第五十五章 狙われたノヴァ・リュミエール号
議会で影の艦隊が宣戦布告とも言える一言を残し消え去った。次の標的はアストラたちの船、ノヴァ・リュミエール号。休む暇もなく再び災厄に巻き込まれるクルーたち。だが、彼らは相変わらずドタバタで……!?
ノヴァ・リュミエール号の艦橋は、珍しく静かだった。
――いや、静かにしようと全員が必死になっているだけだ。
「……影の艦隊に狙われたって、議長さんが言ってたよね?」
リーナが不安げにモニターを見つめる。
「うん。だから僕らは今、命を狙われてる真っ最中なんだよ」
キャプテン・アストラはシートに深々と沈み込み、顔を手で覆った。
「狙われてるのに、なんでそんなに落ち着いてるんですか?」リーナ。
「……いや、逆。落ち着こうとしてるだけ。心の中はパニックで大洪水」
マリナは腕を組んでモニターに睨みを利かせている。
「落ち着こうが騒ごうが、襲撃は避けられないわ。問題は“いつ、どこで”よ」
カイはと言えば――。
「キャプテン!影の艦隊が来ても大丈夫だ!この“改良型花火三号”があれば!」
工具箱から引っ張り出したのは、どう見ても危険物にしか見えない巨大な筒。
「やめろぉぉぉ!船内で起爆装置いじるなぁぁぁ!」アストラが叫んだ。
その時、警報が艦内に響いた。
《接近物体を確認――識別不能》
「来た!?」リーナが悲鳴を上げる。
「落ち着け、リーナ!」マリナが指示を飛ばす。「カメラで拡大!」
モニターに映ったのは……小さな宅配ポッドだった。
「え……ただの荷物?」
「……なんでこんなタイミングで……」
恐る恐る回収してみると、中には大量のカップ麺と謎の手紙。
『腹が減っては戦はできぬ。――影の艦隊』
「挑発状か!?」アストラが頭を抱えた。
「しかも親切心あるのか嫌がらせなのか分からない!」
だがその直後、船体が大きく揺れた。
《未確認艦影、後方に出現!》
「ついに来たか!」マリナが冷静に叫ぶ。
「全員、戦闘配置!」
映し出された艦影は、黒い霧に覆われた不気味な船団。
艦橋に緊張が走る――はずだった。
「よし、発射準備!“花火三号”で派手に迎撃だ!」
「やめろカイィィィ!」
必死に止めるアストラをよそに、花火三号は発射管にセットされ……。
ドォォォンッ!!!
――夜空のような宇宙に、巨大な花火が咲き誇った。
影の艦隊の艦影が一瞬ひるみ、動きを止める。
「えっ……効いてる?」リーナが目を丸くする。
「もしかして……光学センサーが花火の光にやられてる?」マリナが分析した。
「ほら見ろキャプテン!僕の発明がまた役に立った!」
「……役に立ってるのが腹立つんだよぉぉぉ!」
だが影の艦隊はすぐに態勢を立て直した。
無数のレーザーがノヴァ・リュミエール号を狙う。
「全員しっかり掴まれ!」アストラが叫ぶ。
だが船はドタバタと回転し、まるで酔っ払いのように回避行動を取る。
「キャプテン!操縦ヘタ!」リーナが涙目で叫ぶ。
「違う!僕のせいじゃない!船が勝手に!」
「船が勝手にドリフトするわけないでしょ!」マリナがツッコむ。
混乱の中、再び光が走った。
別方向から現れたのは、銀河警察の巡視艦隊だった。
「こちら銀河警察!貴船は包囲されている!」
「……え?」アストラが呆然とする。
「なんで僕らが包囲されてんの!?」
どうやら影の艦隊が巧妙に仕掛けた陽動で、アストラたちが“犯人”に仕立て上げられてしまったらしい。
「ちょ、ちょっと待ってください!違うんです、僕らは――」
「言い訳無用!その船を拿捕する!」
ノヴァ・リュミエール号は影の艦隊と警察艦隊の板挟みに。
まさに絶体絶命。
「ど、どうするのこれぇぇぇ!」
アストラの叫び声が艦橋に響き渡った――。
影の艦隊の襲撃、そして銀河警察からの誤解。狙われるどころか“犯人扱い”までされてしまったアストラたち。ノヴァ・リュミエール号の運命はますます混迷を極める!




