第五十二章 辺境宙域の奇妙な遭遇
銀河同盟から極秘任務を託されたキャプテン・アストラ一行。彼らが向かうのは、辺境宙域に広がる無法地帯。そこには「影の艦隊」の痕跡があるとされていた。だが到着した先で彼らが出会ったのは、思いもよらぬ奇妙な集団だった――。
ノヴァ・リュミエール号がワープアウトした先は、銀河地図の端に位置する辺境宙域。
センサーには、星屑と小惑星群、そして微弱な電波が点々と映っていた。
「うわ……なにもないね」カイが退屈そうに呟く。
「“影の艦隊”がいるって話じゃなかった?」マリナは眉をひそめる。
「おかしいな……確かに反応はあるはずなんだけど」リーナが計器を睨む。
すると突然、通信チャンネルが勝手に開いた。
『――こちら辺境自由連盟“スクラップ団”!通行料を払え!』
画面に映ったのは、錆びついた宇宙服を着た男たち。頭には鍋の蓋をかぶり、背後では壊れたロボットがパイプオルガンのように並んでいた。
「な、なんだこの人たち……」アストラは絶句。
「新手のコスプレかしら?」マリナが冷ややかに分析する。
「違う!俺たちは銀河最強の無法者集団“スクラップ団”だ!」団長らしき人物が胸を張る。
「通行料を払えば安全に通してやる。払わなければ……このジャンク砲で吹っ飛ばす!」
リーナは小声で呟いた。
「……ジャンク砲って、要するに壊れた冷蔵庫とか洗濯機を投げつけてるだけじゃない?」
「え、でも当たったら痛そうだよね」カイが真顔で答える。
「真剣に受け止めないで!」リーナが即ツッコミ。
アストラは勇気を出して前に出る。
「僕らはただの通りすがり!銀河同盟の依頼で来たんだ!」
「銀河同盟!?おい聞いたか、奴ら金持ちだぞ!」スクラップ団がざわめく。
「違う違う!金なんて持ってないから!」アストラが慌てて否定する。
だが、後ろでカイがぼそりと呟いた。
「……最新工具買いたい」
「余計なこと言うなぁぁぁ!」
結局、スクラップ団との交渉はドタバタに終わり、ノヴァ・リュミエール号と彼らのボロ船団の間で小競り合いが始まってしまった。
「キャプテン、来ます!」リーナが叫ぶ。
「わぁぁっ、冷蔵庫が飛んできた!?」
巨大な冷蔵庫が宇宙空間を舞い、船体に直撃。ドン、と鈍い音が響く。
「シールド残量80%!……って、意外と威力あるじゃない!」リーナが慌てる。
「ならこっちも反撃だ!」アストラはとっさにボタンを押す。
ノヴァ・リュミエール号の砲門が開き――
「えっ!?なんで花火が出るの!?」
ドーン!と夜空のような花火が宇宙に広がった。
「キャプテン、間違えてレジャーモードを起動しました!」カイが青ざめる。
「なんでそんなモードあるの!?誰がつけたの!?」
「僕です」
「お前かぁぁぁ!!」
だが意外なことに、スクラップ団は花火に感動していた。
「おお……なんて美しい閃光……!」
「俺たち、こんな綺麗なもの見たの初めてだ……!」
彼らの目には涙が光っていた。
「……キャプテン、これ勝てるんじゃ」マリナが囁く。
アストラは深く頷き、胸を張った。
「そうだ!僕らは戦わない!芸術で勝負だ!」
ノヴァ・リュミエール号は次々と花火を打ち上げ、宇宙空間を虹色に染めた。
冷蔵庫や洗濯機を投げていたスクラップ団は次第に動きを止め、感動で呆然と見入っている。
やがて団長が膝をつき、叫んだ。
「……負けた!俺たちは今日から、お前らのファンクラブだ!」
「ファンクラブ!?僕ら冒険者だよ!?」アストラは困惑する。
「違う、俺たちはもうスクラップ団じゃない。“ノヴァ花火応援団”だ!」
こうして辺境宙域での奇妙な遭遇は、思わぬファン獲得という結果に終わった。
だが――最後にリーナが小声で警告する。
「キャプテン……今の花火、センサーにすごく広範囲の信号を出したわ。
もしかしたら、“影の艦隊”に場所を知られたかもしれない……」
「……え?」アストラは固まった。
次なる波乱の予感を残し、ノヴァ・リュミエール号は再び航路を進む。
スクラップ団との遭遇は、戦闘ではなく“花火ショー”で決着!アストラ一行の周囲には、ますます奇妙で騒がしい仲間(?)が増えていく。
しかし花火の光は思わぬ相手に届いてしまった。




