第百一章 影の艦隊、動き出す!? ドタバタ潜入作戦
宇宙海賊との大戦を辛くも切り抜けたアストラたち。だが銀河の脅威は終わらない。
闇に紛れ、密かに銀河同盟を揺るがそうとする「影の艦隊」。その存在が、ついに表舞台に姿を現そうとしていた。
そしてなぜか、潜入任務を命じられたのは――もちろん、我らがノヴァ・リュミエール号。
緊張とドタバタ、そして胃痛に満ちた潜入作戦が今、幕を開ける。
「潜入任務……ですって?」
銀河警察本部の作戦会議室で、マリナが眉をひそめた。
「そうだ。敵は“影の艦隊”。未確認の勢力だが、諜報によれば巨大な軍需工場を建設しているらしい。そこの情報を掴む必要がある」司令官が厳かに説明する。
「いやいやいや! 何で僕らなんですかぁぁ!?」アストラは両手を振り回す。
「君たちはこれまで数々のドタバタで……いや、事件で成果を挙げてきただろう」
「ドタバタって言ったよね!? 今ドタバタって言ったよね!?」アストラは机に突っ伏した。
「任務は潜入調査。影の艦隊の造船所に入り込み、内部構造をスキャンしてデータを持ち帰れ。それだけだ」
「それだけって簡単に言うけど、絶対バレたら終わりでしょ!?」
しかし作戦は決定事項。ノヴァ・リュミエール号は特殊な偽装装置を取り付けられ、影の艦隊の基地宙域へと向かうことになった。
「ふぅ……こんな危険な任務、僕の胃じゃ持たないよ……」アストラがため息をつく。
「大丈夫よ。冷静にやれば成功する」マリナが励ます。
「おい、潜入ってことは変装するんだろ!? 僕、海賊役やってみたい!」カイが張り切る。
「いや、カイは光ってるから潜入には向かないわね」リーナが即答した。
「光ってるって……僕は存在そのものがバレ要素!?」カイはがっくり肩を落とした。
基地に近づくと、巨大な造船ドックが視界に現れた。無数の艦艇が建造されており、その規模にアストラたちは息を呑む。
「これが……影の艦隊……」マリナの声に緊張が走る。
「偽装信号送信。……よし、無事にドック内へ入れそうだ」リーナが操作を続ける。
「やった! このまま静かにやり過ごせば――」
直後、艦内に警報が鳴り響いた。
『侵入艦あり! 全艦停止、身元確認を行う!』
「ばれたぁぁぁぁぁぁ!」アストラが悲鳴を上げる。
「何で!? 偽装は完璧だったはずよ!」リーナが目を見開く。
「……カイ、まさか光源つけっぱなしじゃないでしょうね?」マリナが疑いの目を向ける。
「えっ……あっ……ピカってしてたかも」
「お前ぇぇぇぇぇ!」アストラが叫んだ。
敵艦から通信が飛ぶ。
「おいそこの怪しい船! 停止しろ! でなければ撃沈する!」
「ひぃぃぃ! ど、どうする!?」アストラが操縦桿を握り震える。
マリナは即断した。
「逆に堂々と振る舞えば怪しまれないわ。カイ、なりきって」
「え、海賊役!? よし、任せろ!」
カイは通信を開き、大声で叫んだ。
「おいコラ! 俺たちは影の艦隊直属の“特別海賊分隊”だ! 偉い人の命令でここに来たんだぞぉ!」
「な、なんだと!? 本部から連絡は……いや、待て……」敵兵士たちが戸惑う。
リーナが素早くコンソールを操作し、偽造データを送り込む。
「確認しました。……た、確かに本部からの特命のようです!」
「よし、通れぇぇ!」
まさかの大成功にアストラは目を剥いた。
「え……うそでしょ……?」
「ほら見ろ! 僕の役者魂だ!」カイが胸を張る。
「役者っていうか、ただ大声で叫んだだけじゃん……」アストラががっくり肩を落とした。
こうしてノヴァ・リュミエール号はドック内部に潜入。艦内ではクルー総出でデータ収集を開始する。
「構造データ、取得中……」リーナが端末を操作する。
「見つかったら一巻の終わりよ。静かにして」マリナが緊張を滲ませる。
だが――。
「くしゅん!」
「おい誰だ今くしゃみしたの!?」アストラが振り返る。
「ごめん、宇宙塵が……」カイが鼻をすすった。
直後、敵兵が振り向く。
「おい、今の音は何だ?」
「ばれたぁぁぁ!」再び全員が絶叫。
アストラはとっさに非常灯を点滅させた。
「火災警報発生! 全員避難だ!」
敵兵たちは大混乱。
「火災だと!? 消火班を呼べ!」
その隙にノヴァ・リュミエール号はデータ転送を完了し、脱出ルートへ滑り込む。
敵艦からの追撃が始まったが、アストラは死に物狂いで操縦。
「ぎゃあぁぁ! 右から来てる! 左からも来てるぅぅ!」
「アストラ、落ち着いて! そのまま進めばワープゲート!」マリナが叫ぶ。
「胃がぁぁぁぁ!」
最後の一撃をかすめながら、ノヴァ・リュミエール号は宙域を脱出。
影の艦隊の恐るべき規模と存在は、こうして銀河同盟に知られることとなった。
潜入任務に挑んだアストラたち。ドタバタの連続ながらも、結果的に影の艦隊の重要な情報を持ち帰ることに成功した。
だがその巨大な造船所の光景は、彼らに強烈な不安を残した。




