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第86話 奴隷の気持ちを知る



 アストレナは少し考えてから貼り付けたような笑顔で答えた。


「わかりました。お二人はここに残ってください。わたくしは一人で国に帰りますわ」


 すると肩を落とすヒルデビアとレモニカ。


「だだだダメでしぁ〜」

「ええ、ダメでしたね」


 うん、ダメだ。話しについて行けない。


「あのぉ〜、どういうことぉ?」


 俺の問いにアストレナがクスっと笑ってから答える。


「先程の、何故早く相談しなかったのか、というゴロウ様のご質問ですが……。じ、実はわたくしもゴロウ様をお慕いしておりまして……。ですから、他の殿方との結婚を言い出せなかったのです……。できればゴロウ様に知られたくなかった。二人はわたくしの気持ちを知っておりますから、この様なことを言ったのでしょう……」


「はい……すすすすみません」

「姫様には死が待っているアズダールに帰って欲しくなかったのです。姫様がゴロウ様をお慕いしているのは承知しておりました。ですから一緒にここに残って欲しかったのです。出過ぎた真似をしてしまい申し訳ございません」


「ちょ、ちょっと待った!つまり、ヒルデビアとレモニカが俺のことを好きって話は嘘ってことだよな?」


「「本当ですっ!」」


 えええ?そうなの?いやでも、まだ半年も一緒にいないし……。


「例えばどんなところが?」


「わわわわたしは、お、お料理に失敗しても……、い、いつも励ましてくれたり、慰めてくれたり、心配してくれる優しいところが……す、好きですぅ!」

「私は、つまらない私の長話を嫌な顔せず真剣に聞いてくれるところです……」


「いや、つまらないなんて思ったことは一度もないぞ」


 ヒルデビアはクールな感じだけど一度語り出すと長くてずっと話続けることがある。うちで一番話が長い。

 まぁ俺は奴隷達の話を聞くのが好きだから楽しく聞かせてもらっているが。


「と、とにかく!わわわわたしは、ほ、本当にゴロウ様が好きですぅ!」

「嘘や冗談でこのようなことは言いません!本心でございます。ですが姫様がアズダールに帰るのでしたら、この身は姫様に捧げておりますので私も一緒に帰らせて貰います」

「わわわわたしも帰ります……!」


 で、アストレナを見ると彼女も俺をチラチラ見ている。頬を染めて恥ずかしそうに、でも何か言いたそうに。


「あ、アストレナは……」

 2人を連れて行くのか?と聞こうと思ったのだが――、俺の声はアストレナの勢いある声で遮られてしまった。


「わたくしは!こちらに住まわせてもらう以前から、ずっとゴロウ様に憧れておりましたわっ!」


 彼女は甘いお菓子を頬張った時のような蕩けた顔で話しを続ける。


「大戦時、戦場でのゴロウ様のご活躍はいつもお噂で聞いておりましたし、6年前アズダール王宮で開催された戦勝パーティーで初めてゴロウ様にお会いたときに謙虚でとてもお優しい方だと感心致しました。そのこともあって、こちらに来てからゴロウ様に惹かれてしまって……。だってゴロウ様は何でも出来て、とても頼りになって、お優しくて……。できるだけ毎日一緒にいたくて、わたくしいつもゴロウ様が行く所へ付いて行ってしまって……。ゴロウ様は子供のわたくしに話し方や行動など色んなことで歩幅を合わせてくれるお優しい方で…………」


 アストレナは俺への想いを語り続ける。

 つか、滅茶苦茶俺のこと好きじゃん……!だからいつも俺が行く場所へ付いてきたのか、納得したよ。


「ですから本当は結婚したくないのです。わたくしも出来ればゴロウ様と……(チラ)」


 と頬を染めたアストレナは上目遣いで俺をチラ見する。

 いやー、悪いねグラントランドの第二王子ぃー。なんかNTRしちゃったみたいです……!


「ですがわたくしは帰ります。でなければ死んでいった家族や家臣に顔向けできません。それに亡くなられた陛下が生前仰っていました。アズダールの姫とグラントランドの王子が結婚すれば国は良くなり民を守れると……」


「あ、それはでたらめだな。国王の言う通りにしたらアズダールは数年でグラントランドの植民地になる」


「「「……っ!?」」」


「アズダールの国王は奴隷紋のような魔法で操られていた」


「そそそそんな……」

「それは真実でございますか?」


「ああ、事実だ。俺には精神魔法を見破るスキルがあるからな。まぁその話しは後で詳しく教えるとして……」


 3人は青ざめた顔で俺を見ている。


「お前達の気持ちはわかった」


 この子達の気持ちを聞けたのだ。俺も本心を伝えておくべきだな。


「俺もお前達3人をとても大切に思っている。だから幸せにしたい。疲れたら癒してやりたいし、甘えて欲しい。危なかったら守ってやる。それを踏まえた上で俺に提案がある」


 3人は不安と期待が入り混じった顔で俺を見ている。


「お前達はアズダールを以前のような正常な国に戻したいんだよな?」


「「「 はい! 」」」


「アストレナが結婚せず、アズダールを守る方法はある!」


「「「 えええっ!? 」」」


 三人揃って驚くの可愛いな……。






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