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第65話 モモの誕生日を祝う



 今日は6月22日、モモ11歳の誕生日だ。


 俺とモモはグラントランド王国の商業都市スイッチルを歩く。


 モモは犬の獣族。ゴールデンレトリバーの様な耳で白金色のフワッとした天然パーマのショートヘアを肩まで伸ばしている。綺麗な褐色肌に妖しく浮かぶ青い瞳が俺を魅了して、奴隷商会でこの子のを買うと決めた。

 身長は161センチ。首や手足が細くて長いスリム体型ではあるが胸は大きくて尻も女性らしいライン。身長120センチのココノと並ぶとかなり体格差がある。


 今日はショートパンツにポロシャツ姿でラフな格好だ。


 モモ曰く、最初に商売を始めるならこのスイッチルがいいらしい。


「人多いね……ゴロウさん」


 港があり流通で発展したスイッチルは人口が密集していて賑やかだ。


「迷子になるなよ」


「うん。ウィスタシアが手を繋いだって言ってたけど、あたしも繋いでいいかな……?」


 俺はうちの連中でウィスタシア以外は女として見ていない。まだ子供だから。

 だからボディタッチや裸を見ても何も思わない。しかしモモだけは話が別で……いやいや、この子もまだ11歳だからね!顔はあどけないけど見た目は完全に大人なんだよな……。


「いいぞ。ほら」


「うん!ありがとう」




 それから暫く市場を見て回った俺達は休憩がてら路地裏で串焼きを買い食いする。


「ゴロウさんはセブンランド大陸に街をつくって、人を集めて領主様になろうと思わないの?」


「思わないな」


「どうして?」


「人ってのは欲望に際限がない。最初は幸せでも、それに慣れてしまうと不平不満が出る。何十年、何百年って領主をやると、どんなに良い生活を民にさせても文句を言われるんだよ」


 生前、現代日本の庶民は江戸時代の大名より良い生活をしていた。それなのに満足していた人はどれくらいいただろうか。

 逆に隙間風が抜けるボロ家で藁を布団代わり寝ていた江戸時代の庶民が不幸だと感じながら生活していたとも思えない。

 つまり、物で一時的に満足しても、それだけで人の幸福が満たされることはないのだ。そして鬱憤の矛先は領主に向けられる。


 それに領主なると役人の管理、不平不満不公平の解消、犯罪の取締り、民の生活保障などなど厄介事が増えるだけで、ゴロウズで人手が足りている俺にとってはデメリットでしかない。

 人付き合いがしたければ今日みたいに街へ行けば良いだけの話なんだよな。

 まぁそもそも人付き合いが面倒くさくて、この世界では5年間も街へ行かなかったけど。


「あたしは人が多い方が賑やかで好きだな。ははは」


「まぁ俺も隣の第二ランド島とかに人が勝手に住むのは別に構わないと思っているよ」


「遭難船が辿り着いたりして!あ、でもアリがいるのか……」


 アイアンアント駆除くらいならやってあげもいいがな。


「ところで、モモはどうして商人になりたいんだ?」


「ティアニーみたいな大した理由じゃないんだ。奴隷商会にいた時にスイッチルで商人の妻をやっていたおばさんがいて、色んな儲け話を聞かせてくれたんだ。そのおばさん借金で奴隷になったみたいだけど……、でも、その話が凄く楽しくて、いつかあたしも商売をやってみいって思ったんだ」


「そうか……。せっかく奴隷紋が消えたんだ。いつか自分の店を持てるといいな」


「うん!最初は露店や行商人でもいいけどね」


 とモモははにかんで笑う。

 彼女は皆から好かれているし俺のように人付き合いが苦手ではないから商人に向いているかもしれないな。


 それから再び手を繋いで市場を回った。

 モモは売られている品の品目と値段をメモして回っていた。それとどの様な品が多く流通しているのか調べたり、人の良さそうな店主に産地情報や仕入れ値を聞いていた。


 これじゃ授業と変わらないな……。

 まぁ本人が楽しそうだからいいか。


 夕方、家に帰って皆でご馳走を食べてモモに誕生日ソングを歌う。

 しめはレモニカのバージョンアップしたケーキ。


 最後に俺から誕生日プレゼントを渡した。


 ネックレスを着けてあげると。


「えへへへ、ゴロウさんありがとう。ずっと大切にするね」


 とモモは嬉しそうに微笑む。


「モモいいなぁー。アッチ明日誕生がいい!」

「ニャーも早く誕生日になりたいよ!」

「ココノんもモモみたいにお祝いして欲しいの!」


 お子様達は自分の誕生日が待ち遠しいようだ。

 女の子は全部で12人、たまたま全員誕生日月が違うから毎月このイベントをやることになる。


「ボクの誕生日、まだまだ先だよ」

「ラウラちゃんは12月25日だよね♪シャルは10月20日♡ ゴロウさん、シャルの誕生日もいっぱいお祝いしてね!」

「某は美味しいものをとにかくたくさん食べられれば……」

「あんたはいつもたくさん食べてるじゃない!私は、べ、別にお祝いなんていらないわ!」

「わたくしは質素なお誕生日会で十分幸せですわ」

「アストレナ様が質素だと私とレモニカは更に質素に……、ケーキ無しですかね?」

「そそそそんなぁ~!わわわわたしもケーキ食べたいですぅ~!」


 こうして喜んでくれると俺もやりがいがある。


「皆、ちゃんとお祝いするから楽しみにしていろよ」


 そう言うと全員俺を見て瞳を輝かせる。

 この子達が出て行くまでの間だ。

 俺も楽しもう。





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