第百三章 動き出す暗躍者!影の提督の正体
潜入調査の報告を終えたアストラたちの前に、いよいよ「影の艦隊」を率いる黒幕が姿を現す。
その人物は冷酷無比な提督――だが、ただの悪役では済まされない奇妙なカリスマを持っていた。
一方、銀河警察の会議室は再びドタバタの渦に。果たしてアストラたちは、迫り来る大いなる脅威に立ち向かえるのか……?
宇宙の果て、星雲に覆われた宙域。
影の艦隊の母艦内部では、暗い光の中に一人の男の姿があった。
高い背丈に鋭い目、漆黒の軍服をまとい、背筋をぴんと伸ばしたその姿は威厳そのもの。
しかし彼の口元には、不思議な微笑みが浮かんでいた。
「……ふふ、また小さな子ネズミが潜り込んできたか」
影の提督――名をヴァルド・レイガン。
かつては銀河警察の戦略部に籍を置き、類まれな頭脳と指揮能力を誇った男。
だが、十年前の政争で失脚し、消息を絶っていたはずだった。
「銀河警察はいつまで経っても同じだな。会議ばかりで動きが遅い」
彼は部下の報告を聞き流し、悠然と椅子に腰掛ける。
「だが、それが奴らの弱点でもある。私の艦隊が完成すれば、銀河の秩序は私のものだ」
艦橋に控える影の艦隊士官たちが一斉に頭を垂れた。
「提督、銀河警察の若き船長――キャプテン・アストラが潜入した模様です」
「アストラ……?」ヴァルドは眉をわずかに動かす。
「確か、昔の同僚の血筋か……いや、ただの偶然かもしれんな」
その声には冷酷さと同時に、不気味な期待が混じっていた。
そのころ、銀河警察本部。
アストラは再び呼び出され、胃を押さえながら会議室の椅子に座っていた。
「我々は重大な敵を見失っていた!」
「いや、十年前に失脚したはずだ!」
「影の艦隊の指揮官が、ヴァルド・レイガンだとすれば……!」
将校たちは一斉に大騒ぎし、机を叩いたり、資料を投げ出したりする。
「落ち着け! まずは確認を!」と司令官が怒鳴るが、騒ぎは収まらない。
「ねえアストラ、胃薬持ってきた方がいい?」マリナが心配そうに声をかける。
「もう……手遅れかもしれない……」アストラは机に突っ伏した。
そこに追い打ちをかけるように、カイが立ち上がる。
「つまりだ! 僕たちは宿命のライバルと対峙する運命にあるわけだな!」
「いやそんなカッコよくまとめないで!」アストラが顔を上げてツッコむ。
「影の提督、ヴァルド……か。名前からして強そうね」リーナは腕を組み、冷静に言った。
「でも冷静に考えると、私たちが正面から戦うなんて無理よ」
「その通りだ、正面からは無理だ……だからこそ、僕たちが奇策を!」とカイ。
「だからその奇策がいつもドタバタにしかならないんだよ!」アストラの悲鳴が会議室に響き渡った。
会議がようやく静まったとき、司令官が重々しく口を開いた。
「諸君、我々が恐れていたことが現実となった。影の艦隊を率いるのは、かつて我が軍で最強の戦略家と呼ばれたヴァルド・レイガン。彼はただの反乱者ではない。銀河の秩序そのものを覆そうとしている」
将校たちは息を呑む。
「彼が生きていたとは……」
「しかも、あの規模の艦隊を……」
アストラはごくりと唾を飲み込んだ。
「司令官……僕たちはどうすれば……?」
「君たちは……監視任務だ」
「はぁ!? 監視!?」アストラが叫ぶ。
「造船所周辺を監視し、敵の動きを逐一報告する。それ以上の行動は禁ずる」
「そ、そんな……!」
だがアストラの抗議も虚しく、会議はそこで終了してしまった。
「また僕らだけ危険な目に遭わされるパターンだ……」
「まぁ、アストラだからね!」とカイが笑う。
「慰めになってないからぁぁ!」
一方そのころ、影の艦隊旗艦。
ヴァルドは星図を見つめ、意味深に呟いた。
「銀河警察は必ず私を追う。だが、その若き船長がここまで辿り着けるか……見物だ」
その目は冷たく光り、次の一手を考えていた。
ついに姿を現した影の提督ヴァルド・レイガン。
かつて銀河警察に所属していた彼は、圧倒的な戦略眼と狂気じみた野望を携えて銀河に挑む。
一方アストラたちは、またも危険すぎる監視任務を押し付けられることに……!




