第百五十八章 確定する世界
曖昧なままでは、存在は形を持たない。
だが――
誰かがそれを“定義した瞬間”、
世界は一つの姿へと収束する。
エコー・ベルトで出会った“未確定の存在”。
それは今、
観測され続けることで、
確定へと向かい始めていた。
◆変化
「……形、安定してきてる」
リーナの声は、
驚きと警戒が混じっていた。
「さっきより、
輪郭が崩れにくい」
カイが目を凝らす。
「ほんとだ……
前より“ちゃんとそこにいる”感じがする」
マリナが静かに言う。
「観測が積み重なったことで、
存在が固定され始めている」
プクルが小さく鳴く。
「ぷくる……(きまってきた)」
◆観測の影響
アストラは、
ゆっくりと頷いた。
「俺たちが見たことで、
あれは“決まってきている”」
「つまり、
俺たちが原因ってことか?」
カイが顔をしかめる。
「原因というより……
“触媒”ね」
リーナが補足する。
「この宙域では、
観測そのものが影響を与える」
◆ドタバタ混乱
「ちょっと待て!」
カイが叫ぶ。
「じゃあ俺たち、
見ない方がいいんじゃないか!?」
「それは無理」
リーナが即答。
「見ない=認識しない、は成立しない」
「じゃあどうすんだよ!」
プクルが慌ててぐるぐる回る。
「ぷくる!?(みる?みない?)」
マリナがため息をつく。
「混乱しても仕方ないわね……」
◆確定の兆し
その時、
影が――
明確な“形”を取り始めた。
それは、
巨大な構造物のようでもあり、
生物の骨格のようでもあった。
「……さっきより、
明らかに変わってる」
リーナが低く言う。
「これはもう、
“曖昧”じゃない」
◆危機
次の瞬間、
強い圧力が艦を襲った。
「うわっ!?」
カイがバランスを崩す。
「重力異常!
いや、違う……
“引き寄せられてる”!」
リーナが叫ぶ。
マリナが即座に判断する。
「確定したことで、
干渉してきた」
プクルが震える。
「ぷくる……(きた……)」
◆決断
アストラは即座に指示を出す。
「全員、視線を外せ!」
「え?」
「観測を止める!」
カイが叫ぶ。
「そんなの無理だろ!」
「やるしかない!」
◆視線の制御
リーナが即座に対応する。
「モニター遮断!」
艦橋の表示が一斉に落ちる。
マリナも続く。
「直接視認を避ける。
センサーも最低限に」
カイが目を閉じる。
「うおお……見ないってこんな難しいのか!」
プクルが目をぎゅっと閉じる。
「ぷくる!(みない!)」
◆揺らぎ
数秒。
あるいは数十秒。
時間の感覚が曖昧になる中で――
圧力が、
徐々に弱まっていく。
リーナが静かに言う。
「……干渉、減少」
「形も、
また曖昧に戻ってる」
◆理解
マリナがゆっくりと息を吐く。
「確定すると、
干渉できるようになる」
「逆に、
曖昧なら干渉できない」
カイが目を開ける。
「つまり……
見すぎるとヤバいってことか」
アストラは頷いた。
「この宙域では、
“認識”が力になる」
◆新たな戦い方
リーナが整理する。
「観測しすぎれば危険」
「だが、
観測しなければ理解できない」
マリナが続ける。
「つまり――
“ギリギリを維持する”必要がある」
カイが笑う。
「難易度高すぎだろ!」
プクルが元気に鳴く。
「ぷくる!(がんばる!)」
◆進む覚悟
アストラは、
再び前方を見据える。
完全には見ない。
だが、
完全には無視しない。
その曖昧な状態を保ちながら、
進むしかない。
「行くぞ」
ノヴァ・リュミエール号は、
“確定と曖昧の狭間”を進み始めた。
観測は、力になる。
だが同時に、
危険も引き寄せる。
エコー・ベルトは、
“認識そのもの”が戦いとなる宙域だった。
ノヴァ・リュミエール号は、
新たなルールの中で進み続ける。




