第五十六章 銀河警察の追跡!逃げ場なしの大混乱
影の艦隊に襲われた直後、まさかの銀河警察に“犯人”扱いされたアストラ一行。ノヴァ・リュミエール号は板挟みの中、逃げ場を失う。果たして彼らは、この前代未聞の誤解から生還できるのか――?
「こちら銀河警察!ノヴァ・リュミエール号、直ちに投降せよ!」
艦橋に鳴り響く警告。
アストラは頭を抱え、全身から汗を吹き出していた。
「ど、ど、どうするのこれ!?降参したら捕まるし、逃げたらもっと怪しまれるし!」
「キャプテン、落ち着いて!」リーナが必死に肩を揺さぶる。
「無理だよぉぉぉ!僕の心臓がもたないぃぃぃ!」
一方、マリナは冷静に状況を分析していた。
「艦数は十隻以上。全方位を囲まれているわ。突破は……不可能」
「じゃあ詰んでるじゃない!」リーナが半泣きになる。
「大丈夫だ、俺に任せろ!」カイが胸を張る。
「こういう時のために“花火四号”を開発しておいた!」
「ちょっと待って!?まだあるの!?」アストラが絶叫。
カイが取り出したのは、明らかに船よりデカそうな膨張式の花火装置。
「これを爆発させれば、警察のセンサーを一時的にジャミングできる!」
「いや、爆発って言ったよね!?また船ごと吹き飛ばす気!?」
その時――。
《影の艦隊、撤退を開始》という報告が響いた。
モニターを見ると、黒い艦影は霧のように散り去っていく。
「え?え?なにこれ?」リーナが目を丸くする。
マリナは低くつぶやいた。
「奴ら、最初から私たちに濡れ衣を着せるのが目的だったのよ」
「ってことは……僕ら完全に犯人扱いじゃん!」アストラは頭を抱え、床を転げ回った。
警察艦隊は一斉に砲門を向ける。
「ノヴァ・リュミエール号、抵抗は無駄だ。停船せよ」
「わ、わぁぁぁぁ!撃たれる撃たれる撃たれるぅぅ!」
アストラの悲鳴が艦橋に響き渡る。
「キャプテン!」リーナが叫ぶ。
「今は逃げるしかない!」
「逃げる!?こんな包囲網を!?」
マリナは操作パネルを叩きつけるように動かした。
「重力波を逆利用する!この宙域の微小ワームホールを通れば……あるいは!」
「ちょ、ちょっと待って!?そんなギャンブルで船ごと吸い込まれたらどうするの!?」
「その時は……諦めるしかないわね」
「軽っ!!!」
しかし、選択肢はなかった。
「全員、衝撃に備えて!」マリナが叫ぶ。
カイは花火四号を片手にニヤリ。
リーナは座席にしがみつき、目をぎゅっと閉じた。
アストラは泣きながら操縦桿を握る。
「うわぁぁぁぁ!僕の休暇はどこ行ったのぉぉぉ!」
次の瞬間――ノヴァ・リュミエール号は光に包まれ、ワームホールへ突入した。
ドォォォォンッ!!!
……そして。
気がつけば、艦は静かな宙域に漂っていた。
外の景色は、見たこともない星雲。
「……生きてる?」リーナが恐る恐る目を開ける。
「生きてる……!僕、生きてるぅぅぅ!」アストラが涙を流して喜んだ。
マリナはため息をつく。
「どうやら成功したわね。ただし、ここがどこかは全く分からないけど」
「……迷子ってこと?」リーナが青ざめる。
「まあ、そうなるな」カイがあっけらかんと笑った。
艦橋の空気が重く沈む。
「銀河警察に追われ、影の艦隊に狙われ、そして……迷子」
アストラは椅子に崩れ落ちた。
「……誰か、僕に休暇を……」
影の艦隊の策略により、銀河警察からも追われる身となったアストラたち。命からがらワームホールを抜けた先は、未知の宙域。




