表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星間乱舞!キャプテン・アストラの大英雄譚 銀河の黎明(ぎんがのれいめい)  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

148/171

第百五十一章 信仰と利益の狭間で

信仰は、人の心を支える。

利益は、人の生活を支える。

どちらか一方を切り捨てれば、

残された側も長くは立っていられない。

ガンマ・スパインでの静かな合意の裏側には、

まだ言葉にされていない不満と恐れが残っていた。

ノヴァ・リュミエール号の役目は、

“合意の後”にこそ試される。

◆合意の余熱


航路分離と物資優先供給の合意から、数日が経過した。

表向き、ガンマ・スパイン宙域は落ち着きを取り戻している。


「数値上は安定してる」

リーナが報告する。

「輸送遅延、物資不足、どちらも改善傾向」


「でも……」

カイが言葉を継ぐ。

「空気は重いままだな」


マリナも頷く。

「合意は“紙の上”で成立しただけ。

感情は、まだ追いついていない」


プクルが窓の外を見ながら鳴く。

「ぷくる……(えがお、すくない)」


◆くすぶる声


艦内に、非公式の通信が届いた。

差出人は、宗教共同体の若い巡礼代表だった。


『信仰を守るために譲った。

だが、

なぜ我々だけが“理解する側”でなければならない?』


続いて、別の回線。

企業圏の現場責任者からだ。


『現場は疲弊している。

利益を削られた責任は、

最終的に誰が取る?』


「……両方とも、本音だな」

カイが低く言う。


アストラは通信を切らず、

静かに聞き続けていた。


◆どちらの味方でもない


「キャプテン」

マリナが問いかける。

「ここから先は、

どちらかに寄り添う言葉を

求められるわ」


「分かってる」

アストラは短く答える。


「でも、

寄り添いすぎれば、

反対側から“裏切り”に見える」

リーナが現実を突きつける。


プクルが不安そうに鳴く。

「ぷくる……(むずかしい)」


アストラは深く息を吸った。

「だからこそ、

俺たちは“どちらの味方でもない”」


「……それ、

一番嫌われる立場だぞ」

カイが苦笑する。


「知ってる」


◆再訪


アストラは決断し、

再びガンマ・スパインの会談ステーションへ向かった。

今回は、公式会談ではない。


宗教側の巡礼代表。

企業側の現場責任者。

立場の“中間”にいる者だけを集めた小さな場だった。


「合意は守られている」

アストラは前置きなく言う。

「だが、

納得はされていない」


沈黙。


◆言葉にする


最初に口を開いたのは、巡礼代表だった。

「我々は、

信仰を“妨げられないこと”を求めているだけだ」


企業側が反論する。

「こちらは、

生活を支えるために掘っている」


アストラは、

どちらも否定しなかった。


「どちらも正しい」


二人が同時に顔を上げる。


「だから問題なんだ」


◆狭間


リーナが静かに補足する。

「信仰は、

数字では測れない。

だが利益は、

数字でしか維持できない」


「狭間にいる人間は、

常に両方から削られる」

マリナが続ける。


その言葉に、

企業側責任者の表情が曇る。

巡礼代表も、目を伏せた。


◆新しい役割


アストラは提案した。

「“信仰と利益の調整委員会”を作る」


「警察主導じゃない」

「現場主導だ」


「巡礼と企業、

双方から同数を出す。

俺たちは、

最初の枠組みを作るだけ」


カイが小声で言う。

「……手間かかるぞ」


「だからこそ、

外から壊されにくい」

アストラは答えた。


◆揺れる同意


しばらくの沈黙の後、

企業側責任者が口を開く。


「……上は嫌がるだろうな」


「信仰側も、

“妥協”だと叩かれる」

巡礼代表が続ける。


「それでも、

今よりマシだ」

アストラの声は低いが、確かだった。


二人は、

ゆっくりと頷いた。


◆帰路


艦に戻る途中、

カイが息を吐いた。


「英雄どころか、

嫌われ役まっしぐらだな」


マリナは微笑む。

「でも、

壊れにくい形を残した」


プクルが元気に鳴く。

「ぷくる!(つづくへいわ!)」


アストラは星図を見つめる。

「一歩ずつだ。

銀河は、

一気には変わらない」

信仰と利益は、

永遠に交わらない対立ではない。

だが、

放置すれば必ず刃になる。


調整役の仕事は、

答えを出すことではなく、

“話し続けられる場”を残すこと。


ノヴァ・リュミエール号は、

その狭間に立ち続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ