第百三十九章 影との対話
虚無宙域の最奥で現れた“第二の門”。
そこから響いたのは、人語とも機械音ともつかぬ声だった。
アストラたちは門を越えるか否かを迫られるが、選択の余地はない。
ついに、影の艦隊との邂逅が始まる――。
◆門の前にて
虚無の闇に浮かぶ、淡く揺らめく光の輪。
その中心は真っ黒で、吸い込まれそうな深淵だった。
「……これ、どう見ても罠だろ」カイが震える声を上げる。
「でも、あそこしか出口の気配はない」リーナが端末を握りしめる。
「つまり、行くしかないってことか」マリナが冷静に言う。
アストラは前を見据えた。
「影が待つなら、正面から対話するまでだ」
「ぷくるる……(いやなヨカンしかしない……)」プクルはアストラの足にしがみついた。
◆声の主
門に近づくと、再びあの低い響きが艦を満たした。
――おまえたち……なぜ、ここまで来た……。
「聞こえる……?」マリナが思わず口を押さえる。
「脳に直接……思考を叩き込まれてる感じね」リーナは顔をしかめる。
アストラは一歩進み、応えるように口を開いた。
「俺たちはただ進むだけだ。だが、お前たちの正体を知る必要がある」
――われらは“影”。形なき存在。
――光ある者を写し、揺らぎ、そして裁く。
「写す……?」カイが混乱した顔をする。
「つまり、私たちを模して現れる存在……?」リーナが低く呟いた。
◆影の艦隊の告白
声は続く。
――かつて、無数の艦がこの宙域に挑んだ。
――だが光は虚無に呑まれ、我らに取り込まれた。
――いま、おまえたちもまた“影”となる。
「そんなこと、させるわけないだろ!」カイが叫ぶ。
「ぷくるる!(ピザもまだ食べてないのに!)」
アストラは静かに、だが強い声で返した。
「俺たちは光を捨てない。虚無の中であろうと、仲間と共に進む。それが俺たちの道だ!」
◆対話の結末
しばしの沈黙。やがて声は低く笑ったように響いた。
――……ならば証明せよ。光を捨てぬと。
門が強く輝き、ノヴァ・リュミエール号を呑み込んでいく。
眩い閃光の中で、全員が身を固くした。
「来るぞ……!」アストラが叫ぶ。
次の瞬間、艦は新たな宙域へと投げ出された。
そこには――幾百もの影の艦影が待ち構えていた。
ついに現れた影の艦隊。
彼らは“光を試す存在”だと名乗った。
アストラたちは正面から挑む覚悟を固めたが、圧倒的な数の艦が眼前に広がる。




