艦が百隻以上、同時に建造されてて!」アストラが必死に身振り手振りを交えて訴える。
「百隻以上……!」会議室がざわめく。
そこにリーナが冷静に補足する。
「データを解析した結果、造船所には戦艦クラスが最低でも百二十三隻。加えて未確認の大型艦の骨組みが複数確認できました」
「おおお……!」会議室はさらにざわつき、重苦しい空気が漂う。
そんな中――。
「よし、ここで僕の役者魂を活かすときが来た!」とカイが立ち上がった。
「な、何をする気!?」アストラが青ざめる。
「潜入の様子を実演して説明するんだよ!」
カイは椅子をひょいと持ち上げると、それを「影の艦隊の兵士」に見立て、大声で叫び始めた。
「おい怪しい船! 停止しろ! でなければ撃沈する!」
「うわああ! そ、それ僕のセリフじゃん!」アストラが慌てて立ち上がり、寸劇に巻き込まれる。
「アストラ、もっと必死に逃げ惑え!」
「演技じゃなくて本当に必死だったんだよ!」
会議室の将校たちは目を丸くし、しまいには笑い出す者まで現れた。
「こ、これは一体何の報告会なんだ……?」司令官が額を押さえる。
だがリーナは眉をひそめた。
「……あの。演劇をしてる場合じゃなく、早く戦略会議を……」
「よし! じゃあ今度はリーナが敵コンピュータ役だ!」カイが勝手に指名する。
「はぁ!? 私は機械音声じゃないわよ!」
「ピピピ……データ確認中……」と嫌々モノマネするリーナ。
「妙にリアル!」と会場から拍手が起こる。
「やめろぉぉ! これ以上混乱させるなぁぁ!」アストラが泣きそうな顔で叫んだ。
そんなドタバタの最中、会議室の別テーブルでは別の混乱が始まっていた。
戦略参謀たちが影の艦隊への対応を巡って言い争いを始めたのだ。
「すぐに大艦隊を送り込み、造船所を破壊すべきだ!」
「いや、情報が不十分だ。下手に動けば罠にかかる!」
「いやいや、今のうちに交渉の窓口を――」
議論は白熱し、あっという間に大声の討論会に発展。
アストラはその光景を見て頭を抱える。
「なんでぇ……報告会だったよね、これ……?」
マリナは冷静に一歩前に出た。
「皆さん、落ち着いてください。影の艦隊の力は確かに脅威です。でも、私たちが直接潜入して見た結果、まだ建造は完全に終わっていません。今が一番、相手の隙が多い時期です」
その冷静な言葉に、会議室は一瞬静まり返る。
「……なるほど。確かに一理ある」参謀の一人が頷いた。
ところが――。
「では具体的にどうすればよいか、ここで模擬作戦を!」とまたもカイが立ち上がる。
「おいおいおい!」アストラが止める間もなく、カイは壁のホワイトボードを使い出す。
「ここが造船所! で、こっちが僕ら! ドーンと突っ込んで、バーンと爆破!」
「雑すぎる!」アストラが絶叫。
その雑な説明を見て、何人かの若手将校が「なるほど!」「分かりやすい!」と感心してしまう始末。
「いや分かっちゃダメでしょ!?」アストラの胃がさらに痛む。
結局、会議は混乱のまま長引いた。
最終的に司令官が机を叩いて叫ぶ。
「よし! とにかく作戦立案は後日! 今は全員休め!」
「……え、休めでいいの!?」アストラが呆気に取られる。
「胃が……僕の胃がもたない……」
こうして影の艦隊の脅威が判明したにも関わらず、銀河警察の会議はまるで学芸会のような混乱のうちに終了したのだった。
潜入報告会は、寸劇と討論で大騒動。
アストラの胃はますます悲鳴を上げ、銀河警察の将校たちも混乱に包まれる。
だが、確実に「影の艦隊」という脅威の存在は全員の胸に刻まれた。




